【教訓の四 挑戦されたら逃げるな。全てを失う事になる】

第12話

 コルダはアレルヤの隠れ家で療養していた。先の旅の疲れもあってか隠れ家に着くなり倒れ込んでしまった。ノーバディは数日前から、アレルヤの仲間に戦い方を教えていた。彼女には看病なんてものは出来るわけはなかったし、アイツにはこっちの方が向いているとアレルヤが仕事を与えたのだ。最初こそ不満たらたらで文句を言っていたが、直に教え方に熱が入りノーバディは声を荒げていた。

「やっぱアイツは人に何かを教えるのが向いてるみたいだな。本人は自覚してないみたいだが」

 アレルヤはテントの中から外にいるノーバディを覗いていた。何だかんだ言いながらもノーバディの事をよく理解してるのだろうとコルダは思った。

 コルダは手元にある干し肉を食べた。不味い干し肉であった。この隠れ家に住んでる老人や子供が差し入れにとくれた物であった。あいつらなりの精一杯の感謝のつもりだと看病してくれてるアレルヤは言った。

「見ての通りここは親や子どもを殺されて身寄りのない連中が集まってるのさ。革命軍とか強気に言った割には実体はこんなもんさ」

「なんで私を助けたの?」

 コルダは唐突にアレルヤに投げかけた。アレルヤにとっても遺産は大切な物なのかも知れないが、それ以上にここにいる連中のためを思えば、あまり迂闊に動けないのも事実であった。コルダの言葉を聞いてアレルヤは少しハッとしたが、コルダに語りかけるようにゆっくりと話し始めた。

「特に理由なんてないさ。強いて挙げるとするなら放っておけなかったからかな。お前等が砂漠を横断しようとした時さ。ありゃあ普通の連中じゃないねと踏んだね。明らかに怪しかったのさ。あの名無しは知らないがな」

 アレルヤは外にいるノーバディを一瞥した。相変わらず面倒見よくアレルヤの仲間を見ていてくれていた。コルダはそんなノーバディを見て少し可笑しくて笑った。

「奴は悪党のように振る舞ってるが根はいい奴だ。だがそれが命取りになったりする。常に人を信じられないからこそ信じてはいけないときに人を信じてしまう嫌いがある。お前も気をつけろ。奴は何時かとんでもない判断をするかもしれない。その時はお前が止めなくちゃならない」

「私には関係のない事よ。アナタの事とあの賞金稼ぎの事は」

 アレルヤは口を大きく開いて笑った。コルダはそれを見て少しムッとなった。

「いや済まないねえ。だがねアンタのその反応をみたら安心するさ。アンタら良いコンビになるさ!」

「アナタの忠告を感謝するわ」

 多少の皮肉を込めコルダは言った。どうやらアレルヤには前から私たちは良いコンビに見られているらしかった。

「そりゃあどうも!」

 アレルヤは特に気にした感じでもなく快活に答える。

 「ところで」とコルダは一度話題を遮り別の話題に話を変えていった。

「あなたマーシャの遺産のことどう思う?」

「まあ泥棒だからねアタシ達は。大金はあるんだろ?そうなればここにいる連中にも少しは余裕は出来るさ」

「やっぱりアナタも、その目的のために動いていたのね」

 コルダはそう言って顔をノーバディに向けて言う。

「あの馬鹿とは違ってアナタには何と言うか他人行儀とでも言うの?何か普通の賞金稼ぎとは違う雰囲気があったわ。まるで自分に遺産のことに眼中ないみたいに」

「まあ何だろうね他人の為にかな?私はあの名無しみたいな立ち回りも嫌いじゃないがね」

 彼女はポケットから葉巻を取り出し火をつけて話を続けた。

「昔もアタシは誰かの為に何かをするってのには将来縁のないことだと思っていたさ。だがねこうやって誰かと一緒に暮らしていくといくと案外悪くないかなと思ったのさ。最初は気まぐれだったさ。そしたらいつの間にかこんな大所帯になっちまった。皆家族みたいなもんさ。今はないがいつかはガキたちのために学校やら何やら作ってやりたいのさ。いまは何もなくてもこの子たちはいつか大きくなったときに胸を張って私たちは革命軍の出身ですってね。その為には金が今よりももっといる。まあ理由なんてそんなもんさ」

 コルダはアレルヤの眼を見つめた。彼女の眼には何とも言えない疲れてしまっている人間の眼をしていた。彼女はときおりこういった眼をするときがある。それはまるで彼女の人生の過酷さを表している。

 だが今の彼女にはそういった疲れを飛ばすように意気揚々に語りかけていた。これが彼女の生きている理由なんだと。

「何か可笑しい顔でもしてたかい?」

 コルダがそう思っているとアレルヤが言った。

「いいえ、良いことだと思うよ。こんな時代にそんな事を考えられる人間がいるだけで私は誇りに思えるもの」

「そいつは嬉しいね。何こんな話普段誰にも話さないもんでね。少し胸の突っかかりが取れたのさ」

 アレルヤは席から立ち上がると部屋から出ていこうとした。

「アナタの話面白かったわ。ありがとう」

 コルダはそう言うと手をアレルヤに振り始めた。

「礼を言うのは私の方さ。話を聞いてくれてありがとな」

 少し気恥ずかしい感じでアレルヤは部屋から出ていった。

 ノーバディはそれを見た後にそっとコルダのテントの中に入ってきた。

「お取り込み中悪いがね。出発はいつにする。落ち着かなくてアタシはさっきからムズムズするんでね」

 コルダは顔しかめていった。

「ご安心を!すぐにでも行ける準備は整っているわ。明日にはもう動けるわ」

 アレルヤのとの話で少し良い気分になっていたコルダはこの女の節操の無さに幾分腹が立った。こいつと話すと酷く気分がイライラするからだ。

「そいつは良かった。それで行き先は?」

「安心なさい。案外近くよ。このまま行けば2日と掛からないわ」

「そりゃあ頼もしいね」

 気分が良いのかノーバディはポケットから葉巻を取り出して一服しようとした。

「ここは禁煙よ」

「はあ?」

 コルダの物言いにノーバディはひどく腹をたてた。それでもお構いなくコルダは続けた。

「最近の発表でタバコの類は人体に大きな悪影響を及ぼすそうよ。だからタバコなんて止めなさい」


「ほらほら遺産は待ってくれねえぞ。早くしろってんだ!」

 ノーバディの罵声が荒野に響きわたっていた。

 3人は次の日から馬を走らせて目的地であるサウンズヒルの墓地まで向かっていた。皆誰もが時間がないのは自覚していた。だからこそ誰も喋らず沈黙が続いていたが煮を切らしたのかノーバディは悲鳴にも近い声を挙げていた。

「何時着くんだよ?こんなんじゃペキンパーに先起こされちまう」

 彼女はひどく酔っていた。まるで財宝が近くにあるのにも関わらず手を伸ばそうとしたら離れて行くみたいに。

 その時であった。3人の眼下に大きな橋が見えた。コルダが言うには墓に向かうにはこの橋を渡らなくてはならないらしい。しかしここでも問題があった。この橋は元々、政府が国地帯で分ける為に建設した関所があるらしい。つまりここを渡るには、その政府の眼をかいくぐらなくてはならなかった。

「ここが例の橋かい?やけにデカいじゃないか。それで、あれが例の関所かい?」

 そうだとコルダは頷いた。3人は事前に決めていた作戦に乗り出すために準備を始めた。


 この関所の当直を任されて早3年になるリットナーは奇妙な出で立ちをした2人組を見て不思議に思った。

 何だあれ?。率直にそう思った。その奇怪な姿を見たので、近くにいた相方にも声を掛けたが当の相方はこの暇な仕事のせいで昼寝をしていた。

「たくッ」

 リットナーは重い腰を挙げてヨタヨタとこちらに近づく奇妙な2人組をまじまじと見てみた。まさに奇妙な出で立ちという言い方がしっくりくる。2人組は教会の人間のように僧服の格好をしていたが、どれも非常に胡散臭く服もよれよれであり何処の宗派にも属さない僧服であった。リットナー自身は宗教を信じてないし知りもしないのだが、そんな事情を抜きにしても珍妙な格好であることは間違いなかった。

 しかもこの2人組はあろうことにも棺桶を担いでいた。何故、棺桶をとも思ったがよく考えない方が良いのかも知れなかった。リットナーの目の前まで来た2人組は、どうもと彼に挨拶した。

「アンタらこの関所を渡りたいのか?」

「ええそうです。ナムアミダブツ」

 何か聞いたこともない珍妙な言葉を発していたがリットナーは深くは突っ込まなかった。

「それで?その棺桶には何が入っているんだ中を見せろ」

「いやいやこいつはあまり覗かない方が良いですよ」

 棺桶の中に何が入っているのか大体の想像はついた。何か腐ったような異臭をまき散らしており鼻が曲がりそうであった。

「何なら見せましょうか?」

 にやっと僧服のみすぼらしい女は言った。

「い、いや遠慮しておく。つまりお前らはこの棺桶を向こうの教会まで届けたいということでいいんだな?」

「はい、そんなところです」

 リットナーは2人の気味の悪い聖職者の顔をもう見たくなかったので早くこの2人には行って欲しかった。リットナーは2人に通行許可証を渡すとそそくさと2人から離れていった。

「しかし酷い臭いだ。早く運んでってくれ!」

「はいはい、分かりました今すぐにでも」

 2人は同時にかけ声を挙げてと言って棺桶を持ち上げて歩き出していった。

 ようやく落ち着けると思ってリットナーが腰を下ろそうとしたときであった。

 棺桶からくしゃみの声が聞こえたのである。

「おい!ちょっと待て」

 リットナーの怒声に2人は振り向いた。よく見ると僧服の2人の酷く強ばった顔をしていた。まるで隠し事でもあるかのように。

「今、中から声が聞こえたぞ。もう一度、調べさせろ」

 リットナーは2人の僧服に投げかける。慌てて僧服の1人が答えた。

「いやあ今のくしゃみは私がしてしまいましてね。なにぶん最近は冷え込みますので」

「いや、間違いなく棺桶の中から聞こえたぞ。文句があるのなら貴様等をこのまま連行してもいいんだぞ!」

 僧服は言葉に詰まり何も言わなくなった。それを見たリットナーは棺を開けようとした。その時に彼の横からカチリという音が鳴った。

「声は出すな。アタシ等はただこの橋を渡りたいだけなのさ」

「くそったれな賊どもめ!」

 ノーバディとアレルヤはリットナーと彼の相方を縛り上げて関所の倉庫にしまい込んだ。もう数日すれば変わり番の奴が来れば気づくであろう。

「正直、何が良い案があるって聞いて期待して損したわ」

「しょうがないだろ!アレルヤのとこの連中の服を借りて何かやるってことしか頭になかったんだ」

 ノーバディは言って2人をはやし立てた。

「さあ時間はないよ。急いで墓地まで向かうんだろ?」


 3人は関所の連中の使っていた馬を拝借し小さな古い共同墓地までたどり着いていた。ここがサンズヒルの共同墓地であった。ようやくイングリッシュ・マーシャが眠っている墓までたどり着いた。馬から降りて3人は共同墓地まで歩いていく。コルダが言うにはここには歴戦の無名戦死の墓がほとんどだそうで、国を変えようとした連中の末路だとも言った。ここに眠っている連中は歴史から消される。政府は不浄の存在として未来永劫彼らへの話はないだろう。

 くだらない。

 例えどんなに理想を掲げていても最後は結局こうなる運命だ。いやここにいる連中なんて墓があるだけ、まだ良い方さ。こいつらのお仲間の大半の連中には墓なんて代物はないはずであるとノーバディは思った。

 その時であった。

「だれだ!?」

 声の主を振り返るとそこには腰の曲がった1人の老人がいた。老人はスコップを片手に持っている。どうやらここの墓守であるとノーバディは思った。

「爺ッ!」

 どうこの老人に言い繕うかと考えてる矢先に突然、声を荒げたのはコルダであった。まるで老人を旧知の仲のように言った。老人もコルダを見て表情が変わった。

「お前さん、こんな所で何してる?」

 老人はコルダに言った。

「一体どういうこったい?」

 ノーバディとアレルヤは事情を説明してくれんとばかりに2人を見つめた。

 どうやらコルダが説明では、この爺さんは昔からお世話になった人だという。幼少のコルダを引き取ってから男でひとつで育ててきたそうであった。なのでコルダにとって実の祖父のような存在であるようであった。そこからノーバディはコルダの話に辻褄が合わなくなったのに気づいた。

「ちょっと待て。お前、娼婦じゃなかったのか?」

「あれは、そう言った方が、あなた達に都合が良かったからよ。実際、私はここの墓守で爺の手伝いをしてただけよ」

 話に聞くとコルダは腕の立つ用心棒が欲しかったと言う。そのために、わざわざデブリカットの町まで来て服を娼婦のものに変えて、ペキンパーから逃げている振りをしていたわけであったようだ。

「なあ、いまなら聞かせてくれないか?なんで、おめえはペキンパーに追われてる理由って奴をさ」

 ノーバディの言葉にはただ真実を知りたいという、ただ純粋な気持ちが見え隠れしていた。アレルヤもこの少女に深くは詮索はしないつもりではあるが、やはり気になることであった。

「悪く思わないで、やっぱり話せないわ。別にあなた達がどうこう、」

「ああ、いいよ別に言わなくて。こっちも悪かったよ。それで、マーシャの墓は何処にあるんだい?」 

「うん。今から案内するわ。着いてきて」

 コルダに説明されて2人はコルダの後に続き墓の頂上まで目指していく。長い道なりに続いている墓所である。ここが何処までも続くかのように待ちわびているように2人には見えた。

「お目当てのマーシャの遺産は何処にあるんだ?いい加減教えてもいいんじゃないか?」

 ノーバディは声を少し荒げた。ついにイングリッシュ・マーシャの遺産の所までありつけたのにここでもし何もなければ骨折り損なのである。しかも財宝が眠っているのは何もない寂れた共同墓地であったのも理由の一つにあるに違いなかった。とてもここに財宝があるには思えない。それに反してコルダは答える。

「墓の名前はアーチストンの墓の隣にある無名戦士の墓よ。そこに遺産の手がかりがあるわ」

 コルダは静かにそう言いまた前を向いて歩き続けた。

「そうかい、じゃあ早速そのアーチストンの墓を探そうじゃないか!」

 ノーバディの答えにアレルヤは告げたした。

「嬢ちゃんはそのアーチストンの墓の場所は知ってるのかい?」

 コルダは首を横に振った。それを見たノーバディはついに怒りに露わにして声をあげる。

「おい、分からねえってのはどういうことだよ!?お前、墓の場所くらい分かってるて言ってたよな!」

「私が聞かされていたのは墓の場所と墓の名前だけ。墓の正確な場所までは知らないわ。ここまで来たら地道に探すしかないわ」

 コルダが言うには、イングリッシ・マーシャは無名戦士として墓に入りたいといい彼のことを知らない連中が埋めたとされている。なので墓守のエッガー老人は知る由もなく現在まで、マーシャの墓は何処知れず眠っているという。

「ああ、結局そうなるかい。まあここまで来たら渡りに船ってやつだ。付き合ってやる。こりゃあ地道に探すしか他なさそうだな」

 3人はしらみ潰しに墓の名前を順に調べ始めた。ノーバディは墓に名前書かれたものが、ほとんど無いことを知って絶望的になった。酷いときには名前が書かれていたのだろうが、長い年月による風化と粗末な字で書かれていたために薄れてよく見えないものなどもあった。

 誰も喋らずに黙々と調べ続けてから数時間が経過したあとアレルヤの声が聞こえた。

「おい、あったぞ。アーチストンの墓だ!」

 残りの2人は走ってアレルヤの所に向かうとコルダは墓を掘り起こすようにとスコップと棺をこじ開けるバールを持ってきた。

「神様ありがたいよ。今アタシはアンタ様に最大限の感謝を送りたい気分だ」

「私も同感だよ。まあ今にしてみれば結構あっけなかったな。何はともあれ助かったぜ」

 3人は一斉に墓を掘り起こそうとしたその時であった。ノーバディとアレルヤの2人の目つきが変わった。

「聞こえるか?」

「ああバッチリにな。まったく最悪なタイミングでおでましかよ。やっぱ神様とか言う奴は信用ならないね」

 その時コルダにも分かった。馬の足音だ。しかも大勢の馬が走ってこちらに向かっている。数十人って単位じゃない数百人って数の音だ。明らかに急ぎでこちらに向かっている足音であった。アレルヤは取り出した双眼鏡で馬の足音のする場所を確認し始めた。

「ありゃあ、たぶんリディロだな」

 アレルヤは言った。コルダは驚きのあまり言葉を失った。3人は彼らに付けられていたのであった。

「連中も人数を揃えるためにギリギリまでこの墓地まで近づかなかったんだ。そして私達を殺すための準備をずっと伺っていたのさ。執念深いこった」

「来るまで、どれくらい掛かるの?」

「さあな時間にして大体2時間ないところだろう。数は予想できないが100~200くらいだろうな」

 コルダはリディロにされかけたことを思い出してひどく憂鬱な気持ちになった。

「ほら落ち込んでじゃないよ。今すぐにでも準備をして迎撃しなくちゃならないんだ」

 3人は急いで墓の入り口まで戻り墓守りのエッガー老人に事情を説明した。老人は、話の内容を聞いても特に驚きもせず3人に言った。

「そうと決まったら話は早い私に付いてきなさい」

「おい爺さん。アタシ達は今すぐにでも準備をしなくちゃならねえんだ。こちとらのんびりしてる暇はないんだよ」

 ノーバディの言葉に老人は特に取り乱したりするようなこと無く言った。

「何アンタ達をこのまま死なす訳にはいかんよ。マーシャの墓の借りもあるしな」

 エッガーはノーバディが腰に付けていたコルダのベルスタアを見て言った。

「それかい鍵になってる銃というのは・・・。ちょいと見せてくれないか?」

 しぶしぶノーバディはエッガーにベルスタアを渡すと、まじまじと見つめていた。その様子を見てコルダは言った。

「はい、父がおっしゃてました。これを使うようなことがあったならエッガーに渡してやってくれと」

「あの若造め。この老いぼれにまだ仕事させるきか!」

 3人はエッガー老人の後に続くと彼の部屋に案内された。そこで棚の奥から埃がたまっている作業箱のようなものを取り出した。

「今からワシはこの銃の修復をしなければならん。この銃はいわばイングリッシュ・マーシャの遺産につながる文字通り鍵となっている銃だ。これを直すにはそんなに時間は掛からん。半日もあれば直せる。だからお前さん方に頼みがある。ここを半日の間あんたらの言う荒くれどもから守って欲しいんだ」

 エッガーの願いに3人は答える。

「遺産のためだ。しょうがねえ。いっちょやってやるさ」

「お前たちにここを守るために是非使って欲しいものがある。もしかしたら役に立つ代物かもしれん」

 そう言って老人はそそくさと壁の前に立ち壁を扉のように横にスライドさせるように開けた。老人は部屋の中に入り3人も続いて入っていく。

 スライドさせた部屋の中には数多くの銃器が置かれていた。中に見たこともないような変わった物もあった。部屋が地下にあったので結局この部屋の見た目だけでは分からない仕組みになってきた。部屋自体は決して広くはなかったが銃器の量は桁が計り知れない。数百人という人間が使っていたのだろう。

「ここの銃たちはな。ここで死んでいった無名の戦士たちのものじゃよ。皆イングリッシュ・マーシャの仲間さ。解体して処分するのも悼まれてね。こうしていつか新しい者が現れたときに使えるように手入れだけは欠かしてはいなかったよ。是非使ってやってくれ」

 棚に並べられた銃器の数を見て3人は溜息がでた。

「こいつはすげえ・・・・・・。こりゃあ使えるぜ」

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