第25話 規則二十四条 帰り道は平凡に

 午後の授業も終り俺達は帰宅する。

 以前までは久留米と途中まで一緒に帰ったが、今日からアヤメさんも一緒だ。

 そして、なぜか五月雨も付いてくる。


「いやー帰りまで一緒とは……お二人の仲は本物だね」


 五月雨がクックックと笑っている。

 今日だけで、もう何度も言われたので開き直ってきた。


「もう、どうにでもしてくれ、同じ家なんだから当たり前だってーの」


 投げやりな言葉なのだが、俺も笑顔で返す。


「それじゃ、俺達はこっちの道だから、久留米はあっちだろ?五月雨はどっちかしらんけど」

「あたしはこっちだねー」


 交差点の前を真っ直ぐ前を指をさす。

 俺達は右なので久留米は左だし、ここで全員わかれる事になる。


「ん、それじゃ。また明日なー」

 

 俺達二人は右に曲がり何時もの林道を目指す。


「あのさ」

「どうしたの? 近藤くん」

「そうだな近藤、男たるものはっきり言わないと」

「なんで二人とも付いて来るんだよ!」

「いやーどうせなら二人の家ってのをみてみたくてね」

「俺はただのネタ探しだ」

「帰れ!」

「秋一さんそこまで怒らなくても、折角のお友達ですし何かおもてなしでもしますわ」

「さすが心の広い雪乃ちゃん……んー彩ちゃん」

「ぶほっ! ななななんで彩ちゃんなんだよ!」

「そのほうが可愛いじゃん、乙女心がわかってないねー近藤くんは」

「わかってないねー近藤くんは」 


 久留米まで五月雨の真似をしてくる、横目でアヤメさんをみると嫌がってるようには見えないので、黙る事にした。

 林道を抜けると、見慣れた我が家が見えてきた。


「お疲れ様です、ゴールですわ」


 競争していたわけではないが、その言葉が良く似合う。


「おねええちゃああん。おかえええええ? 誰?」


 扉を開けて出迎えをしてくれた八葉の顔が笑顔から真顔になる。


「近藤の子か?」


 五月雨に抱っこされる八葉を見て久留米が質問してくる、その手にはメモ張とボールペンが握られていた。


「なわけねーだろ。年齢考えろ、アパートの住民で八葉って言うんだ」

「そっか、八葉ちゃんっていうんだ。まってね、おねーちゃん何かもってなかったかなー」


 テンションの高い五月雨は必死でカバンの中に手を突っ込んでいる。

 それに対して困った目で俺を見てくる。


「あー……八葉、アヤメさんと俺のクラスメイトでごく普通の男が久留米、そしてごく普通の女性がアヤメさんの友達の五月雨さんだ」


 察しのいい八葉だ変な説明になったが、一般人というのをわかってくれるだろう。


「おい、俺は友達じゃないのか?」

「これから俺とアヤメさんの記事を書かなければ友達だな」

「それじゃ、友人以下友達以上だな」

「同じじゃねーか」

「あの……いつまでも外では、お持て成しもできませんし中に入りましょうか」


 アヤメさんの提案で一同食堂に入る事になった。


「あたしの家より、ひっろーい」

「そりゃそうだろう、共同アパートで一般家庭より狭かったら困る」

「あっはっは、そりゃそうだね」


 膝の上に八葉を乗せて楽しそうに笑う五月雨に膝上にいる八葉は満足そうな顔をしている。


「あ、おい! それはやめとけ」


 冷蔵庫からビールを取り出す久留米を注意する。


「ふむ、つい癖でな」

「そんな癖は止めてしまえっ」


 俺達の会話を笑いながら聞いてる五月雨。


「お待たせしましたーでは、ではバウントケーキでも作りましょうか?」


 着物姿にエプロンで登場するアヤメさん。


「あ……彩ちゃんって普段着物なの?」

「ええ。変でしょうか?」

「ふむ、古いよき日本人を思い浮かべるし。俺は大変すばらしいと思う」

「久留米さん有難う御座います」

「よし、あたしも手伝うよ。うちにも弟がいてね、良くお菓子は作るんだ」

「おねーちゃん、僕も手伝う」


 台所に消えていく三人娘、食堂に残される野郎二人


「所で近藤、今月の文化祭の案などあるか?」

「あ……忘れてた」

「ふむ、幸せだからなー近藤は、クラスの出し物以外に暇なら俺の報道部を手伝わんか?」

「断る! お前去年の文化祭を忘れたのか、報道裏写真といいながら盗撮写真を裏で売っていたじゃないか!」

「ふむ、なんで生徒側から問題が起きなかったが分かるか? 実はなあれ女生徒にお金を払っている。もちろん生徒会と教員にも払ってる」

「まじで!」


 そんな事もしらず、俺は去年一枚千円の写真を三枚も買ってしまった。


「下準備できたよー。おや、男二人が顔をつき合わせて何の相談してるんだい?」

「どうせ、えっちな話だろ」

「まぁ……えーっと……いけなくは無いと思いますが、皆さんもいるし」

「綾ちゃん……それじゃ私達がいなければOKみたいな言い方だよ」

「いえ、そんなわけではっ」


 五月雨の突っ込みとともに、台所から下準備を終えた三人が帰ってきた。


「いや、そんな会話じゃないよ。文化祭の話、今年はどうするかなーって、コイツは新聞部ですし。五月雨は?」

「あたし? あたしは、委員長もしてるからねー多分文化委員会にも選ばれるからあんまり余裕はないかなーまぁ無難にクラスの出し物と見回りかな」

「そもそもクラスの出し物はなんだよ」


 投げやりに聞いてみる。


「実は水面下で案があってね、定番のメイド喫茶にしようって女子で上がってるんだよ。でも、和服喫茶ってのいいかもね」


 アヤメさんを見て五月雨が呟く。


「でも、和服って高いんだろ? そんな簡単に出来るとは思えないけど」

「ふむ。レンタルという手もあるし、本格的にするなら俺が格安または無料で借りれるように探してくるぞ」


 凄い事を隣で言ってくる、そんなパイプがあるとは初耳だ。


「いいねー、どっちみち提案はしなきゃはじまらないし明日のHRで提案してみるよ、あ。焼けたみたい」


 台所から電子音が響き、甘い匂いが漂ってくる夕方のおやつパーティーが始まった。

 夕方も暗くなる頃玄関前には久留米、五月雨を見送る為に全員がそろっている。


「いやーわるいねー、材料までもらっちゃって」


 手には大きな紙袋を持っている。


「お気になさらずに、是非弟さんにも作ってあげてください」

「おねーちゃんまたねー」

「彩ちゃんさー……この子も、貰って良い?」

「あげれません」

 

 アヤメさんは笑いながら返す、冗談と思っているんだろが五月雨の目が本気っぽくて怖い。

 二人を見送り、玄関先でため息をつく。


「お疲れですか?」

「いや、なんというか。普段クラスメイトとこんなに話した事もないからさ、朝から驚く事ばかりで疲れたよ」

「シュウもか、僕もだ学校では色々話しかけられて困った、それに帰ってきてからアレだろ。でも。五月雨おねーちゃんは良い匂いがした」

「さよで、八葉も転校したんだっけか。俺も気分的に転校生になった感じだったよ」

「あら、私は楽しい一日でしたよ、明日も楽しみです。それでは本日は力の出るものを作りましょう」

「んじゃ、俺も手伝うよ」

「僕もー」

「はい、宜しくお願いします」

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