第21話 大変みたいです
「はぁ」
私はため息をついた。
私の名前はリリー、ぺルセ街という街の冒険者ギルドで受付係をしている。
つい最近気になる人ができた。名前はツバサ、黒髪で切れ目で最初に会った時は話しにくそうな人だなぁと思ったけど、話してみると優しくて凄く惹かれた。
だけど、ツバサさんは私がどんなにアピールしても全く気付いてくれない鈍感な人だった。
ツバサさんが鈍感だったから私はまだ告白しなくても大丈夫だと思っていた…だけどいつの間にかツバサさんには恋人ができていた。それを聞いたとき、私はすごくショックを受けた。だけど、一人目の妻ができても二人目の妻になることもできる。だから私は諦めずに頑張る。
まぁ今は仕事に集中だ…それにしても
「ツバサさんはいったい何体のスライムを討伐してきたんですかぁ~!!」
思わずそう叫んでしまったが、ここは防音の結界が貼ってあるので問題はない。
とりあえずスライムの核を数えないと…そんなことを考えながら私は仕事を続けた。
いつかツバサさんとお付き合いできる日が来たらいいなぁ。
**********************
いつの間にか俺は寝ていたようだ。
ふと隣を見てみると、アイラが寝息を立てながらスヤスヤ寝ていた。どうやらステータスを確認した後すぐに寝てしまったらしい。一先ず持ち物を何も盗られていないか確認をしたが、荷物はすべてアイテムボックスにしまってあるので問題はなかった。
とりあえずアイラを起こすのは可哀想なので、まだ寝かせておくことにした。
「それにしても、リリーはまだかなぁ…」
――さん、ツバサさん、ツバサさん!
誰かが呼んでるな…
そう思って俺は目を開けた。するとリリーが困ったような表情を浮かべて俺たちを見ていた。
「あぁ、リリーか。おはよー」
「おはようございます。とりあえず、スライムの核の清算ができました。」
「そうか…とりあえず起きるかぁ」
俺はそう言って膝の上で寝ているアイラを抱っこしてソファから立ち上がった。
「…ん?清算終わったの?」
どうやらアイラも起きたようだ。
「あぁ、終わったみたいだぞ。ところでスライムの核は全部でいくらだった?」
まぁ金は盗賊団のアジトから貰ってきたのが沢山あるからぜいたくな暮らしができるくらいはあるんだけどな。
「えーと、スライムの核が一つにつき大銅貨1枚で、それが213個ありましたので大銀貨2枚と銀貨1枚、それと大銅貨3枚ですね。」
日本円に換算すると213,000円のようだ。俺もこの世界に来てから随分と金銭感覚が狂っているらしく、俺のアイテムボックスの中には常に日本の国家予算額以上の金が入っているので、買い物は釣りが出ないようにするのが非常に面倒になってきた。因みに今ある額を日本円にすると395兆4327億5685万3200円だ。
もう働かなくても一生贅沢をして暮らせるくらいだ。
だが、オタクにはなっても特に問題はないが、ニートになってしまってはアイラがかわいそうなのでニートにならないように冒険者として働いている。
とりあえず金を受け取った俺たちは宿に帰ろうとしたのだが、その時突然街に冒険者が息を切らせて走ってきて言った
「大変だ!この街に大量の魔物と魔族が攻め込んでくるぞ!!」
ファ!?また魔族?勘弁してくれよ…
だが、俺たちが行かなければ街のみんなが死ぬかもしれない。
「よし、行くぞアイラ!」
「…ん、ついていく」
こうして俺たちは一足先に森に入っていった。
森に入ると遠くから大量の足音が聞こえてきた。
「沢山いるみたいだが…いけるか?」
「…ん、問題ない」
そう言ってアイラは弓に矢を番えて少し強めに放った。
すると、物凄い轟音を立てて魔物が何体か消し飛んで行った。
「おぉ~、さすが俺のアイラだ!…俺も負けていられないな!」
そう思った俺は両手に片手剣をもって二刀流のスキルを発動させて、魔物の群れに突っ込んでいった。
「行くぜ、受けてみろ『ス○ーバー○ト・スト○ーム』!」
と、俺は某アニメの有名なソードスキルの名前を叫んで敵に突っ込んでいった。
暫く時間がたったが、一向に敵の数が減らない。
「はぁ、はぁ、だんだん疲れてきた…」
「…ん、私も疲れた」
最初はカッコつけていた俺だったが、敵が減らないことによる精神的なショックが大きく、その分体力の消費も激しかった。
「仕方ない…アイラ、本気で敵に何発か矢を放ってくれ。」
「…ホントにいいの?」
アイラは俺にそう尋ねてきた。何故ならアイラが本気を出すと地面の表面ごと綺麗に消滅するからだ。
だが、このまま街が破壊しつくされるよりはましだ。
「いいぞ、アイラの本気を見せてやれ!」
「…ん、分かった。フフ、私の本気を見せる」
そう言った瞬間、アイラの雰囲気が多少変わったが、アイラには変わりないので俺はそのアイラを鑑賞することにした。
そしてアイラが3本位矢を放つと、魔物は数え切れるほどしか残っていなかった。
なので俺たちは暫くその残りを始末していた。
「そう言えば魔族を見てないな…」
「…ん、確かに」
そんな会話をしていたため、その時の俺たちは後ろから何者かに攻撃をされたことに気づかなかった。
「…っ」
そしてアイラが倒れてからようやく俺は敵がすぐ後ろにいたことに気が付いた。
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