補遺

【読了者のための登場人物紹介】

【九十九段下】


三島ヒロト

 主人公。九十九段下の岬で生まれ育った青年。岬において特に決まった仕事はない。少年時代からエキナカの世界に強い興味を持っており、追放者である教授や東山の世話を進んで行っていた。狭い岬でずっと暮らすことに不満があり、暇があれば力の限り沖のほうへ泳いだりしている。おかげで体力面は岬でも随一だがあまり使う機会はない。作者によると「彼はいわば物語のカメラマン役なので、本人はあまり写ってないんだな」。


教授

 ヒロトが幼いころに九十九段下に流れてきた老人。来たばかりの頃は言葉が通じず、言葉が通じるようになった頃は頭のほうが曇ってしまったために素性はよく分からない。九十九段下では物がわりと余っているため、彼のような老人を置いてもさほど不都合は起きない。岬全体で何らのトラブルがあった場合にたまにボソリと的確な助言をすることがあるので、ごく一部では敬意を払われている。


ヨースケ

 九十九段下のエスカレータ上にある「お花畑」で、エキナカから排出されるゴミから使える物を下に送る掃除人。掃除人の多くは通いなのだが、彼はエスカレータの登り降りが面倒だという理由でずっと上にとどまっており、体力が落ちてもう登り降りができなくなってしまった。スイカネットの情報収集もやっているが技術はエキナカの一般人並みで、SUICA認証もできないのでほとんど役に立つものは得られない。


【キセル同盟】


二条ケイハ

 同盟のリーダー。京都出身。スイカネット干渉に関して極めて高い技術を持ち、キセル同盟を創始して京都一円の支配を図る。同盟の崩壊後は不正判定情報のネット拡散を抑えながら東へ逃亡し、その途中で仲間とバラバラになる。最終的に甲府で ICoCaシステムを構築しひとまずの安住を得る。好きな飲み物は宇治茶で、甲府に来てから静岡茶しか手に入らないことを不満に思っている。普段着はジャージ。眼鏡は10個くらい持っている。名前の由来は「三条京阪駅」。


熊野シドウ

 同盟のナンバー2的な地位にあった。紀伊半島南部の村で生まれ育ち、村を追い出されて京都に至り、煙草密売業者を経てキセル同盟創立メンバーとなる。エキナカ住民にしては比較的大柄で「外見が野生動物っぽい」とよく言われるが性格はきわめて温厚かつ社交的で、人付き合いの嫌いなケイハの代わりに同盟のロビー的な役割を果たした。同盟崩壊後は大阪湾を経て瀬戸内海に逃れる。名前の由来は「熊野古道」。


東山

 京都を統治していた二つの警察のうち左警察と呼ばれる方の末端警察員であり、シドウから賄賂を受け取って警察情報を横流ししているうちにキセル同盟のメンバーとなった。同盟崩壊後はケイハや他のメンバーとともに東側に逃れるが、最終的にエキナカから追い出されて鎌倉へ出て、そのまま九十九段下に辿り着く。プライドが高く全般的に他人を見下しているがケイハのことだけは尊敬している。名前の由来は京都の地名。


二条ケイジン

 ケイハの父親。スイカネット干渉を通じて自動改札の行動をある程度制御し、それを用いた運送事業を運営していた。技術大好き人間で用途の善悪にはあまり頓着しない。喋るのがものすごく速い。座右の銘は「多様性が大事」。


田中モドリ

 ケイハの母の古い友人で、ケイハの母親代わりのような存在。キセル同盟成立後は同盟メンバーからも「お母さん」として慕われたが、彼女自身は同盟の活動をほとんど知らない。ケイハによると「うどんのダシをとるのがエキナカでいちばんうまい人」。


【JR北海道】


ネップシャマイ

 関東地域担当として派遣された工作員。諸事情により外見が幼い少年。無駄に喋るし無駄に動くので本社では「工作員には向かないのでは」と懸念されたが、一般情報収集ならこれくらいの方がいいだろうという上の判断で結局派遣された。常に丁寧語で喋る。なんやかんやどこでも他人と仲良くなるので、エキナカ一般生活に関する情報を手に入れてくる。作者によると「最初はネタ小説のつもりで書いてたけど、彼が登場したあたりから真面目に書くことにした」。


ハイクンテレケ

 四国地域担当として派遣された工作員。長距離任務のため特別仕様のボディをあてがわれた。性格は極めて慎重で人間らしいコミュニケーションを取るのが苦手だが、長距離移動を経て横浜駅の全体構造に関して貴重な重要な情報を本社に送ってきているので「惑星探査機みたいな子」と呼ばれている。でも本人は狭いところが好き。名前の由来はアイヌ神謡集「狐が自ら歌った謡 ハイクンテレケ ハイコシテムトリ」から。


帰山

 JR北海道本社勤務の社員。ハイクンテレケの担当技官(工作員にはそれぞれ人間の担当技官がついている)。心配性。


サマユンクル

 東北地域担当として派遣された工作員。派遣された全12人のうちで「最も優秀」と言われる。「最も人間に似ている」とも。名前の由来はアイヌ神謡集に登場する神。


【JR九州】


川上

 JR九州軍事部門社員。規律と責任を重んじる性格で、後に軍事部門の実質的な長となる。仕事上ストレスが多いので一人でいるときは大体焼酎を飲んでいるがほとんど酔わない。名前の由来は日本武尊の九州遠征に登場する「川上武」。作者によると「最後まで性別が決まらなかった」。


大隈

 JR九州技術部門社員。スイカネット監視が仕事となっているが、面倒なので大部分を自動化するbotを仕込んで、勤務中はだいたいお菓子を食べながら本を読んでいる。どう見ても性格が真逆な川上となぜか仲が良い。脱走者を見つけると友人でも平然と報告する。作者によると「ほぼ自分なのでいちばん書きやすかった」。

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