睡蓮鉢に棲む人魚

青山羊

欠けた月

 


 ああ、なぜ私は今ここにいるのか。

 

 そもそもの始まりは、あの夜だ。

 あの蒸し暑い、月の欠けた夏の夜。


 賑やかな祭囃子まつりばやしに誘われて、ふらりと立ち寄った見知らぬ神社の境内で、迷路のように立ち並ぶ、裸電球のぶら下がった騒々しい露店の間をぐるぐると何度も巡り、それから本殿横の暗い竹藪を抜け、静かな住宅地へ繋がる朱塗りの裏鳥居をくぐろうとした時。


 私達は、あごの崩れた狛犬の脇にひっそりたたずむ、小さな屋台を見つけたのだ。

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