真譚・妖怪小町

雨後の筍

真譚・妖怪小町

全てが始まる前

 誰かはそれを嘘だと言ったけれど、結局根付いてしまったものを変えることは誰にも出来やしなかった。




 昔から人々は夜を恐れていた。

 なぜなら夜闇に対して本能的に恐怖を覚えていたからだ。

 人は未知のものに不安を抱く。

 夜闇は一例に過ぎない。

 見たことのないもの、確認できないもの、知ることのできないもの、こちらの認識を超えるもの。

 だが人々はそれらを克服してきた。

 夜闇を光で打ち払い、獣を火で打ち払い、そして世界を算術で解き明かしてきた。

 知らないものは少なくなり、予想できないものもまた少なくなり、そしていつしか未知は未知ではなくなった。

 だからだろうか、いつからか人々は畏れを忘れ始めた。

 がそれを許すはずもなかったのに。

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