第十六話:迫る脅威は海のみにあらず

 流狼達が絶望的な戦闘を終えてから四日後。

 ヘレニセーラ二世号は何とかグロウィリア公国北西の軍港に辿り着いた。

 魔獣による船体の被害は思った以上に深刻であったらしく、もう少し戦闘が長引いていれば廃船もやむなし、あるいは轟沈もあり得たと言われて流狼の背筋は少なからず寒くなったものだった。

 打撃よりも、海中で押さえつけられていた間の損傷が深刻であったというから、船長と船員達の陰ながらの努力がどれ程のものであったか察しがつくというものだ。

 ともあれ、魔獣の撃破後は大きな事件はなく、ようやく地面に降り立った流狼は大きく安堵の息をついた。張り続けていた緊張の糸が切れたのだ。

 船の被害もだったが、騎士団の被害も大きい。

 機兵の損耗が十五機、死者が十八名。

 全ての被害は魔獣との戦闘で生じたものなのだが、海上であれだけの規模の魔獣と戦った被害として考えれば破格の少なさであったという。


「ルルォ殿、心より感謝する」

「俺ではなくミリスさんのおかげですよ。あのまま続けても勝てたとは思わない」

「ご謙遜を」


 騎士団長のデュノーは上機嫌だったが、言葉は本心だった。

 あれだけの訳の分からない生態だ、頭をたとえ全て潰したとしても、それが急所であったかと言われると断言出来ない。

 ベルフォースの狙撃でその点は有耶無耶になったが、流狼としては感謝される程の事ではないと思っている。その場に居合わせた者としての最善を尽くしただけだからだ。


「それはともかく、亡くなられた勇士達に哀悼の意を。彼らの尽力がなければ、俺たちだって海の藻屑となっていたかもしれない」

「……その言葉に、彼らと、その家族らに代わって感謝申し上げる」


 論ずるまでもない事だが、騎士達一人ひとりに家族がいる。彼らは国に、ひいては家族に累を及ぼす恐れのある海の魔獣と命の限り戦い抜いた。

 その意味では、デュノーや生き残った騎士達が死んだ十八人の立場になっていても何の不思議もなかった。それは流狼も例外ではない。

 今更ではあったが、流狼は自分が招かれたこの世界が、何とも危険と隣り合わせの環境である事を強く理解した。

 機兵という鎧があろうと、荒れ狂う環境や暴悪な外敵に対してしまえば人は容易く死に得るのだ。

 生き延びる為に万全を尽くす。万全を期してなお力尽きる時が来るならば、その時自分はその敗北を受け入れる事が出来るだろうと信じて。

 そのように流狼が決意を新たにしていると。


「……貴殿が拳王機の乗り手殿か?」


 横合いから声をかけてきたのは、金髪の男だった。

 服装は質素なものだが、着崩れていないことと顔立ちの端正な事から相応の立場にある人物だろうと察せられる。


「ええ、その通りですが」

「ソルナート様!」


 答え合わせの必要はなかった。デュノーが跪いて述べた名前は、この国の大公と同じだったからだ。


「ああ、デュノー。役目大儀。よく戦ってくれた」

「はっ!」

「だが少しばかり融通が利かないな。そなたが私の名を言ってしまった事で、彼に私が誰であるかを問う楽しみがなくなってしまったよ」

「は、それは申し訳なく」

「冗談だ」


 デュノーで一通り遊んだ後で、ソルナートは流狼に向き直った。

 柔らかい表情で口元には笑みを浮かべているが、そこに心情が乗っているようには見えない。


「と言う訳で、グロウィリア公国大公、ソルナートだ。娘達を護ってくれて有難う」

「拳王機アルカシードの乗り手、ルロウ・トバカリです。よろしく」

『ボクがどういう存在か分からない訳はないね、ソルナート。アルだ』

「ル……ルルォ殿とアル様。親しくお話をさせていただきたいのは山々だが、此度は我が騎士達を慰撫しなくてはならない。またエネスレイクでお会いした時には是非」

「分かりました。転移陣の準備が終わったら俺もエネスレイクに戻ります」

『マスターを殿と呼ぶなら、ボクを様と呼ぶ必要はないよ』

「了解した。それでは案内させよう」


 側近の一人が頷き、流狼に深く頭を下げる。

 その後に続いて歩き出そうとする流狼の肩で、アルがソルナートに声をかけた。


『ソルナート。二つほど伝えておくよ。あの魔獣は陸生の性質を持っていなかった。そして、異様な程に腹を減らしていたようだった。何故だろうね?』

「ふむ。生息域から逃げてきたと。ヘレニセーラ二世号をあれ程に傷つける事の出来る魔獣が」

『ボクもそう見る。準備はしておいて困る事はないだろうね』

「重要な情報、痛み入る」


 思い返してみれば、あの魔獣は陸上で生活出来る体型ではなかった。

 下半身に無数の触腕が生えていたとはいえ、それが陸上であれだけの巨体を支え切れるとは思えない。

 色々な生き物が足し引きされたような奇妙な生物だったが、自重を無視出来るほど常識外れな生物ではないだろう。

 海中でしか生きられない生物で、しかもあの巨体だ。本来は同種の食い物が多数生息する棲息地から離れようとは思うまい。

 それが餓えてでも近海に現れた理由は。推測の域を出ないが、ソルナートはアルの言葉に何かを察したようだった。


『じゃあ行こうか、マスター。エネスレイクのみんなが心配しているよ』

「ああ。……それでは」


 特に話す必要も感じなかった流狼は、そのままその場を後にする。

 ソルナートもこちらに視線を向ける事はなく。

 流狼と大陸屈指の大国であるグロウィリア公国の大公との最初の邂逅は、こうして周囲に何らの感慨も齎すことなく終わった。






 帝国にエネスレイクからの国王と第三妃との婚儀の招待が届いた事で、帝国の上層部は今度は出席者の選定に頭を悩ませる事となった。

 まず皇帝をはじめとした皇族の出席は見送られた。それだけ帝国のルナルドーレに対してのアレルギーが酷かったとも言える。

 挙式は二十日後。既に外せない公務が予定されている者も多かった為、それ以外の者という条件となったのだが、会議は紛糾した。壮絶な押し付け合いが生じたのである。

 最終的には宰相が皇帝の名代として、軍務とは関連のない大臣が三人正使として選ばれのだが、四名の顔色は総じて良くない。

 無論護衛は実力と人格を兼ね備えた人物が十二人選ばれる事となり、アルズベックは自身の手勢から二名の人士を派遣する事とした。

 アルズベックは執務室に、その内の一人である志度宗謙を呼び出していた。


「ソウケン。話というのは他でもない」

「王機兵の乗り手ですか」

「話が早くて助かる。リューラには懐柔を命じた。従弟だそうだ」

「なるほど、そうでしたか。ここの所、塞いでいるようだったので心配していたのですが」


 宗謙が龍羅を気に入っているのはアルズベックも知っていた。同時に招かれた妹の婿に迎えたいと思っているとも聞いている。

 妹の海奈も乗り気であるようだが、龍羅は元の世界に婚約者が居るからと色よい返事をしないのだと。


「王機兵の乗り手は殿下の奥方様と、元の世界で恋仲であったと聞いておりますが」

「……その通りだ」

「奥方様を手放してでも乗り手を手に入れるお心算で?」

「その心算はない」

「悪手ですな。実に悪手だ」


 宗謙の言葉に、アルズベックは苦い顔を隠さなかった。

 実に無礼な物言いではあるが、宗謙の忠義に対して疑う所はない。


「だろう、な」

「本気で懐柔なさるつもりであれば、殿下が取り上げたものを返して謝罪をなさるべきであると存じますが」

「頭くらいはいくらでも下げる。殺そうとしたのは事実だ。だがヒヨは渡せん」


 アルズベック自身、最も良い手段は何であるかは理解している。

 しかし、その為に陽与を手放そうという気持ちはないのだ。我儘だとは思うが、譲れないものはある。

 アルズベックは、自分が『エネスレイクの王機兵の乗り手』を殺すべきと思うその心が陽与絡みの嫉妬や独占欲から来ているのか、国家への危機感からなのかは断言が出来ずにいた。

 宗謙は察したかのように鷹揚に頷いた。


「となると、懐柔策は失敗に終わるでしょうな。……ああ、そういう事ですか」

「頼む」

「使って良い手勢は」

「あまり多くは用意出来ない。日数を考えると、リエネスに元より潜伏している者しか動かせないだろうから……十名と言ったところか」


 現在、帝国とエネスレイクとを直通で繋ぐ転移陣は存在しない。北西の天魔大教会領に存在する転移陣を通じての移動となる為、転移での移動は足がつく。

 帝国が王機兵の乗り手を暗殺したと知られれば、エネスレイクとは即時開戦となりかねない。

 その排除について皇帝からの下知を受けているアルズベックではあったが、今が適したタイミングでない事は理解していた。

 帝国は現状東進が大目標だ。背後に敵をつくる訳にはいかない事情もある。

 しかし、公然と人を派遣でき、しかも多くの国から要人が集う今回の婚儀は最大のチャンスでもあった。


「リューラもお前も、私と帝国には必要だ。好機ではあるが時機ではない、と言おうか。私はむしろリューラがあちらに逆に懐柔されないかどうかが心配なのだよ」

「御意。では私も乗り手の暗殺よりも、龍羅君を連れて生きて戻る事を最優先と承りましょう」

「頼む」


 アルズベックが頭を下げると、宗謙は笑みを浮かべた。

 その笑みは見る者を安心させるだけの強い自信を湛えていて、アルズベックの心も落ち着いてくる。


「殿下にとって最良か、次善の結果をご報告する事をお約束致します」







 転移陣は大小二つの円と、その間に刻まれた魔術文字によって構成されている。

 魔術文字と魔術文字の間にはいくつか窪みがあって、そこに宝玉を入れる事で他の転移陣と転移陣同士を繋ぐ事が出来るようになる。

 この転移陣に空いている窪みはひとつ。元々はここにも宝玉が入っており、今はエネスレイクの転移陣のひとつに入っている。

 まだ宝玉が入っていないという事は、持ち主がここにいないという事でもある。

 待つことしばし。転移陣が瞬いて、その中央にミリスベリアが現れた。


「ルルォ様! お待たせしました」

「お疲れ様、ミリスさん。手間を取らせて悪いね」

「そんな事。……戦乱が終わり、再びお会い出来る事を楽しみにしています」


 その言葉に、流狼も大きく頷いた。

 帝国との戦争が続く限り、ミリスベリアがグロウィリアを離れる事はもうないだろうという事が分かっていたからだ。

 エネスレイクと帝国との関係は友好よりの中立国だ。戦争にも参加していない以上は、ミリスベリアにかけられる言葉はあまりない。


「俺も楽しみにしているよ。大きな借りが一つ出来てしまった。何かがあったら言って欲しい。いつでも手を貸すから」

「……そんな事を軽々に言うものではありませんよ、ルルォ様」

「命の恩だ。軽々しく言っている訳じゃない。ルビィ、ミリスさんは遠慮深いようだ、彼女の為になるのであれば、そちらの判断で構わないよ」

『ああ、分かったよ。……アル、しっかり手綱を絞っておきな』


 視線をミリスの肩に座るルビィに向ければ、ルビィは頷きながらも呆れたような言葉を返してきた。


「どういう意味だ?」

『言葉通りの意味だよ、マスター。次から次へと、ややこしい約束をするんだからもう……』


 呆れているのはアルも同様だったようだ。

 どうやら味方は居ないらしい。軽く肩を落とすと、角度が変わってずり落ちそうになったアルが慌ててしがみついてきた。


『うわぁ!?  危ないよマスター!』

「ふふっ。ではルルォ様、これでエネスレイクの転移陣と繋がりました。ご健勝をお祈りしています」

「ありがとう、ミリスさん。……痛い痛い、アル! 一旦降りてから乗り直せ!」


 ミリスベリアが転移陣に宝玉をはめ込むと、緑色の輝きが一度、二度と転移陣から放たれた。

 流狼は腕をよじ登ろうとして指を食い込ませるアルを引き剥がし、一旦地面に降ろした。

 何とも締まらない別れではあったが、流狼は再び肩に飛び乗ったアルに転移陣を起動させたのだった。

 笑顔で手を振るミリスベリアに、手を振り返す。

 その姿が見えなくなってすぐ、見慣れたエネスレイク軍港の様子が視界いっぱいに広がったのだった。






 突然のエネスレイク王国への訪問と、それに伴うアルズベックからの密命。アルズベックの用意した集合住宅のエントランスで、龍羅は宗謙を待っていた。

 龍羅と宗謙、そして宗謙の妹の海奈達に用意された集合住宅は、部屋の一つひとつが豪邸と呼べる規模の大きさである。良い暮らしを提供するという言葉に嘘はなかったが、同じ立場の『招かれ人』の中でも既に暮らしに格付けが存在し始めていた。

 魔術と機兵操作に高い適性のある龍羅、機兵操作の適性では龍羅を圧倒する宗謙、そして海奈は圧倒的な魔術の素養。

 既にクルツィア以外の王機兵も乗り手が決まったと聞く。アルズベックの研究や王機兵周りの役割に関わらなかった者とは顔を合わせる事すらなくなった。

 自分は運が良かっただけだ。この国で生きるには、常に自分が使える人間である事を証明し続けなくてはならない。


「やあ、龍羅君。待っていてくれたのか」

「ええ。海奈さんは部屋の中でお帰りを待っていますよ」


 しばらく帝都を留守にするからと、海奈を交えて三人で外食の約束をしていたのだ。

 戻ってきた宗謙は笑みを浮かべているが、龍羅はその表情を見てアルズベックが彼に何を命じたのかを理解した。


「宗謙さん。殿下から流狼を殺せと命じられましたね」

「流狼というのは?」

「ああ、殿下も知らないのでしたね。従弟の名前です」

「……ふむ、驚いたな」

「宗謙さんは分かりやすいですから」


 苦笑いを浮かべる龍羅に、宗謙もまた誤魔化せないと理解したようで頷きを返してきた。


「その通りだ。君が懐柔出来なければ殺せと」

「やはり」

「それにしては動揺が少ないな。従弟を殺せと命じられたらふつうは驚くか不信を抱くと思うが」

「既に不信を抱いていますからね」

「それは……」


 龍羅の言葉に、宗謙が眉根を寄せる。誰が聞いているのかも分からないのだ。その感情を理解し尊重しつつも、皇子を批判する言葉を吐く龍羅を心配するのが宗謙という人間である。

 だからこそ、龍羅もまた笑みを見せた。


「従弟の恋人を目の前で奪われたのですから。信用も信頼も寄せられないのは当たり前の事だと思いますよ」

「しかし、殿下は我々に十分報いてくれているだろう」

「大陸統一の暁には、元の世界に戻る術を研究すると奥方様に約したと聞いています。一刻も早く、僕は元の世界に戻りたいので」

「……海奈では駄目か?」

「駄目と言うか。僕は婚約者に別れを告げる事さえ出来ませんでしたから。彼女は僕が死んだという確証でもない限り、待ち続ける人です。心残りがある以上、その言葉に応える事は互いにとって良くないと思います」


 これもまた、幾度目かの問答ではあった。

 平行線を辿ると理解している宗謙が話を切り上げるのが常だったが、主題が違う事から今回は龍羅が話を切り替えた。


「流狼の懐柔は無理でしょう。手勢は?」

「十名ほど。エネスレイクの首都に潜伏させている者達の総勢だというが」

「手伝うつもりはありませんが、成功率は良くて二割と言ったところですね」


 溜息をつく龍羅。

 今度こそ驚いた顔になる宗謙に、龍羅は笑みを苦いものに変えた。


「流狼を暗殺するのは難しいと思いますよ。僕の顔を見た時点でその辺りを警戒すると思いますので」

「……何故だ? 身内なのだろう?」

「身内だから……袂を別った身内だから、ですよ。顔を合わせれば僕が懐柔の為に派遣された人間だと気付くし、失敗したら今度こそ殺せと言われているだろう事も察せるでしょう」


 その言葉に、宗謙も納得したようだった。

 渋い表情のまま、呻く。


「そうか、そうだな。……流石にエネスレイクの者の前で暗殺する訳にはいかないからな」

「ええ」


 宗謙の推察はある意味で正しい。普通に考えれば、暗殺の意図に気付けばエネスレイクの誰かの目がある場所から動かないのが当然だ。

 命を狙っている確たる証拠がないから、こちらが捕縛される事もないだろう。どちらも動きのないまま婚儀は終わり、エネスレイクを出てしまえば失敗に終わる。

 恐らくそのように宗謙が判断しただろう事が分かっていたので、龍羅もまた頷くに留めた。


「……流狼がそんなに大人しいとは思えないけれど」

「ん、何か言ったか?」

「いえ。そろそろ海奈さんが我慢の限界なんじゃないかな、と」

「おっと、まずい!」


 ぼそりと呟いた一言は、宗謙の耳は届かなかったようだった。

 慌てた様子で自室のドアに取りつき、恐る恐るノックする宗謙を微笑ましく眺めながら、龍羅はもう一つ呟くのだった。


「本家を超えるにはいい機会なのかもしれないな」







 十日ぶりの王都リエネスは、今までにない賑わいを見せていた。

 二十日後に迫ったディナスとルナルドーレの婚儀に向けた準備が進んでいる為だ。

 流狼はその様子を視界の端に収めながら、城への道を急ぐ。

 ディナスへの帰参の挨拶を済ませれば、彼はヘレニセーラ二世号が魔獣に襲撃された事を既に知っていた。


「ルウ殿もミリスベリア殿も、ご無事で良かった」

「王機兵の力の一端を見ました。凄まじいものですね」


 流狼はベルフォースの一撃が魔獣を消し飛ばす様を目の前で見たのだ。超長距離の狙撃もさる事ながら、魔獣だけを撃ち抜いて近くを航行する船に大した損害を及ぼさなかった威力調整の精密さも。

 アルカシードに寄せられる期待が何故これほどに大きいのかを、流狼はベルフォースの一撃を見てようやく真に理解出来たのかもしれなかった。


『ところでディナス、伝えておきたい事が』

「まあ、土産話はまた後にでも。ひとまずフィリアに無事な顔を見せてあげてくれ」

『……そうだね、こちらは後で話しても構わないか。行こうマスター』

「ああ」


 流狼はディナスの前から辞すると、その足で主君であり上司であるフィリアの元に向かう事にした。


「ああ、お帰りロウ。随分とお楽しみだったようだな」

「いや、その。無事に戻りました」


 しかしそこで待っていたのは、十日もミリスベリアと船旅を楽しんでいたとして、得体の知れない不機嫌を余すことなく表情に乗せたフィリアだった。

 流狼は彼女の機嫌を取り戻す為に、その後二日ほどを費やす羽目となる。

 そしてそれが終わった後は、ルナルドーレへの歓迎ムードに不機嫌と怒気を存分に貯め込んだオルギオが待っていたのだ。


「何で俺が」


 オルギオを――冷静さを失って与しやすくなっていた事も手伝って――物理的に何とか沈黙させた後。

 流狼は何とも疲れ切った声でぼやいた。

 機嫌を損ねた二人の相手は、魔獣相手に大立ち回りをする以上に疲れるものだった。

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