日付のあるノート~「巫女」編

兎平 亀作

第1話 【映画評】スルンベ(2021.12.16記)

【東京ドキュメンタリー映画祭2021の上映作品です】


1.作品データ


題名;スルンベ(副題)マダガスカル南西部の憑依儀礼

監督;飯田卓

制作;2021年

上映時間;48 分


2.映画祭の資料より


[内容紹介]

マダガスカル南西部には、ドゥアニと呼ばれる精霊が霊媒に憑依し、現世の人たちの悩みに耳を傾けて解決の道を探る。2017年7月、霊媒のジャン=ルシは、精霊たちのために祝祭「スルンベ」をもよおした。精霊と人びととの交流、霊媒の役割、精霊の「習慣」についての語りをとおして、日常生活と錯綜する想像世界の広大さを垣間見せる。


[監督のことば]

1994年にジャン=ルシと初めて会ったとき、彼は腕のよい漁師で、羽振りのよい青年実業家でもあった。しかし、人と違った能力があるようには見えなかった。たびたび精霊をのり移らせる霊媒となったのは、その数年後である。本作品は、2017年の短い期間に撮ったものだが、四半世紀にわたるわたしとジャン=ルシの相互理解と相互不可解の物語でもある。


[監督プロフィール]

飯田卓

国立民族学博物館 教員、専門は人類学。在来知識や物質文化、文化遺産、視覚メディア、日本人類学史などに関心を寄せる。著書に『海を生きる技術と知識の民族誌』(世界思想社、2008年)、編著に『文化遺産と生きる』(臨川書店、2017年)、『文明史のなかの文化遺産』(臨川書店、2017年)など。


3.兎平亀作の意見です


「憑依儀礼」と聞かされて、どんなおどろおどろしいものかと思っていたが、霊媒のジャン=ルシ本人は至ってマッタリしている。儀礼中は黙々と飲み食いしているだけで、たまに興奮している会衆に水をかける程度である。

ノリノリなのは本人以外、つまり会衆とカミサンの方なのだ。


そう言えば、ジャン=ルシみたいな人、私の故郷にも居たなあ。俗に言う「お祭り男」という奴である。


ジャン=ルシは「上に向かって物申す」でもない、至って人畜無害な人と見たが、カトリック教会からはどう見られているんだろう。

映画上映後、ロビーで監督に教えを乞うたら、「マダガスカル生まれの神父は鷹揚だが、フランスから赴任してきた神父からは睨まれている」とのこと。


独立して60年もたっているのに、まだそんな感じなのか。フランス人の同化主義のすさまじさと言うのは、私の想像力を超えている。なるほど、フランツ・ファノンみたいなのが出てくるはずである。

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