「デジモノファーム」守護神vs創設者編

石川夏帆

プロローグ~暗示する夢~

ドックン、ドックンーー。


身体中が波打つ程の激しい重みのある鼓動。


ドックン、ドックンーー。


まるで水槽の中で胎児のように、体を丸めて、浮遊しているような気がしていた。


上下左右も分からずにくるくると巡っているようで心もとなく、不安が広がっていく。


(ここは何処なんだ…)


閉じた瞼の所から白い光が漏れて眩しい。


目を開きたかったが、自分のもののはずの二つの瞼はピッタリと閉ざされて自分の意思では動くことはなかった。


開けと開けと唱えて、行動にしようと試みたが何度やっても、出来なかった。


それに身体中も動かない。指一本、眉毛一つ動かせなかった。


金縛りにでもあったように…


瞼や指先に何度も意識を集中さて繰り返し、動かないことに焦りを覚えたその時、焦る自分の背後で何者かがそれを見て笑った気がした。


その笑った何者かの更に背後には、得たいの知れない強大な源を感じ取った。


(僕はどうして?)彼は恐れていた…


心の中に宿ったもう一人の自分とそれを操る冷酷的で機械的なもの…


(僕を利用する気か…)


顎を無理矢理動かして、必死になって叫ぶが、上手く言葉が出ず、うわ言のような迫力不足なか細い声だけが口の中で響いた。


ーーそう、彼は、体の自由を奪われて、空間に今にも溶け込みそうになっていたのだ。


それを気がついてもがくが、今一つ抵抗が出来ていない…


寧ろ、ズブズブと底無し沼に引きずり込まれていくような…


もがけばもがくほど、ぬかるみにはまっていくのだ。


(カハッ!)


(無駄な抵抗はやめた方がいい…)空間が不意にそう言った。


弄ばれ、狡猾でしたたかな知性の操り人形になっていくのだ。


(僕はこんなの望んでいない…)


それが彼の最後の良心の呵責だった。


取り留めようとする意識の前に、道徳や哲学を知らない理論的効率的な判断をするものは、消し去って連れ去っていく。



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