◆24:Plaudite, acta est fabula.

 イインチョ。クラスメイトからそうあだ名されている橋本萌々はカラコロと下駄を鳴らしながら商店街を北へ歩いていた。突き当たりには川見不神社の鳥居が見える。鳥居の向こうには連ねられた提灯が点々と明かりを灯していた。


「イインチョーそんな急がなくてもぉ」


 萌々と同じ浴衣姿で弱音を吐いたのは結城優菜だ。


「ごめん。先行き過ぎちゃったね」


 立ち止まり優菜が追いつくのを待つ。


 萌々の首筋には汗が伝っていた。

 心臓の鼓動が台風が運んで来る不穏な予兆にせかされて早い。手に持つ縁をフリルで飾られた晴雨兼用傘をぎゅっと握りなおした。前方から風の合間を縫って祭り囃子が聞こえるが、少しも楽しげに感じられない。妖怪の宴のように不気味だった。


「なぁんで突然お祭りなの?」


 鼻緒が擦れて血が滲んだらしい足を気にしながら、涙声で優菜が尋ねる。


「前坂君に来てって言われたの。犯人を特定したいみたい」

「えっ。なんで優菜まで? いやだぁ。怖いよ。もしかして優菜たち疑われてる?」

「大丈夫よ、きっと。クラスメートの誰が犯人だったとしても絶対先生に言い渡してやるから」


 萌々は優菜の怯えた表情に、一抹、軽蔑したような色が浮かんだ事に気付かない。

 萌々は犯人は必ずクラスメートの中の誰かで、先生に相談すれば万事解決すると信じている。だから、探偵ごっこよろしく嗅ぎ回っている鷹来がカンに障った。


 子どもにできることはたかが知れているのだから、難しいことは大人に任せてしまえば良いのだ。変になんとかしようとしてやぶ蛇になることの方が危険だとなぜ彼は気付かないのだろう。


 だから、犯人が誰であれ今日こそ鷹来には馬鹿なことをやめてもらおうと意気込んでいるが、妙な胸騒ぎだけは今日の空を覆う雲のように分厚く居座り晴れない。



「ともかく、早く行こう」



 マイペースに正義感だけを突っ走らせて萌々は歩き出す。




 ◆




「お、あれ、お前のクラスのイインチョじゃね?」

「ん? どこ?」

「ほら、あっちの屋台。友だち足痛そうなのに引きずりまわしてる」

「えー。あ、ほんとだ、イインチョだ」


 垣内康一は野球部の仲間と夏祭りに来ていた。毎年恒例で行われるこの町の祭事に、例年通り男友達と来るのは何とも味気なかったがそれでも非日常ハレというのは気分が高揚する。


 それに普段食べないケチャップたっぷりのぶっといフランクフルトとか、鼻孔くすぐるスパイシーなソースを効かせバリッと焼き上げた焼きそばとか、カリッあつっフワッとジューシーなたこ焼きとか、自分のお小遣いから食べたいものを買ってたらふく胃を満たせるのが楽しい。


 友だちと一緒に射的や輪投げの屋台を冷やかすのも何がツボなのかわからないままに面白かった。


「なあ、おれのクラスと言えばさあ」


 橋本萌々は関わるとなんだか面倒くさい。見なかったことに決めて康一は部の仲間へ向き直る。ちらりと腕時計を確認する。午後五時前。


「黒板にヘンテコな殺人予告が書かれてたんだよ」

「うへー。マジ?」

「今時そんなことするヤツいんの?」

「きっもー」

「と、思うだろ。この前人間消失事件あっただろ、それを予告してたんだよ」


 今週火曜日から起きた事件を二割増しに誇張し得意げに説明しながら、康一は罪悪感を打ち消そうと必死になっていた。


 怖い。

 本当に黒板のメッセージと人が消失した事件が繋がっていたとしたら。

 クラス内だけで解決しようとしたことが間違いだったんじゃないか。


 今でもひとりになるとぐるぐる考えてしまう。


 こうやって馬鹿みたいなおとぎ話に仕立て上げ、誰かにそんなの関係ねーよ、ただの偶然と悪戯だよと言われて、それもそうだなと笑い飛ばしてしまいたかった。




 ◆




 お酒が入ったらしい一団が、どっと笑い声を上げた。


 三嶋千佳子と園崎柚は一番祭り囃子が姦しくなる巨大な長胴太鼓がそなえられた盆踊り櫓を正面に、かき氷と綿飴をほおばっている。髪をボブカットにしているのが千佳子、片方に寄せて結んでいるのが柚だ。ふたりとも化粧でめかし込み、気合いを入れた洋服で身を包んでいる。千佳子が膝上丈のワンピース、柚が開襟ブラウスにショートパンツだ。



「にしてもうるさいねー。子どもの声とかげんなりする」

「そお? わたしこういうの好き。なんだか夏ーって感じ」


 かき氷をストロースプーンで勢いよく崩しながら、柚は千佳子の言葉に異を唱える。


「虫に刺されるし暑いし、ムシムシするし、家に帰りたいよ」

「まあまあ。いーじゃんいーじゃん。亜樹が来るの待とうよ。とりあえず男子も呼んでくれたらしいし」

「それがなかったら絶対来てない。亜樹おっそい」


 何となく席が近いからという理由だけでつるみ始めたふたりだったから、共通の趣味も話題も少ない。舞夏も亜樹もいないとき、こうして会話がでこぼこしてしまうのはいつものことだった。亜樹がいてもでこぼこしているが、人数が増える分会話が持続できる。苦笑いで間をつなぎながら、ふと若い杉の木に張られたチラシに目が吸い寄せられた。多分なんでも良いから話のネタが欲しかったのだろう。


「ねえねえ、千佳子、みてこれ」

「んう?」

 手招きすると千佳子が怠そうにしながらも顔を寄せてきた。



 川見不神社 納涼夏祭り七月二三日(土)

 催し案内


 一七時一五分 告白大会

  みんなの好きを叫ぼう! ちびっ子も大人も大歓迎! 参加申し込みは受付まで。


 一八時〇〇分 コンサート

  大物ミュージシャンの生演奏&ソングで盛り上がろう! ゲストにお呼びしたのは今人気沸騰中のジラフ!


 一八時三〇分 人形浄瑠璃と盆踊り。

  みんなで輪になって盆踊りしませんか? 古き良き日本の伝統芸能人形浄瑠璃同時開催。



「ええ、ジラフって何? 柚ちゃん知ってる?」

「知らない。おっかしいなあ、わたしフェスとか番組以外でインディーズもかかさずチェックしてるのに」


 もうほとんど食べきったかき氷をすすりながら柚は首を傾げる。




 ◆




 スタッフ控え室として用意されたテントは空っぽだった。神社の裏手に止められたキャンピングカー目指し、スマートフォンを耳に当てたまま千代田真世はハイヒールで駈ける。木々の間から漏れ聞こえる祭り囃子とそれに興じる人々の声が煩くてよく聞こえない。



「もっと大きい声で喋って!」


 耳に当てた電話の向こうへ叫ぶ。



「すみません! 古藤さんがどこにもいないんです!」

「冗談言わないで! もうすぐ出番なのよ? フラフラいなくなるわけないじゃない。どこかにいるはず。ちゃんと探して!」

「すみません、本当にいないんです!」

「どういうこと?」


 ハイヒールで砂利をうがち蹴散らしながらキャンピングカーにたどり着く。


 そこには発生したトラブルに動揺して右往左往する女性アシスタントマネージャーがいた。今年入ったばかりの新入社員だ。今にも泣きそうな顔で真世の顔色をうかがってくる。


 ええい、鬱陶しい。


 千代田真世は怒鳴り散らしたい気持ちを必死で抑え表面上はどうにか冷静を保った。


「さっき言ったことはどう言う意味か、ちゃんと説明しなさい」

「あああ、すみません、すみません、私の判断が間違ってたんです」

「ごめんなさいは後からたっぷり聞かせてもらうから、状況をさっさと説明して」


 時間がない。そう思うと言葉遣いが乱暴になってしまう。


「すみません。あの、四時過ぎに高校生くらいの子が来て、古藤さんいますかって言われたので、いないってちゃんとお伝えしたんですけど、ちょうど古藤さんが車から出て来てしまって、で、あの、知り合いだったらしくて、で、あの、なんか口論みたいな事して、古藤さんがちょっと席外すからよろしくねって、それっきり」

「くっそう、信治のやつまた勝手に!」


 手にしていたスマートフォンを彼方へ投げ捨てる。

 びくっと小動物のようにアシスタントマネージャーは身をすくめた。


「取り乱して悪かったわね。で、シンはどこに?」


 髪をかき上げ、完全に剥がれた冷静の皮を虚しく被りなおす。


 アシスタントマネージャーは顔面を真っ白にして震えながら答えた。


「すみません、何も教えてもらえませんでした」




 ◆




 風の音以外何もなかった。


 山辺から吹き下ろしてきた風が、次の瞬間方向を百八十度変えて斜面を駆け上って行く。観賞用に造られた庭の木々がその度けなげに倒れる方向を変え、びゅうびゅうという風切り音を鳴らしていた。コンクリートを敷き詰めた地面をどこから転がってきたのか空き缶が音を立てて登って行く。まだ五時前だというのに、当たりはかなり薄暗くなっていた。



「で、どこへ僕を連れて行くつもりだ?」



 背後から投げられた質問は無視して倭は榎水高校の敷地内を目的地へ向かって進む。


 校門前にあるサカキ、ソヨゴ、ハナミズキ、と書かれたプレートの植え込みを突っ切ると、部室棟へショートカットする形になる。風にジタバタと揺れるサカキの間を通るとき、その木の根元に小さなしめ縄が巻かれていることに気付いた。



「どこに連れて行く気か知らないけど、自ら首を差し出してくれるとは、殊勝なことだね」


 クスクスと挑発するようにシンは笑っている。


 倭は口を引き結んだまま正面を見据え、無視を続けた。

 部室棟を過ぎ、その隣にあるコンクリートの弊へ足を運ぶ。ここ数日で忍び込み慣れたプールへの扉を開く。


「ふうん。面白いなあ」

 シンが感嘆の声を上げた。


 コンクリートで固められた階段を一歩一歩上る。髪を嬲る強風の中、粘膜に親しんだ塩素のかおりがとろりと漂ってくる。怖じ気づくな。俺はやれることをやるだけだ。シャツの胸をわし掴んで念じる。


「ねえ、さっき電車から降りた後、駅で友だちに電話してたみたいだけど、何のマネだい?」


「何のマネ?」


 階段の途中で足を止め、倭はシンへ体ごと向き直った。


「今から犯人をぶん殴る。そう言っていたね? まったく話が見えなくてね。僕はこれからライブをしなくちゃならない。なのに君の呼び出しに応じた、そのわけはわかっているんだろ?」

「ああ、わかってる。お前は近原の代わりに俺を殺したいんだろ」

「そうさ」

「お前が一体何者なのか、俺にはわからない。けど、俺だってみすみす殺されるつもりはない」

「生意気を言えるじゃないか」


 シンが腕を伸ばして倭の顎を掴んだ。

 狂ったように見開いた目の中で踊る瞳孔、めくれ上がった上唇で弓なりに愉悦を描く笑み。呼吸が聞き取れそうな程に近く耳元へ顔を寄せ、彼はささやく。


「僕は知ってる。伊比倭、君がどういった出自を背負い、何に悩まされて今まで生きてきたかを、それこそ近原スナオ以上に。


 君の母親から知ったのさ。


 僕は君を障害だと認識すると同時に、生涯下位互換としての運命を背負った悲しいピエロとして生きなくちゃならない君の不幸を哀れんでいる。もし僕が近原スナオではなく君に呼び出されたとしたら、そんな絶望からはなんとしてでも救ってあげただろうに」


 シンの指は不快なくらいに熱かった。

 耳朶に降りかかる呼気も熱く、倭は否応なく思い知らされる。

 彼の身体には生きた血が通っているのだと。

 彼はやはり幻想やあやかしの類ではなく、頭のいかれた生身の人間なのだ。


 シンの手を腕を薙いで振り払い、倭は屈辱に歯を食いしばって耐えた。ギリギリと奥歯が軋みをあげる。



「くだらないはったりを言うな。お前に俺の何がわかる。無駄口叩いてんじゃねえよ」

「無駄口だなんて言われたくないな。僕は今この瞬間に君を殺してしまってもいいのに、君の意向に従って手を出していないんだぜ。面白いショーを見せてくれるって言うからさ。それで、君はここで僕に何をしてくれるんだ?」



 倭はまた一歩階段を上った。自ら死地に立たされる十三の階段を上るような錯覚が、めまいのように襲い来て最上段でたたらを踏む。



「怖いんだろ? 僕に殺されない自信なんてないんだろ?」


 倭の全身が武者震いに震えていた。いまだかつてない興奮が体の芯から上り詰めてくる。


「ああ。後で好きなだけ殺させてやるよ。だけどその前にすることがある」


 プールサイドをざっと見渡した。準備は滞りなく完了している。彼方で空が明滅した。


 三歩遅れてシンが最上段に足をかけた。登り切った先にあるものを見つけ、「なるほど」と頷く。



「あんなもので僕を絆せると思ったのか?」

「絆す? それができるなんて考えちゃいねーよ。言うなら、罪悪感を少しでも減らしておきたいだけだ」


 倭は近原スナオならこうするであろうジェスチャーを脳裏に思い浮かべ、トレースする。


 握り締めた左手の親指を立て、自身の右首筋へ当てる。

 そのまま、


「今から俺は、ここでお前を処刑する」



 真横一文字に引いた。




 ◆




 荷台の長いトラックが走りすぎ、信号が赤から青に変わる。小寺亜樹は上見不神社へ向けて歩き始める。頬にぽつりと水滴が当たったような気がして空を見上げたが、続く二滴目はなかった。



「亜樹、どうしたの?」


 隣を歩いていた舞夏が問う。


「台風、今頃はどの辺なのかなって」

「ああ~。日本には上陸したらしいよ。今四国地方当たりじゃないか?」

「気象庁によると、一五時の時点で高知に到達したみたいだね。今四時半だからそろそろ関西にたどり着くんじゃないかな」


 前坂鷹来の返答を、スマートフォンで気象庁の発信する台風状況を確認しながら秀英が補足した。


「じゃあ、もろにぶつかるかもしれないってこと?」

「そうかも」

「ええ~」


 せっかく頑張って宿題仕上げたのにと亜樹は悔しがったが、台風情報を聞いても舞夏の浮かない表情が変化しないことに気付く。


「舞夏、伊比君がいなくて寂しい?」

「え? ちがうちがう」


 手を振って否定するが、さっきから彼女が何度もスマートフォンを確認しているのは知っていた。気象情報を確認していたのでないなら、考えられるのはひとつしかない。今この場にいない倭のことだろう。


「ごめん、後から来るって言ってたんだけどな、あのやろう。今どこにいるのか連絡取ってみようか?」


 前坂鷹来がズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。

 同時に何かメモのようなものがはらりと落ちた。

 亜樹が拾おうとするより先に舞夏がそれを拾い上げる。


 自身のスマートフォンからラインを前坂鷹来が立ち上げたとき、高めの電子音が鳴って着信を知らせた。


「おお、噂をすれば。はい、もしもし、伊比? 今どこにいるんだ? は?」


 電話で何を言われたのか、彼の顔がにやけたものから無表情へと引き締まる。眉根が寄り、声も低くなる。


「殴るって、なに言って……。いや、誰かはまだ教えてくれなくていい。今どこにいるかだけ教えてくれ。オレもそっち行く。約束しただろ」


 電話を終えるなり前坂鷹来は亜樹達へ向けて合掌のポーズを作った。

 勢いよく打ち合わされた柏手の音が、湿った空気を鈍く叩く。


「わりぃ。オレと伊比は用事できたから、浅岡達だけで楽しんでくれ。間に合えば後からオレ達も参加する」

「ちょっと何があったのか事情くらい」

「前坂君、今日の予定は、僕がやっておくよ」


 亜樹の抗議へ浅岡秀英が割り込んだ。


「無理そうだったら延期しても良いんだぞ」

「ううん、せっかく協力して貰ったのに、延期するわけにはいかないよ。僕だけで大丈夫」

「そうか……すまん。オレはどうしてもあいつの傍にいてやらないといけないんだ。何かあったら、いいや、何もなくても全部オレのせいにしていいから。ごめんな、大事なときに逃げるようなまね」


 しきりと謝る前坂鷹来に対して浅岡秀英は首を振った。


「ちっともかまわないよ。前坂君は最初からそれが目的だったし、僕も最初からこれが目的だったから。それがどれだけ大事なことかはわかってる」

「本当にスマン」


 何のことを彼らが話しているのか、亜樹には全く見えてこないし想像もつかない。

 わかるのは、何か緊急事態が発生したと言うことだ。


「じゃあ」


 そういうことだから、と前坂鷹来はきびすを返し亜樹の制止も聞かず来た道を走っていった。


「もーなんなのよ! いきなり。ねえ、舞夏も思うでしょ」


 頬を膨らませ遠ざかる前坂鷹来の背中から舞夏へ目線を転じると、彼女も思い詰めたように真っ青な顔をしていた。


「舞夏?」


 彼女の身体がふらりとかしぐ。

 どうして、とその唇が動いたように見えた。

 彼女の手にはさっき拾ったメモのようなものがある。

 くしゃり、と白い手がそれを握り潰した。


「亜樹、ごめん。私も行かないといけないところが出来た。たぶん、戻って来れないと思う。亜樹だけになっちゃうけど、もしいびっちか前坂君が戻ったら、私は先に帰ったって言っといて」

「それはいいけど。どうしたの、突然」

「ごめん、今は説明できない。いつか、ちゃんと話すね」


 前坂鷹来のように走ったりはしないが、彼女も相当気がせいているのか、足早に川見不駅へ向かって戻っていった。虚無を見つめる真っ暗な瞳だけが亜樹の網膜に残っている。



「舞夏のあんな顔、初めて見た」


 もっと言えば、前坂鷹来があれほどに焦っているのも初めてかも知れない。今何が起こったのか、うっすらと事情を知っていそうな浅岡秀英ですら説明してくれないから、悔し紛れに地団駄を踏んだ。自分だけが取り残されたように感じる。


「あはは、小寺さん、僕たちだけになっちゃったね」

「なっちゃったね、じゃない! あんたは何も思わないの?」

「思うもなにも。どうしようもないよ」


 小首を傾げて宣う浅岡秀英が憎たらしい。その頬を張り倒してやろうかと思う。


「殴って気が済むなら、何度でも殴って良いよ。でも今は待って。とりあえず、僕たちだけでもお祭りに行こう」


 浅岡秀英の手が振り上げた亜樹の手首を掴む。予想外の強さで腕を引かれてバランスを崩した彼女は、そのまま引きずられるように歩き出すしかなかった。


「もう、みんなして、なんなのよ」


 呟いて口を尖らせる。

 自分のあずかり知らないところで何か大きなものが回り始めているような気がした。

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