私、欲求不満アルネ!~林=明美の場合~

さいとう みさき

日本凄いアル!

 私は林明美リン・ミンメイ

 中国人留学生だ。


 出身は上海。

 上海でもZ世代と呼ばれる今年18歳(ただし数え年なので、日本では満17歳とちょっと)。

 小さな頃から日本のアニメで育ち、何とかして日本へ来たかった。



「ここが日本アルね!」


「いやミンメイ、Web通信の時みたいに、普通に喋ればいいのよ?」

 

 美津葉みつはとはネットで知り合い、彼女の情報で短期留学プログラムでうちの高中ガオヂョン(日本では高校あつかい)と姉妹校である聖友愛学園の交流留学生としてやってきた。

 円安もあり、親も行って来いって言ってくれたのは助かる。

 短期留学なので小さな頃からアニメなどで見ていたこの日本を余す所無く楽しみたい。


「中国人と言えば、語尾にアルね! キャラ立ては重要アルよ!!」


「どんなキャラ立てよ? それより宿舎はたまたま個室だから、寮長の言うこと聞いて変な事しないでよね?」


「分かっているいるアル」


 美津葉はドイツ人の父と日本人の母のハーフのせいか、私の様な外国人にも気さくに対応してくれるので助かる。

 こうして日本語も彼女を通して流暢に話せるようになったわけだ。

 ネットでの付き合いが長い。

 そんな彼女は、実物を見ると写真や動画なんかよりずっと美人だと言うのはうらやましい。

 胸なんかも大きく、アジア人である私の比ではない。



「さてと、寮長に挨拶も出来たし、明日から学校だけど他に必要な小物を買いに行く?」


「勿論行くアル!」


 美津葉にそう言われ、私は早速彼女と一緒に街に買い出しに行く。

 ここ東京は八王子は秋葉原に次ぐ品ぞろえがすごいと噂される場所。

 勿論秋葉原にも行ってみたいけど、学校帰りとかに近くに色々あると噂されるここを拠点とするのは重要だった。


「えーと、日用雑貨はドラッグストアーで買うとして、あと何か見たいモノとか有る? 北口の歩行者天国なんかは可愛い服のお店とかあるよ?」


「まずはこことここに行きたいアル。噂では池袋にも匹敵するらしいアル!」



 まずは小手調べ、見せてもらおうか八王子の性能とやらを!!



 そんな事を心の中で思っていると、美津葉がそのビルの前で固まる。



「ね、ねぇミンメイ。本当にここ? 携帯のナビ間違っていないよね??」


「おおぉっ! ここで間違いないアルね! のっけからすごいアル!! 美津葉入るアル!!」


「いや、ここってどう見てもオタクが好みそうなお店で…… うわぁ、あっち18禁って垂れ幕ある////////」


「大丈夫ね、私数え年で18歳アルね! それに女性向けはそっちの垂れ幕の方じゃないアルね!!」


「いや、数え年だったらミンメイって満18歳になってない17歳じゃないの、日本じゃ!!」


「大丈夫ある、パスポートでは18歳アルね!」



 なんか細かいこと気にしている美津葉。

 いいじゃん、私は18あつかいなんだから!


 そしてそっち系の棚を見ると、あるある薄い本! 

 このお店は商業用もあるけど、同人誌の販売もある。

 中国ではこう言うのはご法度だけど、ネット上とか日本人の友人とかから内緒でもらったりしていた。

 もう、センセーショナル!

 ヤックデカ〇チャーってやつ!?

 初めて見た時は、もうこれだけでご飯3杯は行けました!

 ありがとうございました、謝謝!



「おおっ! これこれ、探してたアルね!」


「ちょ、ミンメイそれって////////」


「『ケモミミ俺様、ご主人さまを逆調教』! これ続き見たかったアルね!」



 なんか美津葉は真っ赤になっている?

 こんなBL小説くらいで。

 他の日本人のネット友達とかもっとすごいの教えてくれるのに。

 もしかして美津葉って奥手?


「美津葉はこう言うの読まないアルか?」


「いや、そんな大きな声で言わないでよ、恥ずかしい///////!」


 それでもチラチラと表紙の淡麗な絵を見ている所を見れば嫌いではないらしい。

 ならば!



「こっちのはどうアル? 『魔王様の小姓』俺様系魔王様とショタのお話あるね! 大丈夫、これはR15アルね!!」


「ごくり、それって『さいとう みさき』著作の? Web小説で私の愛読の??」


「なにね、知っているアルか? だったらあの人のR18指定もあるアルよ!!」


「ふぎゃぁーっ///////! そ、それはダメぇっ! 見たいけど、まだ見ちゃダメな年齢なのぉっ!」


「大丈夫あるね、代わりに私なら買えるアルよ、私18歳アルね!」


「……お願いします///////!」



 うんうん、なんだかんだ言って美津葉も好きなんじゃないの。

 こう言うのは海外だから知り合いもいないし、今のうちにしっかりと目的のものを入手して、上海に帰る時はブックカバーでごまかして持ち帰るからね!


 と、その奥の他のグッズに目が留まる。

 私はそのグッズの一つを取り上げる。


「ミンメイ、何それ?」


「猫の手アルな」


「あ、かわいいぃ~。でもこれって何?」


「これはこう言うモノアルね」


 私はそう言ってサンプルを美津葉の手の平に押し付ける。

 肉球の所が押されると、中のモーターがまわり出しぶるぶると震える。


「な、なにこれ? ブルブルしてる??」


「マッサージ器アルネ。猫の手の形をしている、可愛いマッサージ器アルね」


「なんでそんなものがこんな所に並走して売ってるのよ?」


「そりゃぁ、こう言ったするあるよ?」


 「本を見ながらマッサージって…… あっ////////!」


 どうやらどう言う使い方するか美津葉にも分かったようだ。

 奥手だなぁ、上海なんかショッピングモールの目立たない所で大人の玩具が自販機で売られていると言うのに。

 勿論こう言ったミニマッサージ器も小物屋で売っている。

 と言うか、これって上海のお土産屋では10元(約210円)でも売っているやつだ。

 それを税込み600円で売るとは、いい商売だあなぁ~。


「欲しかったら、中国で安く買えるから後で送ってあげるアルよ?」


「いや、その、そんな…… だって、そう言う事に使っちゃうんでしょ////////?」


「なんならもっと強力なやつが欲しいアルか? あっちだと安いからこれより刺激の強いやつもあるアルよ?」


「そんなに///////!?」


 興味津々だなぁ、美津葉も。

 なんか可愛い。


 と、向こうには抱き枕やフィギアもある。

 私はマッサージ器を手に取ってうんうん悩んでいる美津葉をそこへ置いて、そちらを見る。


「んっはぁ~! これ私の推しの抱き枕アルぅっ! 欲しいアル! うっ、しかしちょっと値段良いあるな…… しかしこれを人民元換算すると…… 買いアル! 今ならかいアルぅっ!!」



 こうして私はその店で初日だと言うのに所持金の1/3を消費してしまうのだった。

 


    

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