平凡なフリをしている俺が、実はクラスの美少女モデルを助けた人物の正体だとバレないように全力で二重生活をこなそうと思う

神月

第1話 平凡

 ────特待別世高校とくたいべっせこうこう、通称特高とくこう

 その学校に通う生徒は、何かしら特別な技能を有しており、将来を期待されている生徒たちだ。

 そして、かくいう俺、真霧まぎり色人いろともその特高に通う生徒だが……第三者に俺のことを聞けば、間違いなく俺のことを平凡だと言うだろう。

 何故なら、テストの点数は平均であり、運動能力も平均……見た目に関しても、黒髪で目にかかる程度の長さとどこをどう取っても平凡だからだ。

 と言っても、どうして特高に平凡な奴が居るのかと一部では逆に噂になったりもしているらしいが、俺にはをしないといけない理由があるためそんな噂は気にしないし、仮に平凡なフリをしないといけない理由があったとしても俺は平凡というものを知ってしまったため、もうこれ以外のどこか騒がしい生活には戻ることができない。

 そんな噂を除けば客観的に見て平凡な俺が、夜9時という高校生が出歩くには少し遅い時間帯にトレーニングジムから帰宅していると、その帰り道で男女の言い争う声が聞こえてきた。


「おい、いいからこっち来いって」

「嫌って言ってんじゃん!」


 夜9時にこの会話……少なくともただ事で無いことは確かなため、俺は少しその声の方へと近づいていく。


「お前みたいな可愛い子は悪いようにはしねえって、なぁ?」

「あぁ、たっぷり可愛がってやるよ」

「こ、来ないでって言ってるでしょ!」


 ……この曲がり角を曲がってすぐだな。

 相変わらず段々と言い争いがエスカレートして行っている中────俺は、その状況を理解した。

 二人の大柄な男に言い寄られている制服姿の女の子……ベタだな、今時こんなのドラマでもやってないんじゃ無いかと思うほどにベタだ。

 そんなことを思いながらも、俺はふとその女の子の容姿をちゃんと見てみた……毛先の巻かれているサラサラな金髪ロングに、可愛らしい顔立ちだが整っている顔────見覚えがある。


「あいつは……」


 俺と同じ特高の、同じクラスに居る七星ななほし一羽いちはだ。

 確か、容姿が整っていて演技力もすごいとかで、モデルとして雑誌に載っていたりドラマに参加しているらしいが……なるほど、つまり────


「これはドラマの撮影ということか」


 通りでベタにも程があると思ったが、そういうことなら納得だ。

 でも、だとしたらお互いに迫真の演技力だ……演技の道に進む気は無いが、もしかしたら何かの機会に使うことがあるかもしれないから参考にしよう。

 そう思いながら、俺は少しの間特等席で誰よりも早くドラマを観させてもらうことにした。


「いい加減にして!」

「それはお前の方だろ?いつまでそうしてるつもりなんだ?」

「もう本当に警察呼ぶから!」

「いいから早く来いって言って────」


 七星が警察を呼ぶと言った時、大柄の男の一人が七星の腕に掴みかかろうとした……もし、それもドラマの脚本の一部なのであれば俺は後で盛大に謝らないといけないことになるが────とてもそうには見えなかったので、俺は七星に伸びていた大柄な男の腕を逆に掴んだ。


「あぁ!?なんだてめ────」


 そして、俺に殺意を向けてきたことでこれがドラマの撮影では無いことがわかったので、俺はこの大柄な男の腕を使って背負い投げした。


「がっ……!」


 地面に叩きつけられた大柄な男は、そんな声を上げて意識を失った。

 すると、もう一人の大柄な男が────


「お前ぇ!」


 と叫びながら俺の方へ向けて走ってきた……が、俺はその男の足に一髪だけ蹴りを入れてからお仲間と一緒に背負い投げをして意識を奪った。


「これで終わりか」


 そう呟いた後、俺は七星の方を見てみる。

 すると、呆気に取られたように俺のことを見ていた。

 ……まずいな。

 今まで平凡なフリをし続けてきたのに、このままでは少なくとも戦闘技術においては俺が平凡じゃないということが学校全体にバレてしまう……学校全体というのは大袈裟だと思うかもしれないが、この七星という人物はそれだけ学校で人気者なのだ。

 俺がどうすべきかと悩んでいると、七星が俺の方に近づいてきて目をキラキラさせながら言った。


「か、かか、かっこいい!じゃなくて、助けてくれてありがとうございます!あの、私特待別世高校の一年生で、七星一羽って言うんですけど、あなたのお名前をお聞きしても良いですか!?」

「……」


 俺だと、気づいていない?

 いくら平凡なフリをしているからと言っても、クラスメイトの顔を忘れ────と考えようとした時、俺は今日、自分がジム帰りであることを思い出した。

 俺はジムの時、前髪があると少し鬱陶しいのでいつも髪の毛を上げていて、帰りもいつもそうしている……つまり、今俺は髪の毛を上げている。

 でも、学校の時は前髪を下ろしているから、七星は俺が真霧色人だと気づいていないんだ。

 ……少々面倒なことになりそうだが、ここで俺が平凡でないと学校中に喧伝されるよりは遥かにマシなため、俺はその勘違いを利用させてもらうことにした。


「俺の名前は────霧真きりま人色といろだ」



 今日から毎日19時15分に最新話を投稿させて頂こうと思います!


 平凡で居たいため平凡でない存在とは恋愛をしたくないハイスペック主人公と、そんな主人公の凄さや正体に少しずつ気づいていき主人公に惹かれていくヒロインたちのお話です!

 この第一話を読んだ段階での皆様のこの作品に対する評価や期待値などを教えていただきたいので、積極的に素直な評価をしていただけると嬉しいです!

 その中で、もしこの作品を楽しみだと思ってくださった方が居ましたら、この作品を応援すると思っていいねや⭐︎、コメントなどをしていただけると本当に嬉しいです!

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