不良の王国の女王様?

番外編小話。不定期に更新していきます。

刃金×出灰+Fクラス



「それってさ、クイーンじゃないの?」


 藍の何気ない一言に、けれど次の瞬間、Fクラスは凍りついた。


 ……学園祭本番、お互いのクラスから動けないと言うことで昼休み、出灰が当日に出す予定のケーキを色々持ってきてくれた。

 男だが、育ち盛りで食べ盛りな一同には、甘くても全く問題はない。更に刃金には、出灰がわざわざ甘さ控えめなものを用意したので、二人の距離を近づけられたと彼らは喜んでいた。


「それだけ美味しそうに食べてくれるなら、彼女さんも喜んでくれるでしょうね……あ、それとも彼氏さんですか?」


 そんな中、Fクラスの面々の食べっぷりに感心した出灰がそう言った。彼氏と言い換えたのは、この学校の特殊さ故だろう。

 だが、しかし。


「「「いや、いませんし」」」

「……えっ?」

「俺達、怖がられてるから……ま、皆でつるんでる方が楽しいしね」


 口を揃えて答えると、出灰が驚いたように声を上げた。フォローするように言った藍は、その気になれば男女問わずより取り見取りだろうが、肝心の『その気』がないのでやはりフリーだったりする。


「そりゃあ、俺達もお年頃だから? 怖がらないような子がいれば、また話は別だけど」

「「「そうっスね」」」

「お菓子作りとかする子、可愛いよね」

「「「良いっスね」」」

「ボタンつけとかしてくれる、家庭的な子って素敵だよね」

「「「最高っス」」」

「ねぇ。それってさ、クイーンじゃないの?」

「「「っ!?」」」


 ……ここで、話は冒頭に戻り。

 隣にいた出灰を抱きしめて睨みつけてくる灰金に、己の失言に気づいた面々は一気に青ざめることとなる。

(((申し訳ありません、キング……酷いですよ、ナイト!)))

 内心、滂沱の涙を流す一同を救ったのは、刃金の腕に収まったままの出灰だった。


「刃金さん、内藤さんの言ってるのは一般論ですよ? たまたま、俺にも当てはまるだけで……きっかけにはなるかもしれませんけど、つき合うなら他の要素も必要ですって」

「……たとえば?」

「そうですね……顔とか胸とか、あと愛嬌?」

「お前、それわざとか?」


 自分に無縁なものを口にした出灰の頭を、刃金は笑って撫でた。

 そんな二人、いや、出灰を眺めながら。


(((感謝します、クイーン!)))


 話を逸らして貰ったことで、結果的に助かったFクラス一同は「一生、ついて行きます!」と固く心に誓い。

 そんな一連の流れを、藍はニコニコと楽しそうに見守っていた。

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