魔獣の傷をグチャグチャペッタンと治したらテイマーになっていました〜黒い手ともふもふ番犬とのお散歩暮らし〜

k-ing🍅二作品書籍化

第1話 飼い主、捨てられる

 5歳の誕生日に僕は家族から捨てられた。


――昨日


「ママ! ぼくはなんのスキルがもらえるかな?」


「んー、私達の子どもだから〝農民系〟か〝裁縫系〟かしらね?」


「どっちがいいの?」


「どっちでも私達の息子には変わりないわよ」


 そう言ってママは僕の頭を撫でた。


 今日は教会でお祈りをする日だ。


 お祈りをすることでこの世界に生まれてきたと認識されるらしい。


 それにスキルという僕だけの特別な才能を授かることができる。


 パパが農民でママが裁縫の才能を持っている。


 僕の兄ちゃんや姉ちゃんも同じようなスキルだ。


 運が良い時は職人スキルをもらえるらしい。


 兄ちゃんはその一人で家具職人だ。


 僕も兄ちゃんみたいに、職人スキルをもらってパパとママに家を作ってあげたいな。


「ココ降りるわよ」


「うん!」


 乗り合い馬車から降りると、すでに同じ町の子ども達が集まっていた。


「おい、あくまがきてるぞ」


「まぞくなのにきょうかいに入れるのか?」


 僕が周囲の声に泣きそうになっていると、ママがそっと耳を塞いでくれた。


「気にしなくていいのよ」


 ママは僕を見て微笑んでくれた。


 僕は生まれた時から薄暗く不気味な黒い髪色をしているから、他の子から魔族や悪魔の子と呼ばれている。


 他の子よりも遅く着いたのは、僕が町の子からいじめられているからだ。


 だからお金を貯めて有料の乗り合い馬車をママとパパが準備してくれた。


 教会から出ている馬車だと、みんなと一緒に行かないといけないからね。


 そんな優しいママとパパが僕は大好きだ。


「では皆さん教会の中に入ってください」


 僕達とは全く違う丸々した男に僕達は呼ばれた。


 少し緊張していると、ママが優しく手を握り教会の中を歩いていく。


 ピカピカした家具が多く、窓もたくさんの色の光が入ってくる。


 将来はこんな家をママとパパに作ってあげたいな。


 スキルは願っていると叶うって聞いているからね。


「ここからはスキルを授かる子ども達だけ中に入ってください」


 どうやらここでママとは離れないといけないようだ。


 僕がママに手を振ると、笑顔で見送ってくれた。


 中には大きな石像が置いてあった。


「ではこの先で神に願いを込めて、スキルを授かりましょう」


 あの石像は神と呼ばれる人らしい。


 神さんってとても大きい人なんだね。


 大きな石像の前に僕達は集まった。


 みんなを見ると手を合わせて何かをぶつぶつと言っている。


 僕も見様見真似で手を合わせる。


「どうかよいスキルがもらえますように」


 願いを込めるとどこか胸がポカポカしてきた。


 きっと良いスキルが授けられたのだろう。


「じゃあ、スキルの確認をする」


 大きな台座の上に立って、丸い水晶に手をかざしていくとスキルが確認できる。


「おっ、おれは剣士だぞ! 将来は冒険者だ!」


「私は調理かー。でも、美味しいご飯が作れるお母さんになれるね」


 各々確認しては自分の将来の姿を想像していて胸を躍らせていた。


 次は僕の番だ。


 きっと願ったから職人スキルが授かったはずだ。


「次は……気味の悪い子だね」


 初めて会うのに、僕をいじめてくる子達と同じような目で男は見てきた。


 僕は言われた通りに手を水晶に触れる。


【回復属性魔法(闇)】


 まさか僕が魔法を授かるとは思いもしなかった。


 平民が魔法を使えるなんて珍しい。


 あまりの嬉しさにニコニコとしていると、周囲の反応は想像と違っていた。


「回復属性魔法……闇だと!?」


 なぜか神父は胸元から小さな剣を取り出して、僕に向けてきた。


「悪魔の子がなぜここにいる! 今すぐに出ていけ!」


 悪魔の子?


 また僕の髪の毛のことを言っているのだろうか。


 スキルの確認ができた僕は言われた通りに、ママが待っている部屋に向かうことにした。


 急いでママのところへ行くと静かに待っていた。


 他の人達はみんな楽しそうにお話をしているのに、なぜかママだけ離れている。


 僕がいたらママは寂しくないかな?


「ママ!」


 僕が声をかけるとママはにこりと笑って顔をこっちに向けた。


「ココ、スキルはもらえたかな?」


「うん! かいふく……まほうだって!」


「えっ……」


 さっきまで笑顔だったのに、どこか浮かない顔をしていた。


 せっかく魔法を手に入れたのに、そんなに悪いことなのかな?


 他の子達も次々と帰ってきて家族に報告をしていた。


 みんな楽しそうなのに僕達だけがどこか違う。


 静かな空気が僕とママのところに流れてくる。


「ねえねえ、あの子闇のスキルを手に入れたんだって」


「本当に悪魔の子だったんじゃない!」


「髪の毛がその証拠だものね」


 わざと僕達に聞こえるように話してくる悪い大人達だ。


 僕はママの手を握って外に出ようする。しかし、僕の手は振り払われてしまった。


「離して!」


「どうしたの?」


 何でこうなったのか僕にもわからなかった。


 その後の記憶も残っておらず、ママは一度も僕と話さず家に帰ってきた。



 翌日、僕は目を覚ますとベッドの上で寝ていた。


 帰っている最中に疲れて寝てしまったのだろう。


 いつものように一階に降りるが、なぜか家の中は静かになっていた。


 普段はママやパパ、そして兄と姉の声で我が家は元気だった。


「にいちゃんなにがあったの?」


 近くにいた兄ちゃんに声をかける。


「気持ち悪い! 俺には弟なんていない!」


 あれ?


 僕は兄ちゃんの弟だよね?


 何で僕から離れていくの?


 今度は近くにいた姉ちゃんに声をかける。


「ねえちゃん、にいちゃんに――」


「いやああああ! 悪魔が話しかけてきたわ。私は呪い死ぬのよ」


 姉はその場でしゃがみ込み、必死に耳を押さえていた。


 兄ちゃんも姉ちゃんも今日は変だ。


 いつも優しくて守ってくれる二人だったのに……。


「大丈夫だ。気味の悪いやつは今すぐ出ていくからな」


「どこかにあそびにいくの?」


 僕が話しかけても、兄と姉は聞こえていないふりをしている。


 突然のことで何が起きているのかわからない。


 パパとママもどこに行っているのだろうか。


 帰ってきたら兄ちゃんと姉ちゃんを怒ってもらわないといけないね。


――ガチャ!


 扉が開いた音がして僕は振り返る。


「パパ!」


 そこには父と見知らぬ男が立っていた。


「この子が今回買い取ってもらう子だ」


「ははは、本当に悪魔の子みたいだな」


「悪魔の子じゃなくて本当に悪魔なんだよ」


 パパまで何を言っているのだろうか。


 僕にはパパが付けてくれた、ココロって名前があるんだよ。


 昨日までココロって呼んでくれていたじゃないか。


 僕は悪魔なんかじゃない。


「パパ……」


「誰がお前の父親だ! お前はあのクソ女が見知らぬ男とできた子どもだろうが!」


「ぼくはパパの子だよ?」


「ははは、何言ってんだ? スキルは遺伝するんだ。魔法は貴族様が使うスキルだからな」


 魔法は貴族が使うスキルなの?


 貴族ってこの町の領主様とかのことを言うんだよね?


 僕は貴族の子でもない。


「それに俺以外との子だから悪魔が魂に乗り移ったんだろう」


 僕の魂に悪魔が乗り移っているのだろうか。


 僕のスキルが回復属性魔法だからいけなかったの?


 魔法はみんなが羨ましいって思うスキルの一つじゃないの?


「それに闇ってまるで悪魔そのものだな。はぁー、俺らが呪われる前に奴隷商が来てくれて助かりました」


「じゃあ、この子を引き取りますね」


 謎の男が僕に近づき髪の毛を掴んだ。


「おい、悪魔のガキ行くぞ」


 ズルズルと引っ張っていく。


「いたい! はなして!」


 必死に抵抗するがパパも兄も姉も助けてくれようとしない。


 むしろ嬉しそうに笑っている。


「悪魔が何を言ってるんだ? お前は生きているだけでも迷惑なんだよ!」


 僕は生きているだけでも迷惑なの?


 必死に周囲を見渡すと、ママは洗濯物を干していた。


 その顔は真っ青になっており、顔にはたくさんの傷跡があった。


 体もところどころ青紫色になっている。


「ママ、たすけて!」


 声を上げるがママはこっちを見ようとしなかった。


 震える体を必死に抑えていた。


 何で誰も助けてくれないの?


 僕は悪魔の子じゃないよ?


「ははは、お前は家族に捨てられたんだよ。悪魔の子として実験台に売り物にされるんだ」


 そう言って男は強引に僕を馬車に連れ込んだ。


───────────────────

【あとがき】


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

と思ったらフォロー、コメントをして頂けると嬉しいです。


下にある♡応援や☆評価をお願いします。

面白かったら☆3、つまらなかったら☆1と正直な気持ちで構いません。


皆様の評価が執筆の励みになります。

何卒よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る