第45話

「さっきのデュアルソングって一体なんだったんでしょう……」


「わ、分かりませんの。ミラコンにもそんな情報載っていませんわ」


「私まだプリンセスモードになったことなかったり……あまり歌姫のこと分からないかもって」


「わたくしだってまだ一度だけですの。ううむ、謎なシステムですわ」




 二人でうーん、と唸りながらミラコンを弄っていますと、




「あ、いたいた。二人ともどうしたのよ、遅いじゃない」


「こんにち……ばんは」


「あははっ、現実世界だと夜なのにMROだと朝なんだもんねー。この感覚あんまし慣れないや」




 三人が近寄ってきましたわ。




「ママ~っ、会いたかったですぅ」




 ふわふわとシャノンも空から舞い降りたところで、デュアルソングや絆値ボーナスについて訊ねてみましたの。


 すると、シャノンは首を傾げて、




「しらねーですよぅ、そんなシステム」


「ええっ!?」


「知らないって、シャノンちゃんはMROのこと何でも知ってるんじゃなかったの?」




 珍しく驚いた表情のみやかに、




「って言われてもですぅ。もしかしたら新しくアップデートで追加された仕様かもしれねーですぅ」


「ああ、そういえば確かに今日はログインするのに時間かかったかも。って言っても一分多いかな? くらいだけど」


「それですぅ。アップデート後から丸一日くらい経たないと情報は共有されねーんですぅ」


「情報共有?」


「ですですぅ。しゃのや、てぃえはみんなでゲーム内情報を共有してるんですぅ。それが伝達されるまではちょっとラグがあるんですぅ」




 そういえば、魔法少女はすでに二人いるのにとか言ってましたわね。


 だとしたら、もしかして。




「シャノン、デバッファーはあれからわたくし以外で現れましたの?」


「んーん。ママ以外誰もいないですよぅ」




 うう、まだわたくしだけなんですの……。




「えっ、歌雨さんだけなんですか?」


「こんなにたくさん人がいるのに。びっくり、かも……」




 目を丸くして驚くいおさんとれいらさん。


 ああ、そう言えばまだ言っていませんでしたわね。




「でもさー、確かにデバッファーは不人気だと思うわよ。ころころ変えられるシステムならいいけど、今んところ選んだら一生もんでしょう? そりゃ、無難なアタッカーやヒーラーを選ぶわよ」


「むいのディフェンダーもまぁまぁいるみたいだね。盾役はやっぱりこれを選ぶみたい」


「バッファーも少ないとはいえ、いるみたいですし……。でもまあ、そのお陰でコレがたくさん手に入ったんですの!」




 手に持ったキラキラのチケット。


 メロMROガチャチケットを取り出したわたくしに、みんなもミラコンを操作して取り出しましたわ。




「ひいふうみい……って、あたし六枚しかないわよ。あんただけ数多くない?」


「ふっふっふ。デバッファープリンセスへの変身一番乗りのボーナスみたいですの!」


「そりゃ、一人しか居ないからそうなるわよね……」


「……アタッカーの一番乗りはもうすでに終わってそう」


「むいのディフェンダーもきっと終わってるだろうなぁ。うう、ななよちゃんいいなあ」


「ねぇねぇ、みなさんどうせなら一緒にガチャしちゃいませんかにゃ?」


「さんせーい!!」




 わたくし達は雑談しながらガチャ会場へ向かいましたの。


 それは教会のような場所にあったのですが……うわ、すっごい盛り上がりですの!




「あーん、悔しい~! またSRストーンだったわ」


「石だっただけまだマシじゃん、あたしなんてSSRショートソードだよぅ」


「追加効果次第でまだ……ああ、料理スキル+2か」


「完全に大外れだよ~! ばたんきゅう~」


「ほら、メロガチャチケットの補助券が七枚あるよ。起きてもっかい回すのよっ! 目指せ、XR!」


「出ないよそんなの……確率1%もないじゃん」




 ガヤガヤと笑い声や嘆きの声がひしめき合っていますの。


 ある意味楽しそうですわね……。




「なんだか異様な雰囲気ねぇ」


「えーっ、そっかなぁ? むいはとっても楽しそうだなって思うよ!」


「……むいむい系はこういうの好きかも」


「えっへへー! いやあ、照れますなあ」


「それ、多分褒めてねーですわよ……」




 ともかくサクッとガチャりましょう。


 列に並んで……あら?




「もしかして防具屋のマリィさんじゃありませんの?」




 見覚えのある三つ編みに、メガネとそばかすのちっちゃな女の子。


 武器屋ミリィさんの妹さんですわね。




「あっ、もしかしてあちしを助けてくれたピースさんでちか?」


「そうですわ、お元気そうでなによりですの」




 アンチコンフュを飲んだのかすっかり戻っているみたいですの。




「そのせつはありがとございまちた!」


「いえいえ。ご丁寧に、こちらこそ」




 コンフュ状態のときはなんだかチャラい子でしたが、とっても素直で可愛らしいじゃありませんの。


 ニコニコとしていると、




「あ。もしかしてガチャ希望でちか? それならマリィのところが空いてるでち」


「え、いいんですの?」


「ほんとは休憩時間でちが、ピースさんには恩があるでち! あちし、恩返しするでちっ」


「まあまあ。ありがとうございますのっ!!」




 後ろでわたくしを待っていたみんなに事情を話すと、




「やったー、ラッキー!」


「やっぱクエストはこなしておくもんねぇ……」


「……エリアボス三体撃破、すぐにギルティメイズ直行。私たち早足なのかも」


「考えてみればたしかにそうかもしれませんね~」


「でも、だからって言って今日は他のクエストをやるつもりは無いわ。ギルティメイズの日よっ! ってことで、有り難く回させてもらいましょ。いやぁ、ななよ様様だわ」




 悪そうな笑顔でマリィさんのもとに向かうみやか。


 わたくし達もすぐについて行きましたの。

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