プロローグ~始まり~

今日は久々に、自分の通う高等学校へと行くのだが、クラスや学年・・・いや学校中の人々との関係は、いたって平穏で特に騒いだりはしゃいだりもなくごく平凡で普通だ。まあ、何かあれば俺はすぐにクラスから抜け出してしまうのだが・・・


――クラスの異端児・・・


学校というものは数百人のたくさん人が集まるところだ。そんなやつは時々一人二人はいるだろう・・・

俺はまさしくそんなタイプだった。


そんなことを、ぼんやりと思いながらトースターに食パンを入れ、ジッとタイマーを回した。

遠赤外線が真っ赤になるのをしばらく見つめていた。


「何のために学校に行っているかね?」「現実世界なんかに興味がなくなってしまった俺は・・・」


そう俺は、激烈で想像を絶するような苦しい孤独を与えた現実世界に嫌気を覚えて、自分の生きるために世界を作ったのだ。


俺のリアルを充実させる。

それが、VRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)

仮想現実大規模多人数オンラインをベースとしたオリジナルの世界。

俺と親友とで創った、「デジモノファーム」だった。


親友…


俺はその思った言葉に反応して顔を上げる。


隼人…


リアルを信じきれないでいた俺のすべて意見を受け入れて、お前のやりたいことをすればいいんだよ。俺が味方でいる。協力するよ!


明るい優しい声と表情で、まるでお前はお父さんかよっ!って突っ込みたくなるほど、親身になってくれた友人を…


自分が助かりたいがために、非情に見捨てた俺をお前はきっと恨んでいるだろうな…


お前と作った世界を、俺はそれでも愛して、慕っている…


許してほしいとは思わない。恨んで殴られてもいい…


本当は後ろめたくて仕方がないが、だけど、俺は、この新たに手に入れた世界に依存して、生きていた。


これなしでは今の世界では生きていけない。


それほどまで、貪欲な感情が芽生えていた。


隼人に申し訳なくて、深く罪悪感があるのに、自分の生活が大切で捨てたくなかった。


自分勝手なやつ…


トースターから、視線を離すと…


俺は、その隣の太い柱に向くと、自分自身に苛立ち、頭を故意にぶつけたのだった。


ドゴッ!


鈍い音が響き、激痛が頭から全身を駆け巡る。


それを構うことなく、柱に頭をつけて嗚咽する。


「ごめんな。自分勝手な最低な親友で…」



そうして俺は現実から逃げたのだった。

親友を探すため、そして俺の世界を守るため・・・


俺は正義を貫き、友人を救いたかったんだ・・・


それだけだった。


もう一度、あの時と同じように微笑みを向けてほしかった。

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