第11話 ギルドマスターと戦闘みたいです

丁度今、俺は騎士団の詰め所に魔族の死体を引き取ってもらおうとしていた


「おいおい、何の冗談だ?これは?」

「冗談なんて言っていないぞ、何度も言わせないでくれ」

「だって、昨日冒険者になったばかりの奴が魔族を倒してきたなんて、誰が信じるんだ?」

「そんなことは知らない、だが、結果としてここに魔族の死体があるだろう?それに街の人の何人かは、俺が戦っているところを見てたはずだぞ」

俺は強気に出る。すると

「そんなことを言われてもなぁ」

そういって男は困った様に頭を掻いた

「とりあえずこの死体を引き取ってくれるか」


そう聞いてみると男は思い出したかの様に気まずい顔をして言った


「今更だが死体の引き取りは冒険ギルドだぞ。魔族の死体を見たショックで言うのを忘れてた」

「え?まじかよ…」


そう言われた俺はすぐに冒険者ギルドに向かった


冒険者ギルドに入ると俺の持っている魔族の死体を見た冒険者達が騒めきだした


「あいつは確か昨日冒険者になったばかりのガキじゃねえか、きっと他の冒険者が倒した魔族の死体をこっそり回収してたんだぜ」

「まじかよ、でもガキはそういうことに関してだけ頭が回るからな」


などという言葉が聞こえてきたのでムカついた俺は無言で威圧を発動した


「「うっ」」


それまで陰口をたたいていた冒険者達はすぐに黙った

そして俺は唖然としているリリーのもとに向かって歩いて行った


「おーい、この死体を引き取ってもらえないか?」

「…は、はい!すぐにギルドマスターを呼びますので少々お待ちください」


リリーはハッ、と我に返りギルドマスターを呼びに行った

そして5分後


「お待たせしました。こちらがギルドマスターです。」


そう言って連れてきたのは…


「おぉー、また会ったな若者よ」


騎士団の詰め所で会ったじいさんだった


「あんたがギルドマスターだったのか!?」

「いかにも、儂が冒険者ギルドのギルドマスター『ザック』じゃ。それよりもお主が魔族を倒したというのは本当なのかのぅ?」

「あぁ、本当だ」

「ほほぅ、なるほどなるほど。お主なかなか強いみたいじゃのぉ、自信に満ち溢れた目をしておる」


そう言いながらザックは俺に向けて威圧を放ってきた。


「おいおい、こんなところで威圧を使うのはどうかと思うぞ。他の冒険者がビビってるじゃねえか」

「おおっと、すまんのぅ。お主がどれほど強いのか確かめたくなてのぅ…だがまさか微動だにせんとは驚いたのぅ」

「本当にあんたは、人を試すのが好きなんだな」

「そうじゃ、ちょっとこれから手合わせをしてみないかの?」

「そんないきなり手合わせなんて頼んじゃダメですよ、ザックさん」

「まぁ今日は時間があるし、別に構わないぞ」

「え?いいんですか?ツバサさん?」

「別に構わないぞ、俺もギルドマスターとは一度戦ってみたかったしな」

「ならばこの施設の地下にある特別訓練所にでも行くとするかの」

「いいだろう」


そうして俺たちは地下の特別訓練所に移動した


「凄いな、冒険者ギルドの地下がこんなに広いなんて知らなかったな」

「そうじゃろう、ここは儂のとっておきの場所なんじゃよ」


と、胸を張りながら答えるギルドマスター

(なんだか爺さんというよりは子供みたいだな)

俺はそう思ったが敢えて言わないことにした


「じゃあ、そろそろ戦うとするかのぅ」


とザックが言った瞬間、凄まじい殺気が俺に向けて放出された


「凄い殺気だな、こんな強烈な殺気は初めて

だ」


と、俺は自分の精神が高揚してくるのを感じた。


「本気でかかってくるのじゃぞ」


ならば少し遊んでやるか、と言わんばかりに俺も殺気を放出させた


「相手を殺してはいけませんよ!ツバサさんを殺したら許しませんからね…」


リリーが発した後半の言葉は誰の耳にも届かなかった


「先ずはこちらから攻めさせてもらうぞ!」


そう言ってザックが物凄いスピードで乱打してきた

(なかなか速いな…だが、これなら避けられる)

俺はザックの攻撃を避けながら攻撃の後の隙を探していた

だが、いきなり乱打がとまり、目の前からザックが消えた

突然のことに俺は一瞬硬直し、ザックの姿を探した


「余所見をするでないぞ」


その声が聞こえた瞬間、俺の腹に鈍い衝撃が走った

ザックの蹴りが俺の脇腹に直撃して、ズバァンと凄まじい音を立てて俺は飛ばされた。


「チッ、あの爺さん、いきなり速くなりやがった」

「若者にはまだまだ負けんぞ」

「まったく、魔族より強い人間がここにもいるじゃねえか」

「さっきの蹴りを食らってほぼ無傷な奴は先代の魔王くらいのものじゃよ」

「褒められてもうれしくないな…次はこっちからいくぞ!」

俺はそう言うと4割程の力でザックのもとに駆け出した

「おおぅ、なかなか速いのぅ。目で追いきれんわい…じゃが、甘い!」

「グフッ」


突然俺は後ろに吹き飛ばされた

(なんだ?今何が起きた??)

そう思ってザックの方を見るとザックはこちらを見てニヤニヤしながら挑発をしていた

(あいつ…こっちを挑発して攻撃を単調化させるつもりだろうがそうはさせねえ。だが、先ずはあいつの高速移動の秘密を見つけてからだな)

そう考えたツバサは攻撃よりもスピード優先で様子を見ることにした


「ほほぅ、ここで攻撃をしないでこちらの手の内を探ろうというのじゃな。なかなか面白いやつじゃのぅ」


そう言ってザックは、再び俺の目の前から消えた


「そうか、無魔術のワープを持っているのか。それならさっきまでの移動速度も納得だな…俺もワープを使えるようにしておけばよかった(泣)」

「戦闘中に考え事をするとは余裕じゃのぅ」

ザックが再び乱打を始めた

「とりあえずあんたの無魔術は使えなくさせておくぜ」


そう言って俺はザックの拳を掴み、強奪を発動させた

(よし、無魔術ゲット)

そしてそのままザックの腹に蹴りを入れた


「さっきのお返しだ」


ドガッ、と凄まじい音を立てて吹き飛んだザックだったがすぐに起き上がった


「ワープが使えん…お主、いったい何をした?」


ザックが動揺していた


「それは企業秘密なんでな、例えばギルドマスターでも教えるわけにはいかない」


「まぁよい、そろそろ勝負を終わらせるとするかのぅ」


そう言った瞬間、ザックの拳に力が集まり始めた


「ここであいつの攻撃を止めなかったらこの訓練場が崩壊するかもしれないな…ならば俺も少し力を出してやるか」


そう言って俺は7割の力を右手に集中させた


「若者よ、ここまで楽しませてくれた礼じゃ。これに耐えきったらSランクに昇格させてやるからのぅ」

「こっちも盛り上がってきたから少し力を出すぜ!俺の一撃に耐えてくれよな!!」

「「行くぞ!」」


そう言って俺たちは同時にお互いの拳を放った


チュドーン!!


そして俺たちは物凄い轟音を立てて吹き飛ばされた

ドゴゴゴゴゴゴゴ

轟音を立てながら建物が崩壊する

(もう少し加減をしておけばよかった…リリーがケガをしてないといいなぁ)

そんなことを思いながら俺の意識は遠のいていった

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