君が拒絶しない限りこの世界は迫ってくる

 ぼくはこの作品の世界観、作風が嫌いだ。残酷極まりなく物事が進み冷徹で君の悪い登場人物たち。丁寧に文字に起こされた世界は脳のなかで鮮明に映像化される。ぼくが星3をつけたのは逃げ出そうと、作品を読まないという選択肢をこの作品はさせなかったからである。
 世界観の魅力や技法はここでは語らない。それが知りたければ他の人のレビューを見てほしい。

 一番の魅力はこの作品の世界に無理やり引きずりこもうとする作者の丁寧な作品作りにある。物語のほとんどは品評会の会場で進むがそこに現れる人、物、芸術作品、装置、装飾すべてが歪な世界観を構築している。品評会の外に飛び出してもそれは変わらず、不気味さを引きずりながら終結に向かって歩かせる。あの世界観は少しでも違和感を感じさせてしまうと一気にチープに見え薄っぺらいものになってしまうがそんなことは一切なかった。現れたすべてが世界観を構築する役割を演じきった。だからぼくは最後まで読むことができた。

 本当に丁寧に作られた作品である。人を選ぶ作品だろう。しかし君がその世界に入ることを拒否しなければ読み進めることができる。どうかこの世界観を咀嚼してほしい。