4 『やっぱりお兄ちゃんには私がいないとダメみたいだね!』
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幸一は自分の部屋に行き、ノートパソコンの電源を入れた。パソコンが完全に起動したのを見計らって、今度はワードソフトを立ち上げた。
新イベントの企画書を作成しようとしたが、一ページに『伊河市観光イベント企画書』と書いたきり、キーボードを打つ手は止まってしまっていた。ただ真っ白な画面と睨めっこしても埒があかない。
何かアイディアを得ようとネットサーフィンしては時間だけが過ぎていき、気が付けば日が変わっていた。
「ダメだ。全然アイディアが思いつかない」
煮詰まって頭を抱えては、自分は苦しんでいるというポーズを取ったとしても、何かが解決される訳ではなかった。
「なんで、こんな事をしているんだ」
と、ボヤキとため息を吐いては、おもむろにテレビのリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。
息抜きの気分転換と良いアイディア案になるものが有ればと藁をも掴む思いで、チャンネルを切り替えていると、あるアニメが放映されていた。
そのアニメは、可愛らしいキャラクターが登場しては、簡単に下着や肌を露出していた。いわゆる萌えアニメというものだったが、幸一はそういうアニメには詳しくなかった。
アニメを観るとしても、スタジオジブリ作品ぐらいなもの。子供の頃は、ドラゴンボールやガンダムなどを観ていたが、流石にこの年齢(二十八歳)にもなると、アニメとかは見向きもしなくなっていた。
「へー。こんな時間にアニメなんかやってるんだ」
暫く観ていたが、ただ女性キャラクターが沢山出てくるだけで、何も意味も感じられず、面白くなかったので、チャンネルを切り替えようとした――その時だった。
『お兄ちゃん!』
テレビから聴こえてきた声を聞いた瞬間、チャンネルを変えようとした指が思わず止まる。その声に聞き覚えがあったからだ。そして、その声を発したキャラクターを探す。
『もう相変わらずバカなんだから。やっぱりお兄ちゃんには私がいないとダメみたいだね!』
声の主は、ピンク髪の少女のキャラクターが喋っていた。
「美幸?」
その声は、幸一の妹――美幸の声にソックリだったのだ。
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