オーバードライブ

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弾は放たれた

1.弾丸は放たれた

 薄暗い道を通って、暴力団の団員である山崎はとある場所に向かっていた。


「はあ、どうして暗い夜にこんな所行かなきゃならねえんだ」


 腕時計を眺め、険しい顔をしながら山崎はつぶやいた。


 山崎はいわゆるヤクザであった、中学の時に喧嘩の腕を学校の先輩達に買われ、不良の仲間入りを果たした山崎はその調子で高校に進学し、暴力団に入団した根っからのヤクザ者であった。


 自身の所属している暴力団はあまり規模が大きくなく、利益を上げるために麻薬の売買を行なっている。


 しかし、近頃行われている暴力団への規制の影響で、薬物の売買を直接行えなくなっていた。


 そのため、組員が売買せずに仕入れた麻薬を売人に与え、売人に売らせた麻薬の利益から組の収益を得ていた。


「売人のやつ、見つからないためとはいえ流石に離れた場所で受け取りを行うのは過剰じゃねえか」


 そんなことを呟きながら夜道を進み続けると、住宅街を外れて待ち合わせ場所である雑木林に到着した。


 その雑木林は辺りに多く木が生えているため、視界があまり良くなく、受け取りを行うにためにはちょうどいい場所だった。


 草木をかき分け、木の根で転ばないよう慎重に林の中を移動し、目印である切り株のそばに近づいた。


 事前に売人から言われていたように、切り株の上に見えるよう拳銃を置いておいた。


 時計が12時ちょうどを示す頃、山崎の目の前に黒いスーツを着た男が現れた、山崎はその風貌を見て、同じヤクザであることを確信した。


 まさか麻薬の密売人が同業者だったとは、トラブルが起きなければいいが……と山崎は思った。


 山崎は約束の時間を30分も過ぎていることを確認し、文句を言いたくなったが、手元にある拳銃を見て、息を呑んだ。


「おいおい、そんな物騒なものをしまえよ……」


 山崎はそう口を開いたが、男は何も黙ったままこちらを凝視し、その後切り株の上にある拳銃を見て、口を動かした。


「なるほど、お前が」


 山崎は自身の身の危険を感じ、切り株の上に置いた拳銃を手に取ろうとした。


 次の瞬間、黒服の拳銃は火を吹き、暗い雑木林に銃声を響かせ、山崎に命中した。


「このやろう!」


 山崎は痛みを押し殺しながら手に取った拳銃の引き金を引いた。


 閑静な林の中を何発もの銃声が駆け抜け、やがて眠るように静かになった。


 翌日、警察に一本の通報が入った。


 


 

 


 


 


 

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