猫と、悪魔と、探偵と

こばとさん

プロローグ


 晴れやかな空、研究棟の屋上で。

 わたしは言う。

「ここには悪魔がいるって──そんなことを聞いたんです」

 そんなばかばかしいことを、聡明な目をした彼女の前で。


 彼女は返す。

「ここには──探偵がいると、私はそう聞いたのだけど」

 きれいな顔。長く艶やかな黒髪。

 同じ大学生とは思えないほど大人びた仕草で、言葉を紡ぐ。

「実際に来てみたら、その猫がいたのよ」

 にゃあ、と、わたしの腕の中、茶色い猫が鳴く。


「それで──」

 細い指先で前髪をかき上げながら、彼女はわたしに尋ねた。


「あなたが用事があったのは、猫? 悪魔? それとも──」

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