第16話

「ええと、ちょっと待ってくださいまし……」

 

 ううっ。お二人のキラキラとした視線が痛いですわ。

 多分、ステータスを見ただけではわたくしがウェザー・キング5鯖の元第1位だったとバレないはず……。

 意を決してステ画面を見せてやりますの!


「はい! こ、これがわたくしのステータスですわ」


 名前:ピース

 称号:無し

 クラス:『ブラッディウォーリア<戦士>』 LV.1

 サブクラス:『デバッファープリンセス<弱体>』

 HP<ヒットポイント> 50/50

 SP<スキルポイント> 20/20

 MP<マジックポイント> 0/0

 STR<腕力> 43

 DEF<耐久> 10

 AGI<俊敏> 5

 MAG<魔力> 0

 DEX<器用> 5

 LUK<幸運> 0


 『装備』

 服:流山女学院中学校の制服

 左手:※装備されていません

 右手:※装備されていません

 腕:※装備されていません

 体:※装備されていません

 足:※装備されていません

 アクセサリー:※装備されていません

 指輪:インペリアルトパーズリング LV.1


 総攻撃力:43 <限界9999>

 総防御力:10 <限界9999>

 総回避力:0 <限界999>

 総致命力:0 <限界499>


 所持マニラ:74万M


 ……ホッ。ちゃんとお金の引継ぎはされていましたわ。

 なんて、内心安堵していますと、


「ふあぁあ。ななよちゃん、本当に引継ぎしなかったんだ」

「武器もカードも引継がなかったなんて……もったいないわねぇ。もしかして引き継ぎ忘れてたってオチじゃないでしょうね?」


 わたくしのステータス画面を食い入るように見ているお二人。


「い、いえ。わたくしゲームの二週目は強くてニューゲーム派ではなくて、データを消してまた初めから縛りプレイで遊ぶ派ですの」

「むむむい……し、縛りプレイって、なあに?」

「そういえば、むいってあんまりゲームしないんだっけ。縛りプレイっていうのは、ゲームに有利な武器とか魔法を使わないで遊ぶってことよ。要は自分でルールを作るって感じかしら。難易度あがってやり応えあるみたいだけど、あたしは性に合わないわね。やっぱ、二週目は全部を引継いで敵を瞬殺! あたしつえええええ!! しなきゃ損よ、損」


 みやかが金髪を指でクルクル弄りながら説明すると、むいはパンッ! と両手を合わせて、


「あ、そっちの縛りかあ。あははは! むいもみやかちゃん派かなー。縛ったら絶対クリアできそうにないもん。ゲーム苦手だし」


 一体なんの縛りと勘違いしていましたの……。

 それはともかく、わたくしだって引継いで無双したい派ですわ。縛りなんてよっぽどのドMしかしませんの。

 でも、あんなゴツい神器斧を装備しちゃったら一発でバレちゃいますわ……。だから、しょうがないですの!


「あー美味しかった!」


 最後のパイナップルを食べ終えると、立ち上がってぐいーっと伸びをするみやか。

 彼女を見上げて、わたくしもバナナのラスト一口をほお張りましたの。

 その瞬間、串も一緒に消えていきましたわ。ふぉおお、やっぱりここはゲーム世界なんですのね……忘れちゃいそうになりますのっ!


「よっし、んじゃさっそく最初のクエストをサクッとやっちゃうわよ! いい、二人とも?」


 えっへんポーズでわたくし達を見るみやかに、


「はーいっ」

「おーっ、ですわ!」


 元気いっぱいに拳を上げて答えますの。


「ええと。確か……ウルフを30匹倒すんでしたっけ」

「うん。街の外にいるみたいだよー」

「んじゃ、いくわよ」


 肩で風を切りながら街の外へと歩いていくみやか。

 なんだか貫禄ありますわねぇ……さすがは第2位ですの。


「うっひゃあー……」


 外に出たとたん、スキル発動エフェクトの嵐!

 魔法もそこら中に飛び交ってますの。

 最初のクエストだからでしょうか、たくさんのウルフとプレイヤー達が戦っておりますわ。

 それにしてもなんですの、このウルフの数……1000匹くらいいそうですの!!


「ふんっ。ザコが何匹いたところで……っ! あたしの可愛い『火蜂』ちゃんで撃ち燃やしてやるわっ!!」


 なんだかとっても悪そうな笑顔でみやかが手を空にかざすと、


「さあ、出て来なさい……。あたしの火蜂ひばちィ!!」


 凄まじい羽音とともに、青い炎に包まれた巨大な黒蜂が飛んできましたの!

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