第41話 黒幕みたいです
「は?嘘だろ?俺の暗殺依頼を出した奴の家がここなんて…」
なぜ俺がこんなに戸惑っているのかというと、連れてこられた家がヒロトの家だったのだ。まさか、そんなどこぞのアニメのような展開が起こるとは予想だにしていなかった…。チッ、とりあえず確認が先だ。
…よし、入ろう。俺は扉を軽く殴ってガンガンッと音を鳴らした。
すると、扉が勝手に開いた。
「!?」
いま何が起こった!?魔力が動いた感じはなかったが…まさか、ユニークスキルか?俺は恐る恐る家の中に入った。
「やぁ、待ってたよツバサ。あんな暗殺者に殺されるとは思っていなかったけど、アリスも暗殺に失敗するとはね…。結構暗殺できる自信があったんだけどなぁ。」
と言いながらヒロトはケラケラと嬉しそうに笑った。
「いったいお前は何がしたいんだ?なぜ俺たちを狙う?」
俺が質問をすると、ヒロトはニコニコしながら答えた。
「僕には邪神様の声が聞こえるんだ…。だから、その邪神様の教えに従っているだけさ。そう、君達は邪神様の復活のための生贄なのさ!!」
「お前は、その邪神とかいういるかもわからない架空の存在を信じて関係のない人を殺そうとしたのか!?」
俺は流石にヒロトに腹が立った。こいつは俺に色々と店などを教えてくれたり、アニメの話で盛り上がったりした…すごくいい奴だと思っていたのに、それが全て邪神を復活させるための演技だったなんて…。
…はぁ、なんでこいつらは邪神とかいう奴の復活のために俺の大切な人を生贄にしようとするんだ?
そろそろストレスが溜まってきたぞ。
「なぁ、お前は軽くぶっ殺されるのと、思いっきり半殺しにされるの…どっちがいい?」
「…それって、どっちを選んでも死ぬんじゃないのか?」
ヒロトは苦笑いでそう答えた。…よし、思いっきりぶっ殺し決定!!
だが、先に鑑定だな。
『鑑定』
------------
ヒロト ???
◎△$♪×¥●&%#?!
邪神の加護(強)
異世界から呼…れし、邪神の…。その力……にも…けず。
------------
…は?なんだこりゃ、LV最大の鑑定でも見れないとかどんだけすごい能力を持ってんだよ!
「お前は…いったい何者だ?」
俺は思わずそう尋ねた。すると、ヒロトは肩をすくめながら言った。
「俺は、邪神様から選ばれし者だ。そう、俺はこの世界のナンバー2になる男だ。…そのためにあらゆるものを犠牲にしてきた。一緒に転移してきた家族も、友達も、恋人もね。」
「…お前は、とことんクズな奴だな。まるで人を殺すことを何とも思ってないって感じだな。」
「あたりまえじゃないか、僕は邪神様に選ばれたんだ。だから…君にはここで僕に負けてもらわなきゃいけないんだ。」
そう言ってヒロトはものすごい勢いで俺に向かって拳を突き出してきた。…ただ拳を振るっただけなのにその余波で家が吹き飛んでしまった。だが、アリスは俺にしがみついていたので無事だったようだ。
「おいおい、いきなりそれはないだろう。あやうく俺のHPが削られるところだったぞ。」
俺がそう言うと、ヒロトは苦笑いをしていた。
「どうした?なんかおかしかったか?」
「いや、どこをどう見たって君のHPが削られていないのはバレバレだよ。」
「チッ、ばれてたか…まぁいいや、とりあえずこっちからも攻めさせてもらうぞ!…アリスは冒険者ギルドに戻ってアイラとイズナにこの事を伝えておいてくれ。アイラとイズナは分かるよな?」
「もちろん!じゃあすぐに行ってくるわね!!」
そう言うと、アリスは急いで冒険者ギルドに走っていった。
そして、走っていくアリスの背中を見守った俺はヒロトの方を向いた。
「さぁ、戦いを始めようぜ!」
「いいよ、最近弱い奴ばっかりで退屈してたんだ。」
「フッ、すぐに死ぬなよ?」
「それはこっちのセリフだ。」
そして俺たちはほぼ同時に地面を蹴って拳を振るった。
だが、ほぼ力が同じだったらしく、俺たちは同時に吹き飛ばされた。
…クソッ、力はほぼ同じかよ…。ヒロトはどこだ?…フン、あいつも壁に埋まってやがる。今のうちに魔法の準備でもしておくか。
とりあえず、俺はヒロトが動き出す前に大気中にさりげなく魔素を拡散した。そして、ヒロトに向かって近くに落ちていた岩を投げつける。すると
「!?」
俺の殺気に反応したのか、ヒロトはワープらしき魔法を使って俺の前に移動してきた。
「ようやく起きたか…まったく、敵の魔の前で寝ているなんて余裕だな。」
「拳を放った瞬間に体に電撃を流し込んだ人がよく言うよ…。それにしても、さっきの電撃はかなり効いたよ。」
そりゃあそうだろうな。なにしろ俺の雷魔法はチャージなしでも一般人をショック死させられるほどの力を持っているんだからな。だが、それをまともにくらって普通に生きていられるのもどうかと思うが…。まぁ、そんなことはどうだっていい。とりあえずこいつを倒すために全力を尽くさなきゃな。
「じゃあ、さっさと戦いの続きをしようぜ。」
そう言って俺は、少し前に大気中に流した魔素を使って魔法を発動させる。
『絶対零度』
俺が魔法を唱えると、ヒロトの体がどんどん凍り付いていく。しかし、カルチとの戦いでこの魔法は使えなかったので、さらに魔法を重ねてみる。
『超重力アルティメットグラビティ』
俺の新魔法『超重力』は、任意の場所に普段の10倍の重力を掛けるという魔法だ。因みに一般人に向けて発動させると、色々と飛び散ってしまうので、使用は控えている。だれもそんなグロテスクなものを見たくはないだろうしな。
俺が魔法を重ね掛けすると、ヒロトはすでに死にかけていた。
「え?あれ?ヒロトってもっと強い感じじゃなかったのか?」
俺の予想だともっと強くて、『お前の魔法なんかくらってもHPが1すら減らねぇよ』とか言っている感じなんだけどなぁ…。
すると、俺のそんな表情を読み取ったのか、ヒロトがキレた。
「チッ、邪神様に選ばれた俺がこの程度の魔法で負けるわけがないだろうが!!」
そう言ってヒロトは、俺の重ね掛けした魔法を吹き飛ばして、さらに特大のファイヤーボールらしき魔法を発動させた。
「おいおい、危ないじゃねえか。『吸収』…ふぅ、危うくダメージを受けるところだった。」
「俺の…俺の魔法を吸収しやがった…。ただの、人間の分際で……」
なんだかヒロトの様子がおかしい。俺はとりあえず様子見でヒロトが放ったのと同じくらいのファイヤーボールをお返しした。
「ク、クソがぁ!!『ウォーターボール』」
すると、ヒロトは凄まじい殺気を放ちながらウォーターボールで相殺してきた。なんか、昔見た本で、街の人間が悪魔に憑りつかれて暴走するって話があったなぁ…。もしかしてヒロトも同じような感じなのか?ジワジワと悪魔かなんかに精神を侵食されてるんじゃないか?
…まぁ、試してみれば分かるか。
「ちょっと試させてもらうぜ!『光明矢ライトニングアロー』」
俺は光属性魔法のライトニングアローという高速で飛行する矢を一発ヒロトの脚に放った。すると、ヒロトに刺した矢の部分からなにやら黒いオーラがにじみ出ているのが視認できた。
…なるほどな、やっぱり悪魔だか邪神だかが憑りついていたという訳か…。
だが、今魔族の力を取り去ってやるからな!!
「少しつらいかもしれないが、耐えてくれよ。『高速治癒ファースヒーリング』」
この『高速治癒』は、本来は傷を治す専用の光魔法だが、アンデッドや魔族等にはダメージが入るらしいので、相手が魔族かどうか確認するのに役に立つって本に書いてあった。なので、実際に使ってみると、ホントに魔物関係に効果があるらしく、ヒロトが凄まじく苦しんでいた。
「グ…グァアアアア!!!!」
ヒロトは一度悲鳴を上げると、そのまま倒れた。
俺は、ヒロトを光属性の魔素を集めて作ったロープで縛ると、そのまま地面に放置して、気配察知を発動させたままヒロトが起きるのを待つことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます