第49話

 方や、無傷ではあるものの魔法を知らない魔法使い。

 方や、戦闘専門の魔法使いでありながらも満身創痍。

 朝来天津から見れば、互いに正と負の要素を持っているが故に、この戦いはどちらが勝つか分からない勝負であった。

 しかし、それは当然と言えば当然。

 そういう戦いになる様に、調

 その理由は、

「あの子が出来ることを全部がアタシがやったら、これからのチュー坊のためにならないだろう」

 と、本人が聞けば、顔を青ざめそうな意見。

 まるで経験値を稼がせる様な気軽な気持ちで命を削る死神と弟分をぶつける。正気を疑わせる出来事だったが、そんな状況でも天津はかなり楽観視していた。

「不憫だねぇ。レイブン」

 その声が聞こえたわけではないだろうが、レイブンは雄叫びを上げながら、まっすぐ忠泰に向かって駆け出す。

 それを見ながらポツリと言った。

「あの子には三重の加護が掛かってる。そんな簡単には解除とっぱ出来ないよ」

 レイブンの左手が浅葱に触れた。

 だが、魔力が忠泰に流れ込んでも命を落とす事はない。

 案の定、"死"の魔法は完全に無効化レジストされている。

「さて、アタシは例の男の子でも探しに行こうかねぇ」

 そう言って、その場を離れる。

 勝手知ったる自分の家。その少年がどこをどう通って逃げて行ったのか、大体の想像は出来る。

 大体のお膳立てを仕込んだはずなのに、まるでその結果には興味がないかの様に。

 もちろん、彼女もこの戦いはどう移ろっていくのか、興味が無いわけではない。

 しかし、それは過程の話。

 先程も言った様に、勝負はどうなるのか分からない。だが、、わざわざ見届ける必要などあるまいて。

「ま、ここが頑張りどころだよ。チュー坊」

 天津にとっては、経験を積ませるという事よりもさらに重大なことがあった。

「魔法使いになるっいうなら、自分で引き受けた仕事ちかいくらいは自分で果たさなくっちゃねえ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る