▼第五章  『スターダスト』

 恐ろしく心地よい眠り、戦術思考統合システム【ANESYSアネシス】を終えた時はいつもそうだ。

 まるで身も心もとけて宇宙と一体になってしまったかのような、そんな深い眠りから、猛烈な危険と恐怖を感じ、彼女は一瞬にして覚醒した。

 零コンマ0数秒という僅かな時間に、自分が何者であり、今までどこで何をしていたのかという記憶、何故、恐怖と危険を感じているのかという理由までもが一瞬にして蘇る。

 そして……。


 ――焦げ臭い。


 普段ブリッジでは決して嗅ぐはずが無い匂いが、彼女の鼻腔をツンと刺激した。

 不燃材で出来ているはずの船体のどこかで、超高熱のプラズマ火災が発生しているのだ。


「各セクション、状況報告をお願い」


 艦長が目覚めるなり命じた。


「【ANESYS】はなんとか無事終了しましたが、精神混濁の初期徴候があります。再統合は最低二時間は不可能です」

「第一砲塔、砲身溶融。もう撃てません! 全砲塔使用不能!」

「左舷艦載機格納庫に火災発生! 負傷者多数!」

「対艦、対空迎撃ミサイル、共に残弾無し」

「艦首居住区画に減圧警報!」

「第三補助エンジンに異常発生、出力二〇%にダウン」


 次々と報告が響く戦闘ブリッジの中に、ユリノはいた。


[しーどぴらー、地球上層大気到達マデアト七〇〇秒]


 バトルブリッジの傍らで、分析用インターフェイスボットのエクスプリカが報告する。


「増援艦隊到着まであと二〇分。付近にその他の敵・味方艦影、共に無し!」


 電側席に座るユリノは、最後にそう報告した。

 まさに満身創痍だった。今や〈じんりゅう〉には使える武器は何一つとして無く、付近には味方艦もいなければ時間も無かった。

 クルーの疲労も限界だった。皆、この一カ月間、不眠不休で戦い続けてきたのだ。

 第四次グォイド大規模侵攻迎撃戦は、戦闘開始から一カ月を経て迫り来るグォイド艦隊の大半を阻止することに成功したものの、一隻のシードピラーの地球圏への侵入を許してしまっていた。

 激戦の最中、追いつくことが出来たSSDFの艦はただ一隻〈じんりゅう〉のみ。

 ブリッジの正面ビュワーには、弧を描いた地球表面をバックに、巨大な六角柱、シードピラーが今まさに大気圏に突入しようとしていた。

 〈じんりゅう〉は、【ANESYSアネシス】を用いて残存全火力によるシードピラーへの突撃を敢行。

 その外殻に無数の弾痕を与えるに至っていた。

 が、その進行を止めるにはいたっていない。唯一の救いは、相手の武装も全て使用不能にできたことくらいだった。

 ユリノは艦長席を振り返った。


「シアーシャ、メインエンジンの調子はどう?」


 艦長席に座る彼女はそう問いながら、艦長帽を一端脱ぎ、髪をかき上げた。


「はい、他はさておきメインエンジンに異常は無いっす。いつでも最大出力が出せますっす」


 人類が模倣して作りあげた全ての人造UVドライヴ、それら全てを遥かに上回る強大な出力を誇る〈じんりゅう〉のメインエンジン、オリジナルUVDは、他の何が壊れようと決して壊れることは無い。

 それは初期グォイドの残骸からわずか六柱だけ発見された内の一柱であり、人類がいかなる手段を持ってしても分解も破壊も出来なかった謎の物体なのだ。


「よ~し、うむうむ。さすが〈じんりゅう〉のオリジナルUVドライヴは最高ね」


 機関長のシアーシャの答えに、艦長席に座るレイカは満足気に頷いた。

 ユリノは長年の付き合いから、彼女が今のような不敵な笑みを浮かべている時は、必ず何かロクでも無いことを考えていることを知っていた。だがそれで必ず勝利するのだ。でも今回ばかりはそうはいかないとユリノは知っていた。なぜならば……。


「総員退艦を命じます。全クルーは、使える艦載機及び脱出ポッドで速やかに退避せよ」


 艦長は一切の躊躇を見せることなく言い放った。


「艦長!!……」


 副長のテューラが一瞬言葉を詰まらせた。が、それを無理矢理飲みこむと複昌した。


「聞こえただろう、総員退艦だ。お前らもボサッとしてないで移動を開始しろ!」


 ――なんで……そんな簡単に……


 ユリノはブリッジ後方のハッチから出て行くクルー達、カオルコやサヲリの悔しさに満ちた顔を見送りながら、自分の席から立つことが出来なかった。


「ユリノちゃん……」


 ハッチの向こうからサヲリの声がする。自分が速やかに移動開始すべきなのは分かっている。艦長がこれから何をするのかも、それしか手が無いのも分かっていた。だけれど!


「お姉ちゃん!」


 ユリノは立ちあがると、やっとそれだけ言うことができた。

 顔を上げることができない。もし姉の顔を見たら、自分がどうなってしまうか分からなかった。ポタポタと、自分の足元に大粒の雫が落ちていくのが見えた。


「……ユリノ」


 むにゅっと暖かくて柔らかなものに包まれた。


 ――まただ……ユリノは姉の必殺技たるレイカホールドに弱かった。

 姉の豊かなバストに顔を埋められ鼓動を聞いていると、問答無用で頭に昇っていた血が降りていくのを感じた。


「……ごめんね、ユリノ」


 姉はやっとそれだけ言った。


「ごめんじゃないよぅ、まったくもぉ!」


 ユリノはやっと顔を上げ叫んだ。いや叫ぼうと思ったが、情けないほど弱々しい声しかでない。でもユリノは姉を抱きしめ返しながら続けた。


「どうすんのよ、お姉ちゃんがいなくなったらユイちゃんは? 旦那さんは? 私は? みんなどうしたらいいのよぉ!」


 この七つ離れた美しい姉は、幼くしてVS艦隊クルーになり、〈じんりゅう〉の艦長にまで昇りつめた挙句、VS艦隊のクルーのくせに恋して結婚して、娘まで出産したというデタラメな程の勝ち組だ。今まで妹の自分が姉に勝てたことなど何一つとして無かった。

 ユリノの脳裏に、一度だけ抱く機会をもらえた姪のユイの姿が浮かんだ。どんな事情があったって、まだ赤ん坊の娘を残して母親がいなくなって良いわけが無い。

 ………他にいなくなっても良い人間がいるはずだ。


「わた、私が……の、残……」

 

いざ口に出して言おうとすると、情けない程に口がつっかえて言葉にならない。その震える唇を、姉は人差し指でそっと制した。


「ユリノ、もう決めたことなの。ごめんね、許して」

「でも!」


 どうしてこう、この姉はいつも勝手に決めるのだろう!

 艦長だから当たり前だ……そんなことは分かっている。もし、ここで決断しなければ、シードピラーの落着により姪のユイの命だって危ういのだ。そういう理屈で納得できたらどんなに良かったか……。


「いつも我儘ばかり言ってごめんね。……大好きよユリノ」


 レイカはそう囁くと、そっとユリノの額にキスをし、自分が被っていた艦長帽をその頭に乗せ、その身体を突き放した。

 後ろに飛ばされたユリノはわけもわからぬまま、後に立っていたテューラ副長に抱きとめられ、そのまま問答無用でブリッジの外まで引きずられた。


「ユリノ、ユイとクルーのみんなをお願い。あとうちの旦那にも謝っておいて」

「な! 自分で謝ってよバカァ~ッ!」


 ハッチが閉まる瞬間、そう言い残したレイカにユリノは叫んだ。

 数分後、副長に引きずられるようにして乗せられたシャトルが発艦すると、窓から、直ちに加速を開始し、地平線の彼方へと消える〈じんりゅう〉の姿が見えた。地球を周回して勢いをつける為だ。

 シャトルに乗るクルー達は、それをただ無言で見送ることしか出来なかった。

 最後の【ANESYSアネシス】による戦闘が終わる直前、すでに彼女達は結論を出していたのだ。


 “他にもうシードピラーを止める手段は無い”と。


 ユリノをはじめ、クルー達はみな嫌という程、分かっていたことだった。

 〈じんりゅう〉の持つ武装は全て失われたが、〈じんりゅう〉の船体自体を武器とすることはできる。ましてや〈じんりゅう〉には絶対に破壊不可能なオリジナルUVドライヴが搭載されているのだ。それは絶対に破壊されることの無い強力無比な弾丸となるはずだ。

 ユリノはその一部始終をシャトルの窓から見つめていた。一瞬も見逃すまいと。

 やがて〈じんりゅう〉が、地球の反対側の地平線から姿を現した。

 普段は見る機会が無い、外から見る〈じんりゅう〉の姿は、地球上層大気に擦られ、眩く輝く炎の塊のようだった。

 その光景に、ユリノは一瞬で確信した。

 あれは【ANESYSアネシス】の輝きだ。

 姉はたった一人で【ANESYSアネシス】を行い、〈じんりゅう〉を操っているのだ。

 ユリノはその光景を一瞬も見逃すまいと、涙を拭うのも忘れ、瞳を見開き続けた。

 激突の瞬間、巨大な光球が一瞬、視界の全てを眩く照らし、続いて無数の破片が飛び散っていく。その一部は流星雨となって地球に降り注ぎ、残りははるか宇宙へと飛び去っていった。

 その中に混じり、鏡のように銀色に輝く〈じんりゅう〉のオリジナルUVドライヴが飛んで行くのを、ユリノは見たような気がした。

 










 ―――〈その五年後〉―――


 バチリという音がしそうなほど、ユリノは瞬間的に覚醒した。

 【ANESYS】からの目覚めのような心地良さからは無縁の、悪夢からの覚醒だった。

 胸の奥深くを、氷のように冷たい孤独感がゆらゆらと蠢いているのを感じる。

 涙で枕が濡れていた。周期的に忘れては蘇る孤独感が、今日またやってきたのだ。

 しばらく見ていなかったのに、まるで忘れるなといわんばかりにこの悪夢を見てしまう。

 これだから、自分はクルーとのパジャマパーティに参加できないのだ。パジャマパーティに参加したがる艦長もどうかと思うのだけれど。

 またこの夢を見るようになってしまったきっかけは分かっていた。あの少年だ。ユリノは五年前のあの日に、ケイジと経験した事をミユミから聞いていた。


 ――寂しいよ……。


 ベッドサイドに立てたホロ写真が目に入った。そこには生まれたばかりの姪を恐る恐る抱きかかえている自分を、姉が後ろから抱き締めている姿が納められていた。

 姉は満面の笑みを浮かべ、カメラに向かって恥ずかしげも無くピースサインをしている。

 一緒に写ってる自分はカメラどころではない一杯一杯の表情だ。抱きかかえている姪のユイが、あまりにも小さくて儚かったから。

 ユリノは精神力の限りを尽くしてベッドから起き上がった。時刻は艦内時間の午前五時、悲しいくらいに予定通りの起床時間だ。ブリッジの交代時間までまだ一時間ある。ユリノは鳴る直前だった目覚ましのアラームを止めた。

 ここはかつて姉と過ごした〈じんりゅう〉では無い、同じ〈じんりゅう〉でも二代目と名付けられた同型艦の艦長室だ。

 逆噴射開始三日目、メインベルトとの相対速度差が0になるまであと五時間の予定だ。

 ユリノは艦長特権で部屋に装備されているシャワーで,、寝汗を洗い落とすことにした。

 シャワーを熱湯と冷水を交互に浴びるようにして、身体を無理矢理目覚めさせる。


『メインブリッジより艦長、お目覚めですか?』


 艦内通信からの副長の声が響いた。機械的にシャワーを止めるとすぐ返事をする。


「起きてるわ。どうかしたのサヲリ?」

『こちらにおこし願えますか? 問題発生です』

「了解、五分で行く」


 ユリノはそう答える間に身支度を開始していた。航宙士には、女性といえども身だしなみに与えられる時間は少ない。またあの少年にだらしない姿を見られるわけにもいかないし。

 だが今のユリノはそれがありがたかった。任務をこなしている間は、今朝見た夢のことは忘れていられそうだから。










 ユリノがブリッジに着くと、目視用ブリッジには当直に当たっていた副長とルジーナの他、パイロット二人を除くクルー達とケイジ三曹がすでに集まっていた。


「みんなおはよ~」


 ユリノはなるべく明るさを装って艦長席へと腰かけた。


「艦長、早速ですがこれを見て下さい」


 副長が操作すると、ブリッジ中央に、メインベルト外縁部から斜めに〈テルモピュレー集団クラスター〉へと突入しようとする、〈じんりゅう〉の予定コースがホログラム投影された。

 火星と木星公転軌道の中間にある巨大なドーナツ状の小惑星帯、それがメインベルトだ。

 メインベルトとそうでは無い空間の境は曖昧だが、当然、外縁から中心に行くほど小惑星の密度は濃くなる。そして当然ながら。密度が濃いほど高速慣性航行中の〈じんりゅう〉にとって危険度は高まる。

 〈じんりゅう〉はその小惑星の密度が濃くなる手前で減速完了し、メインベルトの公転速度と同期。相対速度差を無くし、破壊を免れるはずであった……のだが。


「射出した先行偵察プローブからの情報により、御覧の通り、進路上〈テルモピュレー集団クラスター〉表面に、突然危険レベルの小惑星密集エリアが膨れ上がっていることが分かりました」


 ドーナツに斜めに突入しようとする〈じんりゅう〉の前方に、唐突に小惑星密度の濃い空間が外に出っ張っていたのだ。当然このままでは〈じんりゅう〉は減速終了前にそこへ突っ込むことになる。


「ありゃま」


 ユリノは思ったままを口にした。


「このままでは減速完了約一時間前に、危険レベルの小惑星密集エリアに突入します」

「すみません艦長、わたしの観測不足です。もっと早く分かってれば。あれはデータベースには無かったものです。なんらかのイレギュラーによって極最近産まれたものと思われますデス」


 副長の後を、珍しくしおらしいルジーナが俯きながら続けた。

 太陽系防衛艦隊は、可能な限り太陽系内の小惑星の分布を把握し、データベース化しているが、グォイドとの戦の只中ではそれも刻一刻と変化していくものであり、とても完璧からは程遠いものであった。


「気にすること無いわ。センサーだって壊れてるのにルジーナは良くやってるわよ。それに発見が間に合わなかったわけじゃないし……………………間に合うのよねぇ?」

「とりあえず、対処策をいくつか検討してみました」


 ユリノの言葉に、副長がクルー達の方を向いた。


「補助エンジンの出力アップは数%なら可能ですが、それ以上はお勧めできないです。ただでさえ応急修理なのに、既に安全保証出力の連続噴射限界時間を超えて稼働させ続けています。無茶すれば今度こそ爆発してしまうかもしれません。対デブリ用防御シールドに回しているエネルギーを使う手もありますが、それじゃ本末転倒ですし……」

「コース変更による回避を試みても、現在のスピードでは前方に広がる小惑星密集エリアが広大過ぎて、エリア自体を迂回することは難しいと思われますデス」


 機関部としてケイジ三曹が、航法士としてルジーナがそれぞれの見解を述べた。

 ホログラムに、〈じんりゅう〉の進路変更可能エリアを示した針のように細い逆円錐形が表示されたが、小惑星密集エリアはその逆円錐を覆うほどに巨大であった。


「なるほど、で副長、お勧めの対策はもう考えてあるんでしょ?」

「はい、電算室、お願いします」


 ユリノの問いに、電算室からの操作でホログラム映像が動きだした。


『移動可能範囲内のADA(小惑星密集エリア)の中でも、比較的安全な、密度の薄いエリアを狙って突入、必要最低限の小惑星のみ回避して通過しますのです。上手くいけば数個の危険なサイズの小惑星を避けるだけで済むのです』


 電算室からのシズの説明と共に、ホログラム映像が一つ一つの小惑星のサイズや形が分かる程にズームされると、〈じんりゅう〉がその間を縫うようにして通過した。


「なるほど。ようするに、なるべくスカスカな所を通ろうってわけね」

『ですが問題もあるのです。ご存じのように、メインベルト深部はセンサーの効きが極端に悪くなります。万が一コースが間違っていた場合は、光学観測によりリアルタイムで小惑星の位置と回避コースを算出し、回避しなくてはなりません。PIP(先行偵察プローブ)ももちろん打ちこんで調べますが、恐らくすぐにデブリに衝突しロストするでしょう』

「つまり、いざって時には出たとこ勝負になるってことか」

『そうなのです。ちなみに艦を捨ててシャトルで脱出という選択肢もありますが、場所が場所だけに生存確率は大して変わりありません。まだ艦に残った方が冗長性があるのです』


 アニメや漫画みたいに、天才的な閃きやアイデアで、問題が一挙に解決なんて事は期待出来ないようだ。解決策は結局シンプルな力技しか無いのが宇宙だ。


「よし、各々、小惑星密集エリア突入の準備を開始してちょうだい。各ハードとソフトのチェックと調整、入念なシミュレーションをよろしく。ミユミちゃんは今の内に、第一迎撃分艦隊に今の計画を光学通信で伝えておいてちょうだい。メインベルト中心部に入ったら通信は完全に出来なくなっちゃうから」


 ユリノの指示に、クルー達は直ちに行動を開始した。











 ブリーフィングから四時間半後。

 微かな振動と共に、熱した鉄板に水を垂らしたような効果音が大音量で響いた。


「今のは大きかったなぁ」

「お、多くなってきましたね」


 もぐもぐとおにぎりを頬張りながら言うカオルコに、ミユミが不安そうに後ろを振り返りながら答えた。もちろん見えるのはブリッジの後部ハッチだけだ。

 三時間ほど前から断続的に始まったこの音は、艦尾に展開している防御シールドに、比較的小サイズのアステロイドやデブリが衝突するのを表現した効果音だ。

 その数は急激に増えていた。


「良いな良いなあ、なあフィニィぃ、俺が替わろうかぁ?」

「絶対にだ~めっ!」


 苦笑いするフィニィの替わりに、クィンティルラにそう答えたのは艦長席のユリノだ。

 現在、再びクルー全員が目視用ブリッジに集合し、回避運動に備えていた。

 本日の朝食は、ケイジが機関部の作業を終えてから大量のオニギリを作り、皆でブリッジで摂ることとなった。

 炊きたての白米に様々な具を入れて握ったオニギリは、シンプルだが片手で食せることもあって、クルー達に好評をもって迎えられた。

 艦は既に〈テルモピュレー集団クラスター〉表層に突入しており、シズ、ルジーナらの尽力で算出された回避コースに従い、既に幾つか小惑星を避けることに成功していた。

 メインベルトは、本来であれば通過することを恐れるような場所では無いはずだった。

 確かに大小一億個もの小惑星が漂ってはいるが、広大なエリアに対し、小惑星の総質量は月の三五分の一しか無く、その間隔は衝突の心配をせねばならない程狭くないのだ。

 が、その状況はグォイドとの遭遇によって変わった。

 火星以内の太陽系惑星を囲むメインベルトは、対グォイド防壁として大いに有用だ。

 太陽系防衛艦隊は、UVDのもたらす人工重力技術を駆使することによって、木星と火星のラグランジュⅣ、Ⅴにあるトロヤ群の小惑星を、大量にメインベルトに撃ちこみ、その数を水増しさせ、対グォイド用バリケードに改造したのだ。

 とはいっても、広大なメインベルト全域をバリケード化することなど到底不可能であり、通過に支障をきたすほどの濃密なる小惑星密集エリア〈集団クラスター〉は数ヵ所しか作れず、その総延長はメインベルトの輪の三分の一にも満たなかった。

 が、これによりグォイドは、限られたコースでしかメインベルトを最速最短で通過できなくなり、人類はグォイドが迂回した分の貴重な時間を得る事が出来るようになった。

 グォイドの侵攻をある程度制限できるだけでも、人類には絶大な意義があったのだ。

 人類はさらに、小惑星を材料にジャミング効果のある塵を無尽蔵に製造する無人プラントを大量にばら撒き、メインベルト内での光学以外での索敵や通信を困難なものとした。

 それら策により、メインベルトは第四次大規模侵攻迎撃戦において多くのグォイド艦の侵攻を妨げることに成功したものの、人類にとっても以前のように安々と通過はできなくなってしまっていた。

 そこは今や、以前の数倍となった小惑星と、航宙艦とグォイドの残骸で満ちていた。

 そして今、〈じんりゅう〉はメインベルト内にある最大の〈集団クラスター〉にして第四次迎撃戦最大の激戦宙域、〈テルモピュレー集団クラスター〉に突入を開始したのである。


「おお、また見えた見えた!」


 クィンティルラの声にケイジが窓を振り向くと、何かいびつな塊が窓の後端から現れたかと思うと、一瞬で艦首方向に遠ざかっていくのが見えた。通り過ぎた小惑星だ。

 きな粉をまぶしたレーズンみたいだ……ケイジには小惑星がそんなふうに見えた。

 見えるのは小惑星だけでは無い、ごくたまにではあるが数々の戦闘で散った航宙艦やグォイドの残骸が視界を通り過ぎていく。その数とサイズは、刻一刻と増大していた。


「間もなく、次のコース変更地点デス。総員、コース変更時のGに備えてください。次の小惑星は直径十三キロの大物ですよ。そこから先は連続した回避行動になりますデス」

「おもしろくなってきた!」


 ブリッジ後部に用意された折り畳み式の予備座席に座りながら、ルジーナの報告にクィンティルラが唸った。隣ではすることが無いフォムフォムが座ったまま眠っている。

 艦尾方向を映すビュワーに、最初は豆粒のように見えた小惑星が、猛烈な勢いで大きくなっていくのが見えた。

 その小惑星は、〈じんりゅう〉にぶつかるかと思われるほどビュワー一杯に広がると、その表面を舐めるかのようにギリギリの至近距離で〈じんりゅう〉の隣を通過していった。

 小惑星はそのままブリッジ正面窓にその姿を見せると、猛烈な勢いで遠ざかっていく。


「コース変更、ヨー取り舵三度、ピッチプラス四度、ロール左一五度!」


 通過するなりフィニィが操縦桿を動かし、軽いGと共に〈じんりゅう〉が向きを変える。


「ふぅ、なんとか順調みたいね」


 ユリノが艦長帽を脱ぎ、前髪をかき上げながら呟いた。

 減速完了まであと僅かだ。

 ルジーナの座る電側席に警告音が響いたのは、その直後だった。


「艦長、問題発生です! 事前観測と実際の小惑星位置が違ってますデス!」


 ルジーナが叫んだ。


「衝突コースに小惑星複数! 現行の予定回避コースは当てになりません!」


 次の瞬間、電側席の警告音が、大音量の衝突警報に変わってブリッジに鳴り響いた。


「コースの再計算は!?」

「今やってますデス! ですが、間に合うか……現コースで衝突まであと二五秒!」

「偵察プローブでちゃんと調べたのに……こんな……また急激に変わったっていうの!?」


 シズが今起きていることが信じられずに呟いた。

 艦尾方向を映すビュワーには、既に目視できる距離の小惑星がいくつも見え始めていた。それらのサイズは事前観測によれば数メートルから数十キロサイズの大物など様々だ。

 衝突直前に至る今までそのことに気付けなかったのは、プローブの情報を過信していたことと、一つ前に避けた小惑星が、回避するまでセンサーの影となって立ちはだかっていたからだ。

 プローブでつい三〇分前に観測したデータでは、〈じんりゅう〉が安全に通過可能なコースが進路上に確かに存在したはずだった。

 が、いつの間にか小惑星が、予想を超えた速度で移動してしまっていたのだ。

 一つの小惑星を回避するだけなら可能だろう。だがその際に方向を間違えば、その次や、その次の次の小惑星を回避出来なくなるかもしれない。だから事前に算出した回避コースが使えないということは、非常に危険な状態を意味していた。

 正に、シズが自分で事前に懸念していた最悪の状況が待ち受けていたのだ。

 頼りだった偵察プローブは、既にジャミングかデブリの影響かでロストしている。


「カオルコ、対空レーザー! フィニィ、アドリブで回避! ルジーナとおシズは協力してコースの再計算をしてフィニィに伝えて!」


 考察するのは後だと決めたユリノが即座に指示を下す。


「副長、【ANESYS】を使えばなんとかなると思う?」

「この状況下ではあまり意味は無いでしょう。【ANESYS】の高速情報処理能力を活かそうにも、計算の元となるデータも、計算結果を活かすパワーもありません。それに【ANESYS】終了直後に小惑星に衝突されたらアウトです」


 副長がにべも無く答えた。【ANESYS】といえども万能では無いということだ。

 一方、フィニィはルジーナが普段掛けているのと同じ電側ゴーグルを被ると叫んだ。


「ルジーナ、最新の小惑星配置データを送って! カオルコ少佐、細かいのは任せました!」

「了解デス!」「よしきた!」


 フィニィが被るゴーグルに、ルジーナの座る電側席から最新の観測データが送られた。

 一方、火器管制官たるカオルコの操作で〈じんりゅう〉艦尾対空レーザーが火を噴き、進路上の破壊可能なサイズの小惑星および残骸を、防御シールドで防げるサイズにまで破壊する。

 直後、防御シールドに衝突した破片が、振動と共にブリッジにコンピュータによる効果音を響かせる。


「みんな、歯を食いしばって!」


 フィニィが操縦桿を傾けると、ブリッジ前方窓から見える星々が反転し、直後に回避した数キロサイズの小惑星の地表が通り過ぎていく。


「わわわわ!」


 そんな無茶な操艦の経験など無いケイジは、思わず席で踏ん張りながら悲鳴をあげた。


「よいしょぉ~ッ!」


 フィニィが普段見せている爽やかさとはかけ離れた声で叫ぶと、〈じんりゅう〉が再び向きを変え、新たな小惑星を回避する。


「うふ、うふふふふふふっ♪」


 フィニィのその顔には、普段の彼女からは想像出来ないようなの不穏な笑みが浮かんでいたのだが、それを見る余裕のあるクルーはいなかった。

 全長三五〇メートル、重量、現状で約七万トンの艦を、それも後進で、まるで戦闘機のごとく操る彼女の技術はまさに神業であった。が、状況はその腕前をもってしても厳しい。

 幸いだったのは、ケイジが数%ではあるが無理矢理補助エンジンのパワーを上げたおかげで、〈じんりゅう〉の減速が初期予測より進んでいたことだった。

 スピードは回避している最中も猛烈な割合で落ち続けていた。


「ルジーナ、減速完了まであとどれくらい!?」


 艦長席の肱掛けを握りしめ、踏ん張りながらユリノが尋ねた。


「最短で後六分三〇秒デス」

「そそそそそんなにぃ!?」


 それを聞いたミユミが泣きそうな顔をした。


「艦長! まずいよ!」

「なにフィニィ!?」

「次の小惑星、避けてもその次のに衝突する!」

「な……!」


 艦尾方向ビュワーに、それまでを超えるサイズの小惑星が画面一杯に広がっていた。

 総合位置情報図スィロムに表示された現在の〈じんりゅう〉の予定進路を見ると、〈じんりゅう〉が目前の小惑星を回避することはギリギリだがまだ可能であった。しかしそのコースをとると、そのすぐ後ろにある次の小惑星に衝突するしかなくなってしまうのだ。

 逆に二つ目の小惑星を回避しようとすると、一つ目の小惑星に衝突せざるを得なくなる。


「艦長! 主砲が使えます!」


 突然、ケイジが叫んだ。


「そんなUVエネルギーの余裕あるの?」


 ユリノが当然の疑問を口にする。今、補助エンジンのエネルギーを他に回せば、減速噴射か防御シールドのどちらかが弱くなってしまうはずだからだ。


「噴射開始前の余剰エネルギーがキャパシタに溜まってます! 一発だけなら撃てます!」


 ケイジはコンソールにしがみつきながら叫んだ。まだ逆噴射を始める以前の、使い道の無かった余剰UVエネルギーをキャパシタ〈UV蓄積器〉に溜めていたのだ。


「カオルコ!」


 ユリノは考えるのは後にして、目の前の火器管制官に向かって怒鳴った。


「カオルコ少佐、手前の小惑星のインコース側を狙って!」


 フィニィが叫ぶ。カオルコの操作で、〈じんりゅう〉の艦尾側主砲塔で唯一生き残った艦尾上部三番砲塔が、直ちに旋回、仰角を整えた。


「三番砲塔発射用意良し!」

「てぇーっ!」


 ユリノが叫ぶと同時に、カオルコがピストルグリップ状の操作桿のトリガーを引いた。

 ブリッジにズヴァッフッという発射効果音と振動が響くと、小惑星を映す艦尾映像に、一瞬UVキャノン特有の虹色のマズルフラッシュリングが輝き、次の刹那、青白いエネルギーの柱が手前の小惑星の淵に突き刺さった。

 岩盤が状態変化をすっ飛ばして一瞬にしてプラズマ化し爆発、幅三〇〇メートルはあろうかという溝が穿たれる。エネルギーはそのまま溝を穿ちながら手前の小惑星を突き抜け、その向こうに漂う小惑星に命中した。

 弱い重力で形成された小惑星に対し、防御シールドに阻まれることなく至近距離から命中したUVキャノンは、それだけの破壊力を発揮する。


「突っ込めフィニィッ!」

「あああ、マジで!?」

「いぃ~やあああああああぁぁぁ!」

「What a lovely day!! ヒィ~ッヤッホオォ~ィッ!」


 ユリノが叫び、ケイジ、ミユミ、クィンティルラがそれぞれのリアクションをし、フォムフォムは相変わらず眠っていた。

 直後、〈じんりゅう〉は主砲で穿たれた溝に背面から突入した。全幅一五〇メートルの艦が幅およそ三〇〇メートルの溝の中を通過するのだから、後を向いたブリッジ窓から見える景色は感覚的にはギリギリなんてものでは無かった。

 まだ赤熱した溝の内壁が、頭上を猛烈なスピードで通り過ぎていく。コンピュータが馬鹿正直にゴォォーという猛烈な風切り効果音を出した。


トレンチ通過します!」

「減速終了まで後二分四五秒!」

「コース変更!」


 フィニィがさらに操縦桿を動かす。

 主砲で穿った溝を通過したお陰で、よりインコースでカーブが出来た。その直後に〈じんりゅう〉側面を二つ目の小惑星が通過して行く。その小惑星は前後に長く、艦尾映像には、歪な弧を描いた小惑星の地表がまるで地平線のように映っていた。

 これで当面の危機は回避したかに思えた。

 ……が、その地平線の向こうにも、新たな小惑星が控えていた。


「あ~くっそぉ……!」


 フィニィが呻いた。地平線の彼方に見えた小惑星は、回避できるサイズでは無かった。


「ルジーナ、艦の停止まであと何秒!?」

「あと一一〇秒! 前方小惑星衝突まで後三〇秒デス!」


 既に〈じんりゅう〉は時速一〇〇キロ代まで減速していた。

 あと一一〇秒でそのスピードも完全な停止状態、時速〇となるはずであった。が、その八〇秒前には小惑星に衝突してしまう。

 その時点での〈じんりゅう〉のスピードはそれまでに比べれば嘘のように遅くなっているはずだが、重量およそ七万トンの船体がその速度で衝突すれば、艦体に深刻なダメージを与えるのに充分であった。


「フィニィ! 艦首スマートアンカーッ!」


 突然ユリノが叫んだ。フィニィが復唱をする間も惜しんで発射ボタンを叩くと、〈じんりゅう〉艦首より噴射炎を吐き出しながら航宙艦用の錨・スマート賢いアンカーが射出された。

 その尾部からは特殊素材で出来たワイヤーがらせん状にのび、艦首へと繋がっている。

 アンカーは今まさに通り過ぎた直後だった〈じんりゅう〉艦首方向の小惑星に命中し、その地表深く食い込むと堅固に固定された。間髪入れずにアンカーに繋がれたワイヤーが艦首内モーターで巻き取られ、弛んでいたワイヤーが張りつめる。

 ケイジをはじめ、クルーが今までに無い急激な減速に、座席の背もたれにその身を猛烈に押してつけられ、思わず呻き声を上げた。

 コンピュータの作りだした効果音ではない、耳障りなギギィーという音が直接ブリッジに響く。余りにも急な減速に船体が軋んだのだ。

 アンカーと〈じんりゅう〉を繋ぐワイヤーはピンと張りはしたものの、さすがにそれ以上巻き取ることは出来ず、張り詰めさせたまま艦首からワイヤーを繰り出し続けた。


「アンカーワイヤー残り四〇〇、三〇〇、二〇〇……」


 フィニィが告げる。極細のワイヤーは二〇〇〇メートルの長さがあるが、〈じんりゅう〉の運動エネルギーはすぐにワイヤーの長さ全てを奪いつくした。


「ワイヤー出しきります!」


 直後、前方小惑星に打ち込まれたアンカーが、それ以上繰り出すことの出来なくなったワイヤーによって引っ張られ、地表から岩石ごと引き抜かれた。

 新たな衝撃、今度は身体が前に投げ出され、シートベルトがその胸に食い込んだ。

 ――また胸か!? ユリノは内心思いながらその痛みに耐えた。


「衝突までは!?」

「……あと一〇、九、八……」


 〈じんりゅう〉はスマートアンカーの効果で劇的にそのスピードを落としていた。加えて補助エンジンの噴射も続いている。時速は一ケタ代まで落ちているはずだった。が、たとえ時速数キロであっても〈じんりゅう〉の重量が衝突する事を考えれば安心は出来ない。


「防御シールド全カット! 全エネルギーを減速噴射へ回してッ!」


 どうせこの距離と速度では、シールドの意味は無いとユリノは割り切った。直ちにシールドが切られ、その分、噴射の勢いが増す。艦尾映像に小惑星の地表が画面一杯に広がり、その表面を覆うレゴリス砂塵が噴射で吹き飛ばされるのが見えた。


「四、三、二、一……」


 カウントが間違ってなければ、小惑星に〈じんりゅう〉艦尾が接触しているはずだった。


「……!!!」


 衝突警報も衝撃も無かった。


「相対速度差ゼロ……艦……停止しました」


 数秒遅れてフィニィが困惑しながらも報告する。

 フィニィがスロットルレバーを三日ぶりに戻した。艦が停止した以上、吹かし続けるとまた余計に動き出してしまう。


「止まった…………の?」


 ミユミが恐る恐る目を開けた。

 ブリッジには余計なコンピュータによる効果音が響くことも無く、静寂が訪れていた。


「副長、被害報告! 艦尾は無事なの?」

「艦に新たなダメージは確認されず。艦尾も無事です」

「じゃあなんで? ぶつかってるはずなんでしょ?」

 

確かに艦が停止したのは、小惑星に衝突した後だったはずだ。


「謎が解けましたのです艦長」


 シズがコンピュータ解析した艦尾映像をメインビュワーに映した。


「どうやら小惑星の地表部分がスラスターの熱で解けた上、吹き飛ばされ、地表に艦尾が収まるサイズの窪みが出来たようなのです」


 〈じんりゅう〉艦尾映像を見れば、確かに赤熱した小惑星の地表が画面一杯に映っていた。そこに艦尾がスッポリと納まったという事らしい。


「なんとまぁ……」


 カオルコがあきれた。


「やれやれ、ヒヤヒヤさせられるのはグォイド相手だけにして欲しいものだわ」


 ユリノは艦長帽をとると、また髪をかき上げた。


「あ、あの……ま、ままま、まままま」

「ん? ミユミ何だって?」


 目を見開いたまま何か呟くミユミにカオルコが気づいた。


「大丈夫? 具合悪くなったなら医療室に行く?」


 ユリノが心配になって訊いてみるが、それでもミユミはぶんぶんと顔を振った。


「ま、ま、ま、ま、まっ! えッ!」

「マ? エ? ……まえ? ……前!!」


 さすが幼なじみというべきか、最初に気づいたのはケイジであった。というかミユミがブリッジ正面窓を指さしているのだから分かって当たり前だった。


「かかかかか艦長、まえ! 前ぇー!」


 ケイジもまたそれに気付いた時には、ミユミと同じリアクションしか取れなかった。

 二人が指さした窓の向こうでは、先ほどスマートアンカーを打ちこんだ数キロはあろうかという小惑星が、減速しようとする〈じんりゅう〉に引っ張られた時の勢いで、ゆっくりと回転しながら〈じんりゅう〉へと突っ込んで来ていた。


「◆▽×ナ□※☆ィャ~ッ!!!」


 一度停止した艦が、たった二機の補助エンジンの推力で再び動き出すには時間がかかる。

 〈じんりゅう〉が神経をすり減らす程にゆっくりと動き出し、前後を挟む様にして衝突する二つの小惑星の間から抜け出したのは、それから二分後のことであった。

 結局、フォムフォムは昼食まで眠り続けていた。



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