飲み過ぎたのは、あなたの精S…❤

Zee-Ⅲ Basser

第1話 出会い:孝満ver.後ろから

 桜の花びら舞散る4月初旬。


「タカちゃん、何組やったと?」

 訳:何組だったの


「ん?2組ばい。ジロちゃんと一緒。リョーちゃんは?」

 訳:2組だよ


「オレ、3組。テッちゃんも3組ばい。」


「ん?…ホントやん!よかったぁ~!」


「げっ!ウソやろ?もしかしてオレだけ離れちょーやん!うっわ~、このメンバー…仲いーヤツいっちょんおらんっちゃき。どげんするんよ、これ。嫌がらせとしか思えんし。」

 訳:離れてるじゃん!仲いいヤツ全然いないし。どーすんの


「シゲちゃん、一人なん?」


「そーなんっちゃ。見ちゃってん、これ。オレ一人だけ1組げな…ボッチばい。たまらんき。」

 訳:そうなんだよ。見てよ、これ。1組だなんて


「うっわ~…ホントやん。こら~ヒデーね。でも、大丈夫!休み時間、遊び行っちゃーき!」

 訳:ほんとだね。これは酷いね。遊びに行ってあげるから


「なら、オレも行くね。」


 大喜びあり。

 絶望あり。

 そんなドラマが繰り広げられている掲示板前。


 今日は中学校の入学式。




 ひとしきり盛り上がった(?)ところで、


「ボチボチ時間やね~。行きたむねぇばってんが、行こっか?」

 訳:行きたくないけど


 場を〆て、歩き出すと、


「そやね。」


「ダリー。」


「ホントちゃ。」


「あ~…オレだけ一人。」


「詰襟、でったん気色悪ぅ~。」


「はよ帰って制服脱ぎてぇ。」


「それ。」


 他の者もつられて不満をタレながら渋々歩き出す。

 そして、案内矢印に従い体育館へと向かうのだった。




 中に入ると入学式仕様に飾付けされたステージ。

 目線を少し下げるとクラス表示のプレート。


 と、ここまでは極めてお約束の光景だったのだけど…。


 !


 ちょっとしたイレギュラーが待っていた。


 それは何かというと、金色。


 鮮やかな金色が、視界に飛び込んできたのだった。

 まるでそこだけがスポットライトを浴び、浮き上がっているかのように明るい。


 初めてナマで見るナチュラルなロングの金髪(ワルソ=ヤンキーの多い地域だから、金髪自体は全然珍しくない。今、ここにいる新入生や在校生の中にもそれなりの人数いる。)に、


 すっげ~…でったんキレーやなー…。

 訳:超綺麗


 呆気なく目を奪われる孝満。

 しかし、立ち止まって見惚れている場合ではない。早く席に着かないと、後から来ている人間の邪魔になる。


 えっと、2組は…ここやね。


 プレートに従い列に並ぶと、前に詰めて着席。

 何人か前には金髪の彼女。


 おんなしクラスやったんやね。


 未知との遭遇にテンションが上がってきだす。

 後姿を眺めながら、


 外人さんやき背が高いんばいね~。だき、なおさら目についたんやね~。っちゆーか、外人さんっちこの町にもおったんやね。

 訳:背が高いんだね。だから、なおさら


 などと考えていたら、隣に座る仲良し幼馴染、治朗も全く同じことを考えていたようで、


「へ~…外人さんっち、こげなこまい町にもおるんやね~。」

 訳:こんな小さい町


 心の声と全く同じことをボソッとつぶやいた。

 その言葉に反応して治朗を見ると、治朗も孝満の方を向いて、


「ね。なんか、スゲーよね。」


「うん、スゲー。」


 感動を分かち合っているところで校長が入場。

 その流れで式が始まった。



 分かってはいたが、モーレツにヒマである。

 校長やその他お偉いさんたちの祝いの言葉には一切耳を傾けることなく、


 あの人、日本語喋りきぃっちゃろか?まぁ、喋りきぃきこの学校来ちょーっちゃろーばってんが。

 訳:喋れるのかな?喋れるからこの学校に来ているんだろうけど


 極めてどうでもいい心配をしながら式が終わるのをただただ待つのだった。

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