奴隷達の決意、その2―三人の戦士―

 レザンドニウムの領主であるキアが、初めて自分の魔力で闇の大蜘蛛を召喚したことを機に始まった、闇の大蜘蛛バウト。


 未だ勝利した奴隷はいないと言われる程の破壊力と素早さを併せ持つ黒い大蜘蛛との戦いが今、リタ達によって繰り広げられている。


(キアの野郎。こんな大きい図体の蜘蛛を最初は一人でやらせておいて――かと思ったら今度は、次から次へとルールを変更する……。気紛れも良いところだよ!)


 ヨゼフはいつもの癖で、キアや他の魔道師には言えないようなことを想像していた。


「じっとしてな!」


 リタはいつもの男口調で言いながら、特異な形の武器で大蜘蛛の脚を掴んだ。


 彼女が使っている武器は、《サンディ・ターロン》という物で、掴んだ相手を一瞬で砂まみれにしてしまう。


 これらの武器は全て、武器商人も兼ねている魔道師達によって作られている。


 さて、話は元に戻るが。――


 リタ達は、観客からの声によるプレッシャー、大蜘蛛の翻弄するような動きに悪戦苦闘しながらも、無事に勝利を収めることができた。


 が、それで脱出権を得たとはいえ、観衆の声は全て、領主であるキアの方に向けられていた。


「キア様万歳……」


「レザンドニウム領国万歳……」


 三人は半ばつまらなさそうに、観衆が掲げる文句をおうむ返しで言った。


 彼女達は、観衆の声で盛り上がっている隙を見て、城の裏口から脱出した。


(父上……。今頃、私のことを心配してるだろうな。よし、早速王国宛てに手紙を送ろう)


 リタは早くも仲間達に会える、という気分になっていた。


 彼女は生き別れた魔族達と再会し、彼らに自分自身のことを知らせるため、ヨゼフやナンシーと一緒にフィブラス砂漠まで旅をするつもりだ|(キアが何を企んでいるのかを、探ることも兼ねているが)。


「武器はどうする?」


「そうだね……。手がかりのために、このまま持っていこうよ」


「『手がかりのために』って、どういう意味よ?」


 ナンシーは、リボンで髪を結いながら、訪ねた。


「もちろん、キアが何のために私達を奴隷にして、闘技場で闇の大蜘蛛と戦わせたのかを、私の父、ランディー王に説明するための手がかりさ」


 リタは早口で、二人に冒険の目的を伝えた。


 今、彼女達は、冷酷な領主に対する情報収集と、リタが砂龍族と再会することも兼ねた冒険に出発しようとしている。――

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