イスカリオテの湯葉、という作者名を最初に見た時、太宰治の『駈込み訴え』のラストを思い浮かべたのですが、まさか『走れ●●●』(プライバシー保護の観点から伏せさせていただきます)が出てくるとは。全体的に、星新一的な肩肘張らず、しかしとことん自由で楽しい文系SFを楽しめます。文体への意識の高さは星新一以上かも。
違和感というのは悪い意味ではなく、不自然ではあるが不恰好ではないというか、とにかくいい意味。それぞれの作品にそれぞれ違った味があって読んでいて飽きない。
個人的には異世界がツボでした。
いわゆる一行目のツカミと最後のオチが短編では重視される部分かと思いますが、ツカミの部分からの展開がとても綺麗だなという印象を受けました。あくまでも日常の半径一メートルくらいにとどまっているツカミの…続きを読む
王道的SFの風格とシャープな発想が融合し、骨太な技量で粒子の如くきらめく発想を支えた、まさしく横綱相撲な作品。安心できつつピリッとしたこの味わいは御見事の一言、圧巻です。
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