君ヲ描ク

ポピーの騎士

第1話 君思う、故に我あり

 

 彼女は翠玉色の瞳から流れた涙を拭きとった。


 美しいと、思った。

 その瞳の色が、その溢れる雫が、その肌が、亜麻色の髪が。


 手を伸ばす、触れたくて。

 届かなくて、分かっていたから。

 彼女は天国へと逝った、私は地獄へと堕ちる。

 もう触れられない、

 もう、見えない。

 

目を醒ます、今日も必要のない夢を見る。

惰性を偽る。

夢の中なら彼女に触れられるから。


 見慣れた天井を見上げる、木の材質、香る日の匂い。

 昼過ぎの時間。

 ベッドから身を起こす、使い古した、ぎしぎしという音が鳴る。

 窓を開ける、彼女の愛した街並み、変わり果てている、

そうだ、当たり前だ。

 彼女が死んで、千年が経っているのだから。


 それでも私は、絵を描く、彼女の翠玉の瞳を完成させるため。

 

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