先読み的なプロローグ

 金のかめは今や雲を貫いてそそり立つほど巨大化したんじゃよ。


 その中に閉じ込められた者達を除く世界中の全ての人間達は一人残らずカードに変えられた。


 カードの中では彼らの命が、それぞれが一生に稼ぐだろう稼ぎ分に臓器の代金分も付加された金額のお金に換えられた。


 すべてのカードは一番近いATMに吸い寄せられ、カードに入っていたお金は猛スピードのオートマチックな流れ作業で次々と引き出されて行き、金の甕はその金額を吸収しながらどんどん上に向かって伸びて行った。


 新しいバベルの塔のように。


 金を全て引き出されたあとのカードはATMから吐き出されて捨てられ、


 そのカードが一枚一枚きれいに積み重ねられ、途中で崩れると、またそこから積み重ねられ、また崩れると更にそこから積み重ねられ ・・・ 


 ああ、そうじゃの、たとえば、一つ積んでは母のため、二つ積んでは父のためといったあんばいで ・・・ 


 世界中のATMの周辺がまるでカードのさいの河原のようじゃ。ああ、カードと同じ数の内なる子供インナーチャイルド達の泣き声が世界中に響き渡っている・・・


 ☆    ☆


 ことの発端はある晩東北の旅館で起こった事件だった。

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