第五章
都市1 ―ハシバ―
かつん。
反射的に顔を上げ、足音のするほうに目を向けると。
大柄な男が、こちらに向かって歩いてくるのが目に入った。
数人の、これまた屈強そうな男の影を引き連れて。
思わずユウキは息を呑む。
「やあ、ユウキくんだね」
大柄な男は、朗らかな声を上げた。
老人だ。
トキタよりも高齢だろう。
屈託のなさそうな好々爺然とした笑顔の中で、黒い目だけが剣呑に光っていた。
ユウキはとっさに身構える。なんだかよくないものを感じる。
「どうしたんだね。ユウキくんだろう」
もう一度、男は陽気な調子でユウキの名を呼んだ。
「そうだけど。あんたは……?」
「そう緊張しなくていい」
そう言われても……。ユウキは体の力を抜けない。
リラックスさせたいなら、後ろの怖いお兄さんたちをどこかにやってくれ。彼らの表情には、友好的なものは一切感じられなかった。
(おれは、何のためにここに来たんだっけ)
目的を一瞬忘れそうになった。そうだ、なんだか知らないけど、あのいけ好かないトオルのヤロウのせいで罰を受けるんだ。そのために、ここに来た。ということは。彼が、刑の執行者だろうか?
「トキタくんから、話はよく聞いているよ」
トキタの名前が出たことで、一瞬気を抜いてしまいそうになった。むかしからの友人の名を呼ぶような気安い雰囲気が、そこにあったからだ。しかし。笑顔の中で一箇所だけ笑っていない、射抜くような彼の目には、気を許せない。
「じいさんを知っているのか?」
「『じいさん』なんて呼ばないでやってくれよ。彼が悲しむ」
だって、じいさんじゃないか。あんたも。
「古い友達だよ。トキタくんとはね。ものすごく、古い」
彼が妙に語調を強めたのに、思わず体が、忘れかけていた緊張を取り戻す。
そんなユウキを観察でもするかのように、間に合わせの仮面のような笑顔でしばらく見つめ、それら男はクッと喉の奥で笑った。
「想像した通りだ。利発そうな坊やだね。都市の無気力な子供たちとは違う」
褒められているようだが、「坊や」というところがいただけない。
「私はハシバ。この都市の最高責任者だよ」
こともなげに言う。最高責任者?
そんな凄そうな肩書きの人間が、なんでじいさんと友達なんだ。あの、暇そうな歴史学者のじいさんと?
「きみにはずっと、会いたいと思っていた。そう、もっとずっと前からね。トキタくんがなかなか会わせてくれなかったんだよ。やっと会えると思ったのに、彼はまた変な横槍を入れてじゃまをした」
彼の口調に、苦々しいものが混じったのを、ユウキは聞き逃さなかった。
(友達じゃなかったのかよ)
だいいち、おかしい。それではトキタがずっと以前からユウキのことを知っていたような口ぶりではないか。ユウキがトキタと知り合ったのは、つい先月のことだ。
「でも」
と、ユウキに与えてしまった違和感を取り繕おうとでもするかのように、ハシバと名乗る男はまた頬を緩める。そして、呆れたような、感心したような、微妙なため息をついた。
「きみはまた、問題を起こしてくれたようだね。本当に、きみは元気だ。きみの性格は、この都市の学校には合わない」
「だから、なんなんだよ……」
不穏な空気が辺りを漂っているのを、ユウキははっきりと意識した。この老人の作り物めいた微笑みに、軽口でも叩くような気軽な口調に、騙されたりなどするものか。
だが、身構えたユウキの耳に届いたのは、意外な一言――。
「だから、一緒においで。私と一緒に、この都市を作る側にならないかい?」
「はい?」
突拍子もない申し出に、力が抜けそうになった。
引き抜きか? ヘッドハンティングか?
(……じゃなくて)
「ほかの規則違反者はどうなったんだよ。そこにいるのか?」
「いるよ」
あっさりと、ハシバは答えた。
(なんだ、やっぱり悪い噂はただの噂だったのか?)
しかし……。
「ただし、きみは彼らと同じではない。彼らは操られる側だ」
ユウキは怪訝に眉をひそめた。
どうして自分が彼らと違うんだ。大して成績が良かったこともない。ほかの生徒に比べて、特に優れたところがあるとも思えない。遅刻常習犯の規則破り。たしかに都市の生徒に違和感を感じてはいたが、それを行動に現したことだってなかった。自分も結局、ほかの生徒たちと同じ、都市の無気力で無感情な人間の一人なんだと、諦めもした。
それなのに、どうして?
「怪しい」
ぽそりとユウキはつぶやく。言葉に出すと、不快感はいっそう増した。
「なんでおれだよ。ほかにもっといいヤツいっぱいいるだろ」
「きみだけだよ」
「何が?」
自分は特別だと言われても、あまり嬉しくなかった。こいつは怪しすぎる。
「われわれと同じ時代の――あの美しい世界の、優れた文明の子供だよ」
「……はい?」
「二〇六〇年代から来た」
「……どういうこと?」
「私と一緒に来るかね?」
頭が混乱してきた。従うなら教えてやると、言っているのだろう。
作戦だ。乗るな。なんだかわけが分からないが、こいつの言っていることはおかしい。
出生の秘密とでも言うのだろうか。ユウキはそんなものに疑問を感じたことはない。この都市で生まれ、ずっとここで育った。記憶に間違いはない。
出生に疑問ありというのなら、この都市の子供たち全員がそうだ。
親は誰で、どこで何をしているのか。
どうして大人がいないのか。
自分はどうやって生まれてきたのか。
そんなことは、知らないのが当然だ。
しかしもし、それが分かるとしたら?
自分がどこから来て、どこへ行くのか。知ることができるとしたら?
ここではない場所へ。行けるのだとしたら――。
「あーっもうっ」ユウキは頭を振った。「なんなんだよ! なんでおれがあんたと一緒に行かなきゃならないんだよ! 興味ないよ二〇六〇年代なんて!」
「覚えていないだけだ」
「覚えてたらなんだって言うんだよ。おれもエリやトオル同じ、過去から来た人間だって言うのかよ!」
戻れない過去の栄光をかさに着て、教室という狭い社会に君臨しようとしたトオルと、同じ事をしろというのか。エリのように、遠い目をして、いなくなった家族や友達やかつての生活を懐かしむ? そんなものが楽しいのか?
仮に自分が彼らと同じだったとして、ユウキ自身は覚えてもいないのに?
しかし、ハシバは鋭い声で一喝した。
「彼らときみとは違う! 何度も言わせるな」
静かに。それでも、有無を言わせぬ圧力。
先ほどまでと口調を一変させたハシバの剣幕に、ユウキは怯んだ。
「だって、あんたが……二〇六〇年代って……」
「ああ。だが、きみだけが、本物だ」
はっきりと断定する口調で、ハシバが言う。
「見てみたくないかい? きみが忘れてしまった、あのころの世界を。この都市が、一番栄えていた時代に戻るのを。それを作るのが、われわれ、眠りから覚めた前時代の人間だよ」
(われわれって……?)
言葉の端々に引っ掛かりを感じて戸惑うユウキに、ハシバは子供に教え諭すような優しげな声色を作って続けた。
「都市の子供たちは素直だよ。なんでも言うことを聞く。私たちが導いてあげれば、きっとあのころのような美しい世界がよみがえる。今は下地を作っているところだ。エリ――それに、トオルと言ったね? どうだい、彼らは。子供たちに、うまく二〇六〇年代の世界を伝えているかな? 彼らが道を
「どういうことだよ……」
「私と一緒に来なさい」
ユウキの疑問には答えずに、ハシバは一歩、ユウキに踏み寄った。
力ずくで連れて行けばいいではないか。
どうせ拒絶することなどできないのだろう?
しかし。
「行きたくない」
理由は分からない。が、従うことに、たまらない不快感がある。きっぱりと言うと、ハシバは面白いというように頬を歪めた。
「きみは、従わない生徒なんだったな」
「別に。遅刻と喧嘩をしただけだ」
「都市には大人に逆らう子供なんていない」
「大人がいないからだろう?」
ハシバは可笑しそうに声を立てて笑った。
ユウキはさらに不愉快になる。
「けれどきみはもう、元の場所に帰ることはできないよ」
ハシバが声色を変える。どこか相手の反応を楽しむような雰囲気から、はっきりと、冷たく言い渡す調子へ。
ほらね、楽しいお誘いなんかじゃないんだろう?
後ろに引き連れていた男たちが、わずかばかりに身を乗り出す気配を感じた。
「なんで、帰れないんだよ」
いちおう聞いてやるよ。おれがどんなにまずい状況か、言いたくてしょうがないんだろう?
「きみは重大な規則違反を重ねたんだよ」
「だから。遅刻と喧嘩だろ?」
ハシバは不適に笑った。
「教室の端末を使って、都市中枢の情報にアクセスしただろう」
「え……?」
イプシロン! あの無害そうなボロ端末が、頭に浮かぶ。
だけど――都市中枢の情報だって?
「見たんだろう? 『コールドスリープから覚醒した者たち』の名前を」
見た、かもしれない。しかし、名前だけだ。何のことだかさっぱり分からなかった。コールドスリープに関係があることだって、後で知ったのだ。いや、知ったというよりも、関連があるのかと漠然と想像した程度に過ぎない。
あんなものが、都市中枢の情報? 「元の場所に帰れない」などということになるほどの――?
ボロ端末のディスプレイに映し出された画面を次々に思い浮かべて、それでもそれほどの厄介な情報を目にしてしまった記憶にたどり着くことはできず、ユウキは混乱する。
そして、嫌な笑いを浮かべてハシバが次に口にした言葉こそ、ユウキに衝撃を与えるものだった。
「きみの友達が証言したよ。きみが授業用端末を不正に使用して、機密情報を閲覧していたと」
「……シュウが?」
愕然と、友人の名を口にする。
「きみは前々から、教室の端末を改造して、都市の機密にアクセスしようと企んでいた。何か探っているようだった。そして、クラスに転入してくる覚醒者たちに疑惑を抱いていて、彼らに言いがかりをつけ掴み合いの口論となった――」
あいつが、そんなことを……?
「彼が明日、クラスの生徒たちに伝える。きみが重大な規則違反を犯して、この地区からいなくなったとね」
「なに、言って……」
「きみの存在は、都市や学校のデータからは抹消されている。学校にはもう籍はない。居住棟に戻ってもきみの部屋はないよ。きみには私と一緒に来る以外の選択肢はない」
「だったら――」混乱する頭の片隅で、どうにか次の言葉を手繰り、ユウキは口に出していた。「連れて行けばいいだろう? ほかに選択肢がないなら……」
虚勢を張っているようにしか見えないだろう。そして実際、その通りなのだ。
「どこに行くのか知らないけど、どうせ、そうするしかないってんだろ? そんな、規則だとか罰だとか。そんなもんにかこつけたりしなくたってさ、あんた、『最高責任者』なんだろ、おれたちをどうにでも好きなようにできるんだろ?」
この先、自分たちがどうなるのか。何をすればいいのか。どうせ、分からないのだ。規則を守ってほかの生徒たちと同じように正しく暮らしていたところで。
与えられる課題をこなし、言われるままに生活を送ることしかしてこなかったし、これからも多分そうなのだ。
まとまりなく畳み掛けるユウキの言葉を、ハシバは面白そうに聞いていたが、やがて億劫そうにゆるゆると首を振りながら、ひとつ小さなため息を漏らす。
「それであってはいけない。正しく生活する者には、不自由のない暮らしを与える。ルールを狂わせるようなことがあっては、従順な者に混乱を与える。そして、規則違反者は罰せられなければならない。規則正しい世界の条件だ」
何か反論したかったが、言葉が出なかった。
「……それに」ハシバは懐柔するように語調を弱め、目を細めた。「きみを力ずくで従わせるようなことは、できればしたくない。分かるだろう。同時代の人間を傷つけたくはないんだよ。きみにはきみの意思で、これから私に協力してもらいたいんだ」
同時代の人間って? 協力、だって? おれの意思で?
「きみは元の場所には帰れない。だが、ほかの子供たちと同じ処罰をすることもしない。私に協力するなら、これまでの生活よりももっと面白いものを見せてあげよう」
「……」
「一緒に来なさい」
言い捨てるようにして、ハシバは体の向きを変えた。
ユウキについて行く意思がないと見て取ったのか、ハシバの後ろで黙っていた屈強そうな男が二人、両側からユウキの腕を掴む。
(おいおい、マジか?)
「なんだよ……何が力づくじゃない、だ……」
「きみが聞き分けがないからだ。元気なのもいいが、肝心なときには大人の言うことを聞くものだよ。でないと……」
「でないと、どうするんだよ」
「教育だな。都市の子供たちの教育が、私の役目だ。たとえば、そう――」
腕を掴んでいた両脇の男が、拘束を強める。嫌な予感に身を竦ませながら、ユウキは必死に体をよじる。すぐさま男たちの手にさらに力が入り、わずかな動きも封じられた。
「は、なせっ」
やっとのことで乾いた声を上げた瞬間、みぞおちの辺りに、鈍い衝撃があった。思わず膝を折る。倒れ込みそうになったが、両側から支えている男の腕はユウキの膝が地面につく前にそれを止めた。
頭が真っ白になる。体が熱い。吐き気がする。
「仕方ない――」
沈痛そうな色をにじませて、ハシバが言う。
「一度にいろんなことを聞いても、混乱するだけだろう。少し落ち着いてから話そうか。ともかく、こちらに来なさい」
引き立てられて、ユウキは立ち上がる。ハシバが入ってきたドアを顎でしゃくる動きを見せた。男たちは、ユウキを両側から拘束したままそちらへと向かおうとする。
引き摺られる形になって、ユウキは思わず足を踏みとどまらせようとする。
「なんっ、だよ、……放せよっ……」
抵抗しても、勝てるわけがない。そう思っているのに、絡みつく腕が不快で、つい振りほどこうとしてしまう。男たちはそれを、抵抗と判断したらしい。
「ぐッ……」
二回目の衝撃が同じ場所に来た。今度こそ立っていられなくなって、その場に倒れこむ。男たちの手は放れた。目的は達したわけだ。
だが。咳込んだところに、三発目がやってきた。続けて、背中。腕。
「ちょっ……と、まっ……、オィ」
抵抗しないから、やめてくれ。そう言いたいのだが、言葉にする間もなく次々と痛打を加えられ、降参の意思表示さえもできなかった。
息ができない。
意識が深い体の底に沈んでいこうとする。
ただ、滲んでいく視界に、哀れみとも蔑みともつかない暗い微笑を浮かべるハシバの顔が見えた。
どんな事実を知ることになっても。
大丈夫。動じたりしない。
受け入れる。
砂漠を渡る馬の背に揺られながら、マリアの意思は次第に固くなっていった。
地平線に、ドームのような大きな壁を持った都市が見えるころには、反対側の地平線に日が沈みかけていた。かなり手前の廃墟で馬を降り、長い地下道を通って都市に入る。
ハルとはぐれたら絶対にひとりで歩くことはできないだろう。迷宮のように入り組んだルートを通って、先日と同じ広場に出た。
一軒の小さな店のような部屋に入る。ひと気はなく、商品が雑然と並べられている。店員はいないのだろうか。
「ちょっと待ってて」
辺りを見回しているマリアに、ハルはそう言い置いて、部屋の隅にある電話機に向かった。
外の通りを、まばらに人が行き交う。
この都市にも、夕食時というのがあるのだろうか。行き交う人々は足を急がせて、脇目も振らずに歩いていく。
「トキタさん? おれ。例の彼女、連れてきたけど……え? ……何?」
途中から、ハルが緊張した様子で電話の向こうに問いかける。
何か問題が起きたのだろうか。
電話に意識が向きかけたとき、ふいに店の外から大きな声がした。
「ユリ!」
切迫した声音になんとなく視線を向けると、白いブラウスを着たココア色の髪の少女がこちらを見つめて立っている。
マリアは店の中に目をやった。
「それで……? ――ああ――ああ、でも、こっちは……」
ハルが焦った口調で電話の向こうに話しかけているほかには、人はいない。
「ユリ! ユリでしょ?」
少女がもう一度言った。目は、はっきりと自分を見ているような気がした。
走り寄ってきて、マリアの両腕を強く掴む。マリアは軽く後ろに背を反らした。
「心配してたの。みんな心配してたのよ。今までどこにいたの? ああ、よかった。噂は本当じゃなかったのね。どうしてたの? 元気だった? 帰ってきたの?」
腕にしがみついて、泣き出さんばかりにまくし立てる少女を、不思議な気持ちで眺めていた。
「あの……」
「……ユリ?」
相手の反応が期待するものと違うことに、少女は思い至ったらしい。
涙を浮かべた大きな目で、下からまっすぐにマリアの顔を覗き込む。
「どうしたの、ユリ、あたしよ、サオリよ、忘れたの?」
「あの、私、ユリ……さんじゃない」
「ユリ、怒ってるの? 私をかばったばっかりに、あんなことになったから」
不安げに、少女はマリアの顔を見つめる。
「ごめんなさい、たぶん、人違いだと思うんだけど……」
そう言いながら、マリアは胸がざわざわと騒ぐのを感じていた。
私はマリアよ。「ユリ」なんて知らない。
でも、この耳にしっくりと馴染む響きはどうしてだろう。
「ごめんなさいっ」
少女から腕を取り戻し、店内の電話に向かうハルのところへ駆け込んだ。
ハルが受話器を耳に当てながら、ちらりとマリアのほうを見た。駆け寄ってくるマリアを視線だけで迎えながら、電話の相手に宥めるように声を掛ける。
「――分かった、ともかく今からそっちに向かうから、落ち着いて――」
サオリという少女はいぶかしげな面持ちで、まだ何か言いたげに店の入り口からこちらを見守っている。
「――とにかく落ち着いて、そこにいてください」
ぴしゃりと言って、ハルが受話器を置く。
「マリア、どうした?」
言いながらマリアの視線を追ったハルと目が合うと、白いブラウスの少女は不満げに、けれども諦めたように、くるりと身を翻して雑踏に消えていった。
「マリア? 大丈夫か? 顔色が……」
「あの子……」
「うん?」
「私のことをユリって……」
ハルは少女が駆けていった方向に目をやって、一瞬不審そうに眉をひそめた。が、すぐに笑顔に戻る。
「人違いかな」
「たぶん……」
マリアはどこか腑に落ちない気持ちで、頷いた。
「マリア、会わせるって約束してた人だけど」
「うん」
「ちょっと今、困ったことになってて」
ハルは申し訳なさそうな顔を作る。
「おれ、行かなきゃならないんだけど、きみは」
「連れて行って」
言わんとするところを理解して、ハルの言葉をさえぎる。
ひとりになるのは。怖かった。
(まったく、あっちもこっちも……)
ハルは頭を抱えたい気分でため息をつく。
が、のんびり考えている場合ではない。急がなければならない。
マリアを連れて行くのは危険だ。
しかし、何かに脅えた様子の彼女をひとりで置いていくこともできない。
まったく、上手くいかない。
今日こそひとつ、カタがつくと思ったのに。
しかし。行かなければならない。
責任の一端は、自分にもあるようだった。
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