第16話 盗賊団と交戦みたいです

街に戻ってきた俺は、盗賊団を壊滅させるための準備に取り掛かった。


「とりあえず、煙幕とかでも買っておくかな」


そう言って俺は商人のおっちゃんのところに向かった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


商人のおっちゃんの店を訪れると、おっちゃんが店番をしていた。


「いらっしゃい。おぉ、兄ちゃんじゃねえか!また何か探し物か?」

「あぁ、盗賊団を潰すから、煙幕みたいなものが欲しいんだが…ここで売ってるか?」

「盗賊団って、この間この街を襲った盗賊団か?」

「そうだ。アジトの場所はだいたい分かった」

(気配察知があいつらがアジトを出た瞬間に気配を察知してくれたからな)

「なんだと!?すぐに騎士団に知らせた方がいいんじゃないのか?」

「いや、俺一人でやる。あいつらはさっさと処理をした方がいい」

「兄ちゃん一人で勝てるのか?」

「心配する気持ちはわかる。だけど、俺一人で十分だ。あまり人がいるとかえって邪魔になるからな」

「そうか…なら俺はこれ以上は言わねぇ。だが、一つだけ頼みがある。」

「頼み?」

「そうだ。盗賊のアジトを壊滅させたら、この間盗賊団に攫われた人たちを無事取り返してきてくれ。」

「分かった、でも期待はするな」

「あぁ、頼むぜ。煙幕は依頼の代価として無料で好きなだけ持っていけ。」

「おぉ、ありがとな。絶対に攫われた人たちを救出してきてやる。」


こうして俺は攫われた人たちを救出するのと引き換えに煙幕を手に入れた。


「そういえば、攫われた人って全部で何人いるんだ?」

「騎士団の調査結果では3人位のはずだ。」


3人?確か前聞いた時はもっといた気がしたのだが…まぁ、俺の聞き間違いか…


「了解、じゃあ明日の朝に出発するから今日はもう宿に戻るわ」

「おう!しっかりと休むんだぞ!!」


そして俺は早めの夕飯を食べて、明日に備えてさっさと寝ることにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次の日

俺は朝の4時ごろに俺は目が覚めた。


「うーん、最高の朝だなぁ。体調もいいみたいだし、ちゃっちゃと盗賊団を壊滅させるとしますかぁ」


そう言って朝ご飯を食べるために宿から出て行った。


そして、近くの店で朝ご飯を食べた俺は早速ワープを使って昨日魔術を練習した森へと移動することにした。


「ここから気配をなるべく消していこう。万が一盗賊に見つかったら面倒だからな」


俺はそんな独り言を言いながら姿勢を低くして盗賊団のアジトの方へと歩いて行った。



暫く歩いていると盗賊たちのアジトらしき洞窟があった。

そしてその洞窟から盗賊の声が聞こえてきたので俺は耳を澄ませて盗賊たちの会話を聞くことにした。


「――なぁ、ちょっとあの街で攫った女で遊んでこないか?」

「あぁ、そうだな。あの女の中に1人だけすっげぇ美人がいたからそいつとやりたいけど、もう親分がやっているかもしれないな」

「ホントだよな、親分は女がいればすぐにヤろうとするからな」

「…でももうすぐ親分が寝る時間だから、一発ヤってくるか!」

「そうだな!ちょっとくらい味見をしてもいいよな!!」

「よし!じゃあ行くk……カハッ」

「ん?どうしt…グハァ」


俺は見張りの男たちの会話を聞いて、女たちがまだ無事なことが分かったので、見張りをしていた男たち二人を始末して洞窟の中にある盗賊団のアジトに入っていった。


「へぇ、盗賊団のアジトってこんな風になってるんだなぁ」


などと感心しながら俺は盗賊のアジトを探検していた。

暫く進んでいくと、人の気配が集中している場所があったのでこっそりと岩陰から中を窺って部屋に煙幕と眠り薬を混ぜたものを流し込んだ。

すると部屋の中で何人かの盗賊たちが床に倒れて寝ていた。

それを見た俺は


「こいつらよく眠ってるなぁ、俺は状態異常耐性があるから効かないが、相当な眠くなるんだろうなぁ」


と、言いながら容赦なく盗賊たちを襲撃した。

盗賊たちは一声も上げることなく静かに死んでいった。


「さてと、そろそろ攫われた女たちの部屋につくかな?」


そう独り言を言いながら盗賊のアジトの更に奥へと進んでいった。


そろそろアジトの中も人の気配がしなくなってきたころ、俺は変な扉を見つけた。扉と言ってもよく見ないと気付かないくらい周りの岩壁と一体化している扉だった。


「もしかして、これが見張りの盗賊が攫った女たちを隠した部屋なのか?」


そう思い近づいてみると、部屋の中から人の気配が4人分・・・した。

お楽しみ中だったか、そう思った俺は気配を殺して音を立てないように扉を開けて中の様子を覗いてみた。

するとちょうど盗賊の頭領らしき男が女の首を捻って殺したところだった。


「!?」


それをみた俺は今までにないほどの怒りを覚えた。

何故ならその部屋にいた3人の女のうち1人はすでに殺されたのか床に倒れたままピクリとも動かず、もう1人のついさっき殺された女は首が変な方向へ捻じ曲げられ、最後の1人に至っては男に襲い掛かられそうになっても逃げようとしない。それどころか悲鳴すら上げていなかった。

(この男は、犯した終わった女たちを全員絞め殺しているのか…だが、女が誰も悲鳴を上げないのはおかしい。普通ならもっと暴れているはずだ)

そう思った俺が女たちを鑑定してみると、女たち全員のステータスに奴隷の表示があった。


「残念だ、頭領は捕らえておいて後で尋問しようと思ったが…気が変わった。捕らえる前に、俺の気が済むまであいつをぶっ飛ばしてやる!!」


そう叫ぶと俺は部屋に飛び込み男に向かって全速力で駆け出した。


「なんだ!?」


男がいきなり部屋に入って自分に駆け込んできた俺に驚いて一瞬固まるが、すぐに我に返り近くに置いてあった刀で俺を切りつけた。


「ふっ、ガキが調子に乗るなよ」


手応えがあったので男は俺を切ったと確信しているようだが、すでにそこに俺はいなかった。何故なら、俺は切られる瞬間にワープを使って男の後ろの女たちに近寄り、更にもう一度ワープを使って、すぐ隣の宝物庫らしき部屋に転移させていた。

(こいつらは関係ない奴を盗賊に引き込み悪事を働かせようとしたり、街を襲って人を攫ったり、攫ってきた女を犯してすぐに殺したりする…こんなクソみたいな奴らを生かしておくわけにはいかない。)

男のあまりのクズさについに俺はキレた。


「一瞬で気絶させて楽にさせてやる程の同情心もなくなった」


そして女たちを移動させた俺は再び男の元へと戻った。



俺が男の元へ戻ると


「どこだ!あのガキと女どもはどこへ行きやがった!!」


と、男が俺と、自分がさっきまでヤろうとしていた女を見失ったことで声を荒立てて騒いでいた。


「俺ならここにいる…ぞ!」


そう言いながら俺は男の脇腹に少し手加減したパンチをめり込ませた。


「ぐはぁ」


男は血反吐を吐いたが、それでも俺は攻撃をやめなかった。


「オラオラ、まだまだいくぞ!!」


俺は右ストレート、ナックル、アッパーカット、ローキック、魔法等の自分が出来る限りの攻撃方法を何十分も男に浴びせ続けていた。

そんなことを暫く続けた俺は漸く気が鎮まると、男への攻撃をやめた。


「ふぅ、大分すっきりしたなぁ…おっと、こいつは死んでないよな?」


そう思って一応鑑定を使って確認をすると、男は顔がボコボコに腫れ上がり、体の肋骨や腕の骨は数本折れていたが、何とか生きていたようだった。


「よし、じゃあとりあえずこいつを攫われた女と一緒に街に連れて行って、盗賊の盗伐報酬でももらってくるか」


一先ず俺はさっき移動させた女の元へと向かった。


「おい、お前は大丈夫――!?」


俺は女を見て驚いた。

女はとても幼い印象はあるが、どことなく妖艶さを覚えるほどの美女で、髪はモデルすら凌駕するほど綺麗な金髪のロングヘア―。おまけに恰好は裸だったのだ。

いや、正確に言うと裸ではなく、裸に薄いキャミソールを来ているような感じだった。

(そりゃそうだよな…男が楽しむために攫ってきたんだからほぼ裸が当たり前だよな。しかもこの子エルフだし…だけど、俺はあの男と違ってそんなやましいことなんて考えていない、確かにこの子は超絶美少女だけど、ホントにやましいことなんて考えてないからな!!)などと心の中で誰かに言い訳をしながら、服をアイテムボックスから取り出して女に渡した。


「これを着るといい。その恰好じゃ街に行けないだろ?」


なぜ俺が女性用の服を持っていたのかと言うと、盗賊の中に女装趣味の奴がいるらしく、そいつのコレクションの中から拝借したものだ。決して俺の趣味などではない。


「…ありがとう…ございます、ご主人様」


今にも消えそうな声でそう女の子が言った


「ご主人様?俺が?」


俺がそう尋ねると


「貴方は…私のご主人様……前のご主人様、つかまっちゃうみたいだから…」


と女の子が答えた。

(ウホッ、美少女にご主人様って呼ばれたでござる!!!やばい!めちゃくちゃカワユス!!)

そんなことを考えていた俺だったが、一先ず街へ向かおうと提案した。


「そっか…とりあえず街へ移動しないか?こんなところにしてもしょうがないからさ」

「…はい」


そうして俺達は男と攫われた女たちを背負って、宝物庫らしき部屋にあったお宝をアイテムボックスに入れて街へ戻ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る