放課後: すれ違う想い [東雲萌]

 降り始めた小雨の中、僕は飽きるほど繰り返した動作を反復する。

 ——キィィィェェェェーーーッ!!

 それは『抜き』だ。お師匠様が僕と初めて会った日に一度だけ見せてくれた技だ。

 何時もの振り下ろす剣筋とは真逆に<獄焔茶釜>を移動させる。上から下へではなく、下から上へと。

 これが正しいやり方なのかは分からない。そこまで教えて貰える前にお師匠様とはお別れしちゃったからだ。

 お師匠様の『抜き』は見えなかった。刀を抜く前の動作と、抜き終わった後の姿しか見えなかった。それほどに速く、淀みなく、綺麗で、圧倒的だった。だからこれは僕がこっそり隠れて思考錯誤した結果の産物だ。でも、間違ってたっていい!

 ——キィィィエェェェーーーー!!

 帯に挿してある<獄焔茶釜>を左手で半回転させ、右手一本で真下から真上へと一直線に振り抜く。その動作に、敵へと踏み込む『懸り』の一歩を同調させる。

 刃は鞘から覗かない、内に収められたまま鞘ごと抜かれる。

 意地を練る『続け』や、死地へと飛び込む『懸り』と違い、『抜き』は解放する技だ。

 お師匠様が『抜き』を教えてくれなかったのは、ジゲンの剣は抜かない剣だからに他ならない。

 、けれど——その矛盾に頷き通すだけの意地が無い内は習っちゃいけないんだ。だけど、今の僕にはそれがある!

 鞘に収まったままの<獄焔茶釜>を再び帯へと突っ込ませる。左手で握り右手を添え、全身で大きく一歩前に踏み込み、

 ——チェェェェェーーーーッ!!

 鞘ごと刀を抜き上げる!

 厳密には僕は抜けていない。<獄焔茶釜>の鍔と鞘を結ぶ針金は切れておらず、刀身は鞘に収まったままだ。

 でもそれは問題じゃない。鞘から抜けるかどうかじゃなく、抜く決意と意地を持ったことこそが肝要なのだから。

 数えるのも考えるのもバカバカしくなる程ひたすらに繰り返す。刀を取った以上、刀を抜いた以上、必要なのは思考や過程ではなく、敵を斬った事実だけだ。

 身につける装具が軽い。小さな雨つぶに打たれているはずなのに、衝撃も冷たさも感じない。それ以上に、手に持つ彼女——<獄焔茶釜>の熱狂が僕の血液を沸騰させ始めている。

 敵は待ってくれない。雨の日も風の日も、雪が降ってたって出現する。天気が悪い日は体に悪いので稽古していません、準備不足です、何て言い訳は通用しない。

 何時如何なる日も、抜くことを避けられないその瞬間が訪れるまで体を壊すことなく稽古を続ける。ぶっ壊そうとしても壊れない体になる程に稽古を続けろ、そんな無茶もお師匠様は教えてくれた。

 ——ァァァァァアアアアーーー!!

 狂いながらに刀を抜き続ける。自分自身を消し去る程に体内の火を燃やす。ありったけの薪をくべ、油を注ぐ。僕に最後に残る想いすらも燃え尽きるまで。

 ——うわぁぁぁぁぁぁーーっ!!

(  燃やせ  )

 言葉の波が体へと伝わってくる。

 刃を持つ身体が、止まらない、止まれない。

(    燃やせ    )

 はっきりと知覚した彼女の言葉が、僕を止めるのではなく極限まで加速する手助けをする。

 僕は手にした<獄焔茶釜>を蜻蛉に取り、目の前に立つモノをただ一刀にて天地もろとも真っ二つに、

 ——え?

 振り下ろそうとする先にリズさんの顔が見えたような——って、リズさんが見てるーぅ!?

 ——うわぁぁ、ぁぁあ〜ー!?

「……。…………。とりあえず、怪我はないか、萌?」

 ——あ、ありませんです……と思います。

 盛大にずっこけてしまった僕に、リズさんが右手を差し出してくれた。

「感心だな、萌。雨の日でも稽古を止めないとは。だが、体を壊しては元も子もないぞ」

 ——う、はい……。

 立ち上がると、小雨が少し勢いを増した気がした。

「萌、」

 ——は、はい。

 向かい合うリズさんの瞳が剣士のそれに変貌する。

「私と、立ち合ってくれ」

 僕に向けられた真っ直ぐな願いを、

 ——それは……、でき、ません……。

 僕は無下にも断ってしまう。

 リズさんは左手で大剣を逆手に携えている。

「どうしても、か?」

 ——はい、どうしても、です……。

 前にもされた同じ質問に、僕はリズさんの瞳を見つめ返しながら、同じ答えで返す。


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 彼から返ってきた答えは、私の予想通りだった。

 私の目が彼の変調を伝える。

 かすれていた彼から見える文字が、段々と薄くなり次第に消えていく。併せるように、彼が手に持つ刀が微かにだが持ち主に訴えかけるように振動し出す。

 やはり——彼の方が私より強い、か。

 右手の握り拳を彼に悟られぬよう背後へと隠す。

「少し、話せないか?」

 やっとの思いで絞り出した私の声に、彼は頷いて答えてくれた。

 雨の降る中庭から、その庭を眺めることができる廊下へと場所を移すことを提案する。

 彼の同意が得られると、彼へと渡すタオルを探すべく私は小走りに駆け出した。


 ——凄く美味しいですね、このお茶。

「そうか、気に入って貰えたなら何よりだ」

 ——飲むと全身がほわぁ〜って暖かくなってリラックスできます。

 彼はそう言いカップの中身に息を吹きかけながらちびり、ちびりと飲む。

 甲冑を脱いだ彼は、やはりか、学園指定の体操着をしていた。雨に打たれ冷えた体を拭き終えた彼に、淹れたてのハーブティーを進める。

「その言葉を管区長殿がお聞きになったらさぞお喜びだろう」

 ——……え?

 萌の手が凍りつく。

「このハーブは管区長殿が修道院内の菜園でお育てになったものだ」

 ——ブーッ! ゴフゴフ!!

「こら、萌、吹き出してしまってはハーブに失礼ではないか」

 ——すすす、すみません。でも、エリザベートさんが、育てたんですよね……?

「管区長殿の策謀を警戒する気持ちは分かる。私も不審なものが混じってないかと、しまったのは一度や二度ではない」

 カップを口元へと運び、香りを鼻から胸いっぱいに吸い込む。鎮静効果のある香りが体全体へ、指先にまでも染み渡っていく。

「エリザベート管区長殿は、こと異性に及ぶと見境がないのはある意味事実だが、根は敬虔な聖コンスタンスの修道女だ」

 ——修道女って、規律とか厳しいんでしたっけ? 前にリズさんが話してるのをちらっと聞いたんですけど……。

「一般的には、そうだ。戒律を遵守する誓いを立てた者達だからな。とは言うが、聖コンスタンス騎士修道会では守るべき戒律は主として三つしかない」

 ——清貧、純潔、それと従順でしたっけ?

「良く知っているな、萌。その三つを剣に誓い、生涯をただ一振りの剣として弱者を守り怪異を斬るのが、聖コンスタンス騎士修道会だ。剣と衣と一切れのパンしか望まぬ清い貧しさを尊び、その一生を剣に捧げ異性と交わることをせず、ただあるじと聖コンスタンスに従う——剣の訓戒と呼ばれるものだ」

 ——そう、なんですか。

 萌が少し寂しそうに呟いて、ハーブティーをすする。

「しかし、そうは言っても守られていないのが現状だな。生活集団を運営するため営利を求めて各国から寄付を募ったり、絢爛なドレスで貴族主催の夜会に出席したり、異性と結婚して家庭を持つ者もいる」

 ——リズさんは反対ですか、そういうの?

「反対も何も、誓いとは守るからこそ意味がある。どうにもいかなくなった時にこそ、それでも誓いを守ることを選択する心の強さと誠実さが人を成長させる、そう私は信じている。他人のことをとやかく言う資格は私にはないさ。現に私は君から萌子を預かっている身だ。そんな私があの人達のことをあれこれ言うのはおかしいだろう? 萌、おかわりはいるか?」

 ——はい、お願いします。おいしくって癖になっちゃいそうです、これ。ふふ。

「管区長殿ご自慢の一品だからな。火傷するなよ?」

 ポットからハーブティを萌と私のカップに注ぐ。

 ハーブティーを飲む間、雨が控えめに外に落ちる音が聞こえる。

 ——そう言えばリズさんにどうしても聞きたいことあるんです、二つもですけど。

「二つでも三つでも、私に答えられることなら構わないぞ」

 ——リズさんの大剣って、鍔が二つありますよね? 何でですか?

「ああ、これのことか」

 柄と刃元の間と、刃元と刀身の間の二カ所に棒鍔がある。

「これはツヴァイハンダーと呼ばれる武器の一種だ。この武器は、スピアやグレイブやアックスと言った長柄武器ポールウェポンに剣で対抗することを目的としている。そうだな、例えばテレジア殿の持つハルバードを相手にしようか」

 ——う……。

 テレジア殿の名を出すと萌の表情が露骨に青ざめる。

「ハルバードには三つの刃が存在する。槍と斧と爪だ。それをこちらは刀身で受け止めるとしよう。この時、萌の刀ならばテレジア殿が刃を押し込んできたらどうなる?」

 ——えっと。テレジアさんの刃はこっちの鍔のところで止まると思いますけど……。て、あ、そっか、斧とか爪の尖った部分がこっちの持ち手に当たっちゃうかも知れないんですね?

「ああ、刺さってしまう。だから刃元の先の第二の鍔で受け止めて持ち手を保護するんだ」

 ——良く考えられてますね。うんうん。それと、リズさんって左利きなんですか?

「いや、右利きだ。私が持ち方を変える理由か?」

 ——はい。右利きの右構えと左利きの左構えの両方で戦ってますよね? 日本だと基本的に左利きの人も右利き構えに強制されてますけど、欧州の剣術だとそう言うのないんですか?

「いや、ある。利き手は右になるように強制される」

 ——え、じゃあどうして?

 簡単なことだ。

「二倍稽古ができる、だな」

 ——えぇー!? 見つかっちゃったら怒られちゃいません?

「勿論怒られたさ。私の教えたことに反して何をしている、とな。だから左構えは私一人でこっそりと練習したよ。認めたくれたのは最後の師だけだったな」

 利点もある。剣術は右利きを強要されるため、相手も右利きなのだ。右対右が右対左になる。相手との距離や間合いが微妙に変化するのだ。相手は左利きなど想定外のため、その分こちらが有利に立てる。

 私の剣は、<氷の貴婦人>のような刃元リカッソを持つ構造であるツヴァイハンダーならではだ。右手で刃元を握るか、柄頭の宝石を持つかで、リーチと構えと間合いを自由に、そして素早く変化させられる。

 練習量は二倍以上だが、剣を持ち試行錯誤するのは楽しいものだ。

 ——最後の師ってことは、リズさんの剣の先生っていっぱいいるんですか?

「いっぱい、と言う程ではないが……。剣を教えてくれたと言える人は修道院の訓練教官を入れて三人だな。他のお二人からも基礎的なことを教わったが、一番影響を受けたのは三番目の師だ」

 萌のようにお師匠様と呼べるのはこの人だけだろう。

 ——どんな人だったんですか?

「変わった人だよ。<赤き馬に乗った騎士>との戦いで両腕を失った傷痍騎士だ。日本へ発つまでに剣を教えて頂いたが、結局一本も取れずじまいだった」

 ——……え? あ、あのリズさん、それって一体?

「義手を使わないで、柄を口にくわえるか、足の親指と人差し指の間に挟むんだ。強かった。そして厳しい人だった。周りからは変人扱いされていたが、修道院全体でもあの人に勝てるのは数少ないと思う」

 師との稽古は常に立ち合い、そして宿題の連続だった。

 腕を亡くしてからの方が強いとご本人は仰っていたが、私としては両腕が健在であったならば国司殿と渡り合えていただろうと思う。

「腕を亡くされたのは、あの『バート・イシュルの合戦』においてだ」

 ——それって、島津海兵隊が大活躍した有名な戦でしたっけ?

「ああ。敵怪異騎士団の中で孤立した隊に師はいたそうだ。両腕を失い、数々の重症を負い、神への祈りを済ませ、後は何体の怪異を道連れにするかと数え始めたところに現れたそうだ」

 十万を越す怪異の兵団からの撤退戦——その中で逃げ遅れた百にも満たない部隊、その一人が師だった。

 そこに日本皇国からの義勇兵達が到着する。約三百の兵達は島津の旗、丸十字クルツ イン カイスを掲げて怪異達へ突進した。

 島津の兵達がいかにして孤立した兵達を救い、十万の怪異を葬ったかの詳細は吟遊詩人の詩歌や劇作家の戯曲に任せるべきだろう。

 彼らは敵軍の反対側まで突撃し、少数の部隊を二分化させ、それぞれが方向を変えて再度敵怪異を突っ切る形で突撃した。そして反対側まで突き抜けると、またそれぞれの隊を二分化させ、突撃する——それを繰り返し敢行した。

釣り野伏ツリノブセ』と並び『穿ち抜きウガチヌキ』として我が国でも知られる島津の戦術である。

「師が言うには、周りを取り囲む殺気立つ万を越す怪異よりも、救出に来たはずの島津の兵士一人の方が遥かに恐ろしかったそうだ」

 ——うわぁ……。

「だからか、私が日本に行くと知るや、『どんなことをしても絶対に遅れるな』としつこく言われたよ」

 こうして振り返ると全てが遠い昔のようだ。師には悪いが既に萌には遅れを取っている。戦わずしても敗北することはできるのだ。

「萌、君に剣を教えた君の師のことを聞かせてくれないか?」

 ——お師匠様のことですか?

「豪気な人物であったようだが……?」

 どのような人なのだろうか? ややもすれば貧弱と取られかねない萌に、捨て身の特攻剣術を教える人物とは。

「私にはどうしても構えが無いと言うのが腑に落ちなくてな」

 ——やっぱりそうですか?

「防御より攻撃に天秤を傾けるのは分かるが、全て捨て去ってしまうのはな」

 ——う〜。

 君を責めている訳ではないぞ。まぁ一パーセントくらい含んでいるのは否定できないが。ふふ、君に助けて貰った私がこんなことで君を責めるのはおかしいか。

 ——お師匠様は、そうですね、勝手気ままって言うか、良く僕に意地悪したり、とか、そんな人でした。頭に沢山チョップされましたし、こめかみをグーでグリグリとか、ほっぺを引っ張られたりとか……あれれ、稽古とか剣のことより僕が怒られちゃってることの方を先に思い出しちゃいましたね。

 どうしてなんでしょう、と萌は昔を懐かしむように柔らかく微笑む。

 ——稽古の間は俺が法律だー、とか、師匠の命令には絶対服従だーガハハハー、とかひどいことばっかり言ってましたよ。

 そう話す萌の声は明るい。言われた言葉が何であれ、彼にとっては大切な宝物のようだ。

「萌、君は昇武祭はどうするんだ?」

 ——えっと、乱戦に参加します。

「乱戦? 確か一番荒っぽく、怪我人が多いと聞いたぞ」

 ポイント制の弓術や他の種目と違い、乱戦では胴着もしくは体操着以外の防具の装着を禁止している。一回の試合で本選出場者一人を決定し、予選は八回のみ開催される。

 他の種目と違い、細かいルールや取り決めは無い。校庭一面に出場者が散り、初めの合図で開始される戦いだ。ルール無用のバトルロイヤル、最後に立っていた者が勝者ラストマン スタンディングの荒くれ者ご用達の種目と聞いている。

 ——意外ですか?

「それはな。立ち合いが禁止されているからてっきり弓術と思っていた。つまり、君と立ち合うには乱戦にエントリーしなければならなかった訳か、私は」

 ——ええぇ!? でも、同じグループになる確率は八分の一ですよ? それに僕、乱戦では真鋭ジゲン流を使いませんし……。

「授業のように、か?」

 ——う、やっぱり気付かれてた。はい、授業みたいに、です。

 聞こえてるぞ、萌。

 ——乱戦を選んだのは、やっぱり一番実戦に近いかな、って思ったからです。お師匠様から常に実戦を意識して稽古しろ、って言われ続けてましたから。

 なるほど、それで常に甲冑を着込んで稽古に励んでいる訳か。

「去年も一度経験したのだろう? 実際の戦いを経験してみて、どうだ?」

 ——う〜ん。ふふ、実戦だとリズさんや国司さん達が一緒ですけど、乱戦は一人ぼっちですよ?

「それはそうだが……。今の言葉、君の師に聞かれたらマズイのではないか?」

 ——ふふ、それでも俺の弟子か〜ってゲンコツ貰っちゃいますね。

「君の目標か?」

 私にとっての目標は師ではなくあの人であり、あの人達であるが、彼にとっては誰だろうか?

 ——目標、に近いですけどちょっと違いますね。何時か追いつくとか追い越すとかじゃなくて、僕は僕にしかなれませんから。

 彼の瞳が力を帯びる。

 ——僕は、自分のできる、精一杯の自分になるだけです。

 立派な志と言いたいところだが、

「傷を手当てする身にも少しはなって欲しいものだぞ、萌」

 ——う、すいません……。

「君の師とて、君が傷つくことは望むまい」

 ——逆です、リズさん。初めてお師匠様と出会った時とか、傷は勲章だ、とか言われて褒められちゃいましたもん。

「君の無鉄砲さは筋金入り、と言う訳か」

 ——はい、ふふふ、そうです。

 彼にとって師とは、目指す剣士でありながら己の道を示してくれた人物でもあるのか。

「よくできた人だったんだな、君の師は。私の師は剣術は教えてくれたが、他のことは一切からっきしだったな。剣が全てと言う人だった」

 剣の刃の前では誰もが平等だ。

 生か死か。斬るか斬られるか。見えすぎてしまう私にとってはシンプルすぎて心地良い世界だ。

「何時かお会いしたいものだな、君の師に」

 ——えぇ!? リズさんを紹介したら変な誤解されちゃいますよ、絶対!

「一体どんな誤解だと言うのだ?」

 ——そ、その……恋人、だとか……。

 頬を赤らめながら彼の口から出た言葉に、思わず体がピクリと反応した。

「そ、そんなことはないだろう。私はこれでも聖コンスタンス騎士修道会の、は、端くれだ。じゅ、純潔の誓いを破り、君と交際するなど、そのだな、あれだ、無いことだと、思うぞ、ああ」

 どうしてか言葉が上手く続かない。

 ——そう、ですよね。ふふ、すいません、変なこと言っちゃって。

 彼は何時も通りに話す——ように見える。

 ——お師匠様、そういう話好きそうですから。

「まるで何処かの管区長殿ではないか」

 ——あ、少し似ているかもです。

「全く、萌、君と言う人は……。管区長殿と似てると言われて喜ぶ男性はいないぞ」

 私の返しに彼は一瞬ポカンとするもすぐに笑ってこう言った。

 ——リズさん、違います。

「何がだ?」

 ——僕のお師匠様、女の人ですよ。

「——は?」

 間抜けな声が出た。

「そ、それはおかしいぞ萌。君の師は自分のことを俺と言っていたのだろう?」

 ——女の人なのに変ですよね?

「ガハハハーと笑ったと言ったのは君だぞ?」

 ——不思議と堂に入ってかっこよかったです。

「む、むむむ」

 私の中で培われつつあった萌の師に対するイメージがガラガラと虚しい音を立てて崩れ落ちる。

 ——いっつも和服で袴を履いてて、そうそう、リズさんと同じ髪型でした。オールバック・ポニーテール、って言うんですっけ?

「それは——」

『それは……チェスト、だ』

 あの女性剣士ひとと、同じなのか……。

 もしや君の師は、十年前の大戦に参加されていたのか?

 あの夜、私の村を救ってくれた人なのか?

 聞いたところで、彼が知る訳もない。だが——いや、止そう。仮にそうだとしても、<黒禍の祖狼>を斬り、私に初めての日本語を教えてくれたあの日本の女性剣士が彼の師だとしても、彼に対する私の想いに変りはない。

 不意に、自分を取り巻くぬるま湯のような空気が気になった。

 想い? 彼に対する想いとは何だ、と。

 自問しても答えはなく、ただ<氷の貴婦人>の伝える冷たさだけが感じられた。


 ——リズさんは、

 急に黙り込んだ私へ、萌が声を投げかける。

 ——どうして剣を習ったんですか?

 つい最近、似たような質問を二度受けた。

 どう答えるべきか、私には分からなかった。

 どうして、と、何故、との問いに相応しい答えを私が持っているのだろうか?

 この場に立つに相応しい——……

 剣が震え出した。

 答えが無い私をあざけっているのだろうか——いや、違う。

 剣が頷いた気がした。

 剣に秘められた想いとは、人の手が届かぬ夢物語と思っていた。だが、もしかしたら、この剣を錬成した鍛治匠の願いとは、そんな完全無欠なものではないのではないか?

 想い人の力になりたいと、ただそれだけだったのではないか?

 でもそれが高貴なる貴婦人にとって重荷でしかなかったとしても、それを捨て去るのが正解だったとしても——捨てきれずに秘めて持ち続けたのではないか?

 答えが疑問を呼び、疑問の答えは新たな疑問となる。堂々巡りの問答、自らの尾を喰らい続ける円環を成す旧史の幻獣そのものだ。

 彼の前では嘘をつかずに自分に正直でありたいと、私はやっとの思いで言葉を発する。

「昔、」

 目を閉じずともあの光景は蘇ってくる。

「私が幼かった頃、住んでいた村が狼の怪異に襲われたんだ」

 夕日を浴び、体を焼かれながらに森から這い出る怪異達の黒い影だ。吐き気を催す臭いと強烈な殺意が私の目を埋め尽くす。

「普段なら、皆で教会に立てこもり、聖歌による防衛陣で朝まで待っていたのだが、あの日は日暮れ前に現れた」

 いるはずのない時間に、あってはならない怪異達が登場し、村はパニックになった。

「誰も彼もが神に祈り出したその時、日本の騎士達が助けてくれた」

 黒く輝く甲冑、純白の外套と背に負う赤い日の丸——全てが強烈で絶対的な存在のように見えた。

「全ての怪異を蹴散らし、奴らのボスも斬ったよ、あの人達は。それでも、何も言わず、取らず、求めずに、次の戦場へ、多分私達のような人々を救いに去って行った」

 その姿は、神様なんかより、信じられるもののように私の目に映った。

「あの人達のようになりたい、と。誰かを救う尊い行為をさも当然のようにこなし、何でもないと、当たり前のことをしただけだと微笑むことができるのなら、きっとそれは——」

 それは、とても素晴らしい、求める価値がある——命を賭けるに相応しい価値がある、そう思えたから、私はあの人のようになりたくて剣を取った。

 でもそれは他人から見れば凄く、

 ——凄い、やっぱりリズさんはかっこいいですね。

 滑稽で、愚か……え?

 ——運命じゃないですか。昔、自分を救ってくれた人達の住む国に来ちゃうなんて。

 彼は、私を、全身全霊で肯定してくれた。

「君は、笑わないのか?」

 ——え、何をです?

「私が剣を振るう理由など、安っぽい代物だと」

 ——えぇ−!? 誰ですか、そんな失礼なこと言っちゃう人は!? 分かりました、僕が代わりに怒っちゃいます!

 それが君の大の苦手なテレジア殿であってもか?

 ——僕は素敵だと思います、リズさんの理由。

 彼が見せてくれた微笑みは、遠い冬の日、あの夜を越えた朝にあの人が見せてくれたものと同じような気がした。

 ——僕の理由なんて、自分を好きになりたいって、そんなものですよ。

「それでも君は命を賭けるのだろう?」

 ——ふふ、はい。

 彼の真の理由はその先にある——そんなことぐらい私の目を使わずとも察せられる。

 ——理由なんて、他人ひとからすればちっぽけでおかしなことでも、僕にとってはそれこそ命を張らなきゃいけない意地ですから。ですから、リズさんの理由を笑い飛ばすなんて、否定するなんて、それこそリズさんにしかできない、ううん、しちゃいけないことなんです。

「例えその批判が正しいことだとしても、か?」

 ——僕はそう思います。正しい、正しくないなんて言い出したら、結局は力の強い人が正しくなっちゃうじゃないですか。弱くたって、何も持ってなくたって、正しく生きることはできるって、僕は思いたいです。

「善悪の基準を、自分自身で持つというのか? 一歩間違えれば傲慢な破滅を招くぞ?」

 ——それでも、いいじゃないですか。

 良くない。君はそれで良いかもしれないが、君がそうなってしまうのは私が絶望的に良くない。

 ——完璧な正義なんて、屁理屈を幾らでもつけられちゃいますから。嘘つきが自分のことを正直者って言うのと同じですよ。

「『嘘をつくこと』に対しては正直であるが故に、嘘を常につく理論がほころぶと言うあれか」

 ——だから、リズさん、

 彼が私の手を取り、こう続けた。


 ——チェスト、行きましょう。


 その意味は——……。

 そうか、それならば筋が通る。祖国の修道院の日本語辞典にも載っていない訳だ。

 あの一撃の要諦は、技術や技巧などではなく、己の生き様を何処までも貫こうとする——彼の持つような——境地だったのか。

 死地へとなお一歩踏み込んで行く勇気、それこそが怪異を斬り倒す武器なのだと、あの人はそう伝えたかったのか——……。

 ——そうですよ、リズさん。だから、チェストなんです。

 彼が私の手を握りながら、少し恥ずかしそうに続けた。


 ——人生なんて、


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 口が勝手に動いちゃうことってあるんだなぁって思っちゃった。心の中のことすら上手に口に出せない僕だけど、気付いた時にはもう手遅れだった。


 ——人生なんて、所詮死ぬまでの暇つぶしなんですから。

 ——思いっきり楽しまないと、損じゃないですか?


 リズさんがはっと息を飲み、動きを止める。


 沈黙の中、僕達の目と目が合う。


「ぷ、」

 ——ぷ?

「ぷ、くく、」

 ——くく?

「ぷっはっはははは」

 ——えぇぇー!?

 笑われた〜!? 何で〜!?

「はははは、くく、ぷっはははは」

 しかも大笑い!? どうして!? 僕の言い方が変だったのかな?

 お師匠様がこの言葉を言った時なんか、僕感動しすぎてお師匠様はやっぱり格別に格好良いなぁって涙が出ちゃったのにぃ〜。

「ぷぷ、違う、違うんだ、萌、くくく、ふふ」

 うぅ、でもリズさんがこんな風に心の底から笑ってるのって初めて見る。とても綺麗な声が僕の心の奥まで響いてくるみたい。心臓の鼓動が大きく、とても大きくなる。


 この時、僕は分かっちゃった。

 僕はもう、どうしようもないくらいリズさんのことが大好きなんだって——……。


 ——何が違うんですかぁ、リズさぁん! 教えて下さいよ〜!?

「ふふふ、人生は所詮死ぬまでの暇つぶし、か。だから思いっきり楽しまないと損、か。うむ、良い言葉だ」

 なら何で大笑いするんですかぁ!?

「ぷぷ、しかしだな、人生の四分の一も生きていない君がそう達観することもなかろう?」

 ——ぁ!

「察するに、君の師の言葉の受け売りだろう?」

 ——はぅ、仰る通りです……。

 さっきまでの勢いが、穴の開いちゃった風船のようにしぼんでいく。

 リズさんが僕の手を強く握る。

「そうへこたれるな。たとえ誰の言葉でも、萌の口から出たのならば、君自身の言葉なんだぞ? 君がそう思うからこそ、私にも教えてくれたんだろう?」

 うぅ、リズさんの優しさが五臓六腑に染み渡るよぅ。

「なぁ萌、だからと言って、好き勝手に切り込んで良い訳ではないぞ? 手当をして下さっている管区長殿のお立場にもなってみろ」

 ——返す言葉もございません。

「それとも、君には理由でもあると言うのか?」

 ——え?

『ひとごろし』『ひとごろし』『ひとごろし』

 急に、心臓を鷲掴みにされた。

「そんな訳は無いだろう? 君の剣は確かに私より上だが、戦場では生き抜くことも立派な武器なんだぞ?」

『おまえがいなければ、ぱぱはまだいきてたんだ』『おまえのせいで、ままはまいにちないてるんだ』『かえせ』『かえして』『かえしてやれよ』

 ——は、はい……。

 不意に開いてしまった傷口から、思い出したくもない、でも思い出さなきゃいけない出来事が、次から次へと溢れて出て行く。

「君のことを案じている人物が、少なくとも一人どんなことがあろうとここにいるんだぞ。など絶対に選ばせ——……萌?」

『おまえなんか、うまれなければよかったんだ』『しんじゃえ』『ひところしのこは、しんじゃえ』『しんじゃえよ』『おまえも、おまえのははおやも、いなければ』『いなければよかったんだ』『しねよ』

 ——あ……ぅ……。

『ごめんね……はじめちゃん、ごめんね……』

 思い出が溢れ出す。にがく、苦しい、とても痛々しくて涙が出ずにはいられない。

「萌? おい、しっかりしろ!」

 苦しい、息ができない。首が絞められて——僕からいく。

 リズさんが僕の肩を強く揺する。

 いるリズさんに。僕の一番深い嫌なところを。

 僕は、

「お、おい、コラ!? 誰が抱きついて良いと言った!?」

 リズさんに見て貰いたくないから、リズさんの死角へ体を移す。

『萌ちゃんよ〜、そりゃお前さん自身が見つけるべきもんじゃねぇか? てかさ、俺はもう見つけてると思うぜ、お前さんは』

 ——う、ぅぅぅ、ひっく……。

『泣いたって、間違えたって、行くしかねぇだろ? 最強の頂ってのは、強さを追い続ける者にしか届かねぇのと一緒よ。挑み、負け、倒れ、立ち上がり、再び挑む! これしかねえ。お前さんの問いの答えはな、それを追い続けて、に胸張って会えねえでどうするよ? お前さんは俺の一番弟子なんだぞ? だからよ、萌、チェスト行け。人生なんざ——』

「泣いて、いるのか?」

 視界が濁り出す。

『あ〜、君、君。そう君だよ、東雲、萌、君。僕? 僕は通りすがりのイカれた科学者。そう引かないでよ。面白い話を君に持って来たんだ。鳥上学園、って知ってるかな?』

 ——ぅ、く……ひっく。

『アハ、覚えてるかな、僕のこと? 久しぶりって程久しくないよね。ね、行きたくなったでしょ、鳥上学園? ダメダメ隠そうたって。君のことは追跡対象だったんだから。無能なお目付役の上司がいなくなってやっと本来の仕事ができるんだから。それにね、君の無能ぶりじゃ入れる高校なんて他にないでしょ、ヒヒ?』

「萌……」

『行けるよ。君が僕達の条件を飲んでくれれば。ウチの機関が推薦すれば何処でも一発OK間違いなし! 多分だけどね、ヒヒ。優等生も優等生、君は最高に素晴らしい人材なんだから。この国にとっても、人類にとってもね』

「おい、萌、落ち着いたか?」

 リズさんが泣いていた僕を引き離してしまった。

『だからなってよ、ウチのモルモット君に。今の時代、生きた旧人類が手に入るなんてありえないんだからさ。君は劣等の中でも最強のレア物、最高の劣等種なんだよ!』

 ——う、あ……。

 リズさんに見られている、けど、止まらない。

 一度漏れ出した黒い血だまりを止める手立てを僕は知らない。通り過ぎるのをただ泣いて待つしか。

『僕達の条件は簡単だよ。学園を卒業したら身柄を預けてくれること。その代わり入学は保証するし、君のに相応しい生活も提出してあげるよ。あ、言っとくけど基本的人権とか面倒なのは勿論全部放棄だからね、ホウキ! ヒヒ。ン〜ン〜、夢が広がるなぁ〜!』

「何だ、は……!?」

『君の無能ぶりを生かした恩寵生物か兵器を作れればいいんだけど、人体を原料とする錬成は難しいんだよね、この僕でも。国内でも数ヶ所しかやってないんだよね〜。あ、鳥上学園ってオロチの島か、ヒヒヒヒ』

 ——見ないで、下さい。

『そうすればさ、浮かばれるでしょ? 君のせいで妻に殺された君のパパも。人を二十四人も殺した大量殺人犯になっちゃった君のママも。君のせいで僕の素晴らしい研究の手駒だった死んじゃった六人も。東雲萌君、君がね、君がモルモット君になって国のために立派に死んでくれたら、どれくらいの人が幸せになるか、考えたことってあるかい?』

「萌……おい、は一体、何なんだ?」

『考えたことがあるなら、君は自分が生きててもしょうがない生き物だって分かるよね。ヒヒ、違うって顔してるけど、心のどっかで僕のこと認めちゃったでしょ? 一度心に住みついた傷は絶対に治らないよ。かさぶたにはなるけど完治しないんだ。治った気になってるだけ。つっつけば、ひっぺがせば、どんどんどんどん溢れてくるんだよ』

「この、不快な男は、何だ、萌ェ!?」

『受かったんだね、おめでとう、ヒヒヒヒ。入学試験、変なお爺さんに吹き飛ばされて湖に落っこちてたけど、採点表見たらあのお爺さんが君のこと一番評価してたよ。君のクラス担任に推しといたから。ううん、気にしないでね、これはサービスなんだから、ヒヒヒ。君の体は血の一滴から細胞の一つまで全部僕の研究に使わせて貰うよ、一つ加えると、』

「萌! 戻ってこい、萌ッ!!」

『死体でも構わないから。何時死んでもいいよ、ウン。生命活動をしてない体をいじくれるだけでも大収穫だから。それにさ、分かりやすいでしょ?』

「萌ッ!!」

『君のお母さんが犯した罪を、その原因でもある息子の君が、死んで償うってのは。ヒヒヒヒ!』

「——黙れッ!!」

 リズさんの握り拳が、僕の左肩に振り下ろされる。強く、そして冷たい衝撃が、僕の意識を本来あるべき場所へと戻す。

 視界が戻った瞬間、僕の目の前にいる大切な人が、

「萌——……」

 とても哀しそうな顔をしているのに気付いた。昔見た、僕の一番古い記憶の人と、同じ表情だった。

『ごめんね……はじめちゃん、ごめんね……』

 そんな顔をもう誰にもして欲しくないから、僕は精一杯の意地を張って生きていくしかないんだと決めたはずだったのに。


 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 目覚めた彼は、何処かに迷い込んでしまった猫のように怯えた顔をしていた。

「今の、男は、誰だ?」

 ——何の、グスン、話ですか?

「君のが見せていた不愉快極まりないことを言う男のことだ!!」

 ——知りま、せん。

「なら、本当なのか?」

 ——何が、ですか?

「学園を卒業したら、君は何処かに、身柄を預けるのか?」

 ——……。

 彼の沈黙が私の問いかけを肯定する。

 ——やっぱり、リズさんには全部見えちゃうんですね。

 彼が寂しそうに笑いながら、涙を拭い、私と距離を取る。

「死ぬつもり、なのか?」

 ——人間、何時かは死んじゃいますから。だから、

「黙れ!」

 ——僕は、もう決めちゃいましたから。

 頼むから、

「黙ってくれ……!」

 分かってしまう。私には彼の心を変える術などないことが。

 泣いても、怒鳴っても、わめいても、手を出しても、私には、彼の——貴女の——決意を決して変えられない——変えることはできないのです。

 彼は容易く命を投げ出そうとする。生を軽んじている訳ではない。死を思うからこそ、彼の放つ一刀はとてつもなく強大で儚いのだ。

「君の——……」

 母上の犯した罪を背負うのが、例えそれがどんな理由であれ、間違っていると言ったところで、私には彼の答えは——止められないのです。

「そんなこと、認められるかッ!!」

 彼は——貴女は、もう決心してしまわれたのですから。ですから、そう、私には——何もできやしない。

 そんなバカで頑固で真っ直ぐな君だから、私はどうしようもなく心惹かれてしまったのだから。

「バカ、みたいじゃないか……」

 せめて彼に残された時間を幸せなものになんて——諦める訳にはいかないのです。貴女の決意を応援するなんて、私の心を偽ることはできません。

「バカみたい、じゃないか……」

 だから、私は、剣を鍛えましょう——だから、私は、涙を堪え、耐えることしかできないのか……?

 彼が背負うその哀しみを、断ち切る手段を絶対に持ち得ないのだから。

 ——リズさん……。

「ははは、バカみたい、じゃないか……」


 君を、好きになってしまった私が。

 抱いてはいけない感情を持ち、それに気付いてしまった私自身が。


 だから私は、涙を殺し、せめてもの抗議の声をあげることしかできない。

 だから私は、剣に託しましょう。私にできぬことだとて、理想を思い描くことこそが剣匠たる私の精一杯の努めなのですから。

 私の愛しき大切な友よ、

 私の愛しき氷の貴婦人よ、

 その哀しみを、せめて私に分けて欲しい。

 その悲しみを、永遠に凍らせましょう。

 心から想う君が、本当の意味で明日を笑えるために。

 心から想う貴女が、悲しみで今に沈まぬように。


 降りしきる雨の中、

 蒼い刃だけが輝きを放っていた。


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