高難度の迷宮に見捨てられた【暗殺者】の僕は、敵を倒しまくって強くなる。そして気づいたらレベルは150になった。今さらパーティーに戻りなさいなんて言われても戻るわけないじゃん。

@kagami_tsukasa

第1話

 デス・スケルトン

 LV.79

 

 死神のような格好をしているとても強い魔物だ。

 

 ここは【死神の深淵】と呼ばれる、この世界に存在する難易度の高い迷宮のひとつ。

 仲間と思われた元所属していたパーティーである《疾風の竜巻》のヤツらに裏切られ、ここで見捨てられてしまった。

 ボスを討伐して迷宮を攻略する為に来たと思っていたが、そうではなかったみたい。

 実は僕を追放する為に来た。

 

 僕のことが大嫌いとか散々言われたうえで怪我させて、魔物の餌にさせようと置いてきぼりにさせた。

 

 そんなの、許すわけにはいかない。

 

 アイツらのせいで、こんな痛い目にあっているから。

 

 「絶対回避」

 

 そう唱えると、魔力と体力が削るのを感じた。

 

 絶対回避は【暗殺者】クラスのあるランクに達したら手に入れるスキルだ。

 

 魔力と体力の消費をしつつ、一時的に全ての攻撃を自動回避することができるようになる。

 維持できる時間はそれほど長くはないが。

 

 デス・スケルトンは持っている重そうな大鎌を振りかざして、僕を真っ二つに切断するように振り下ろす。

 

 その為に僕は【絶対回避】を発動した。

 

 目に見えないほどの素早さで大鎌が振り下ろされたので、自力で躱すのは無理っぽい。

 確かにスキルに頼らずに簡単にこの攻撃の回避は出来る人はいると思うが、残念ながら僕にはそういう人たちみたいな、そんな反射神経がない。

 仕方なく【絶対回避】を使わざるを得なかった、と言っても過言ではないだろう。

 だから使った。

 するとデス・スケルトンの致命的な一撃を絶対回避で躱すことに成功する。

 

 気づいたら僕は跳躍して、空中で身体をぐるりと宙返りして後ずさりしているところだった。

 

 着地と同時に手に持っている短刀を構え、暗殺者クラスのもうひとつのスキルを使った。

 

 「致命の一撃」

 

 唱えると、短刀は眩い光に包まれる。

 このスキルはその名の通り、絶対急所に当たる一撃だ。

 

 デス・スケルトンはアンデット系の魔物だから弱点なんて光魔法と回復魔法以外はないに決まっている、そう思う者はいるだろう。

 しかしそれは大きな思い違いだ。

 確かに光魔法はアンデットには効果抜群だが、すべての魔物には人間やエルフ、ありとあらゆる生き物みたいに急所や弱点があり、そして勿論その急所、はたまたその弱点が突かれたら大きなダメージが負われてしまう。

 そして僕は暗殺者クラスの冒険者だ。

 

 敵の急所を狙って攻撃するのは普通の戦い方だ、僕には。

 

 眩く光り輝く短刀を構えながら、僕は攻撃をする。

 

 暗殺者の身体能力上昇特有のスキルである【暗殺者の導き】を発動しつつ、地を蹴ってデス・スケルトンとの距離を縮める。

 すると、構えている短刀を突き刺す。

 ねらいどころはその首だ。

 

 運がいいか何とか攻撃が当たると、抵抗が出来ずにデス・スケルトンは粒子に分散して呆気なく消える。

 その直後、デス・スケルトンを討伐しました、というメッセージが視界に現れるとともに体内に経験値とスキルポイントが吸い込まれるのを感じた。

 

 この世界では、敵を討伐したら経験値が入る。

 

 そして経験値とは、冒険者の「成長」の度合いを表すための数値。

 正直に言ってうまく説明はできないのだけど、例えば自分よりレベルが高い敵を討伐したらより多い経験値が得られる。

 一方で、自分より弱い敵だったらそこまでは得られないのだ。

 

 冒険者は十分な経験値を蓄積すれば、レベルが上がると同時にスキルポイントが与えられる。

 しかし経験値とは違ってスキルポイントはスキルの強化だけに使うことは出来る。

 

 現在の僕のレベルは52。

 魔物をあともう一体討伐したらレベル53に上がるが、その前にせっかく一息ができるようになったから少し身体を休もうか。

 

 さっきの戦いでは、結構な魔力と体力を使い切ってしまった。

 魔力がなければスキルは使えないし、体力がなければまともに戦えない。

 

 どっちもこの迷宮から無事脱出する為に必要不可欠である。

 疲れたままボスに挑もうとすれば、即死以外はありえないのだ。

 ここで一休みをして先へ進むのは一番賢明だと僕は思う。

 

 そう決めた瞬間、近くで物音がした。

 

 「何?敵か」

 

 物音がしたところへと視線を投げるが、暗くて何も見当たらない。

 気のせい……っなわけないか。

 

 ここはS級の冒険者でも警戒する難易度の高い迷宮の【死神の深淵】だぞ。

 

 こんな危険なところで油断するわけにはいかない。

 

 どうする?

 

 休まずに先へ進むか、警戒しながらここで休むか?

 この階層の敵をありったけ全部討伐したはずだ。

 

 そうしなかったらここで見捨てられた当時のたったレベル33の僕は敵の不意打ちを食らってもうとっくに死んでしまったから。

 

 確かに疲れているし、出来ればボス戦がスムーズにいける為にMPとHPの回復薬も温存したいし。

 

 どんだけ危険なところがわかっていても、ここでレベルを上げて強くなると決めている。

 

 僕が元所属していたパーティーのヤツらを見返す為に。

 こんな場所で、死ぬ訳には行かない。

 そしてそれを保証出来る為に、休まなければならない。

 

 考えた挙句、僕は辺りを警戒しながら、体力と魔力が全回復するまで、ここで休むことにしたのだ。

 


 ◇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る