なっちゃんの異世界奮闘記

いずいし

第1話


「なっちゃん、今日のお夕飯は何が食べたいかな?」

「からあげ!あとね〜おいものサラダも!」

「ふふっ。なっちゃんは唐揚げ好きね。この前も唐揚げ食べたじゃない?」

「いいの!ママのからあげスキだから、いつもたべるの!ボクたくさんたべるからね!」



 母親と手をつなぎ、幼稚園の服を着た子供が元気な声でそう答えていた。

 唐揚げ好きと本人が言うだけあって、既にふくよかボディをしている。にこやかに応じる母親はきっと沢山の唐揚げを今夜も子供に与えるのだろう。


 そんな二人が歩いて行く先には、通り道に大きな公園がある。遊具はもちろんグラウンドやトイレも備わった広い公園だ。


 母親との約束で、1人の時は公園で遊べない決まり。なっちゃんは、何時も遊びたいのを我慢して母親との約束を守っていた。


 でも、今日はママが一緒!それに砂場には幼稚園のお友達が遊んでいるのも見えた。



「ママ!こうえんでボクもあそびたい!」

「そうね…お買い物して来ちゃったから、ちょっとだけにしようね?」

「うん!」



  母親に了解をもらって、喜び駆け出すなっちゃん。

 いつも幼稚園でやる、かけっこ競争より砂場は離れていたけど、遊びたい欲求に背を押され、肉を踊らせ頑張って走り出した。



 その途中には、バレーボールを持った中学生や営業途中らしいサラリーマンも歩いてる。穏やかな陽気にベンチで語らう老人達も賑やかだ。

 


 そんな在り来りの風景に、突如、音もなく不可思議な発光現象が起こった。


 強い光を発した以外は何の変化も無いその現象に、公園内でも気付いた者は近くにいる人達だけだった。


 だが、明らかな異常現象に母親は咄嗟に子供を追い掛けた。しかし、光が眩しくて前がよく見えない。慌てて子供の名を呼び懸命に走る。



「なっちゃん!!」



 だが、その光が収まると目の前を走っていたはずの子供や光の近くにいたサラリーマン、中学生も居なかった。


 いや、居なくなってしまった。



 母親は子供の名を呼び、探しまわった。


 直ぐに他のママ友が声を掛けて来て警察を呼ぶ。


 しかし、事情を説明された警察も対応しようのない現象に戸惑い、役には立たなかった。


 その後の調べで、中学生6名、会社員3名、幼稚園児1名の行方不明が正式に発表された。


 その話題はしばらくは報道を騒がせ、白昼に起こった不可思議な現象に様々な説が唱えられた。だが何ら解決には至らず時が過ぎて行く。



 そして母親はその手を離した事を生涯悔いる事になった。



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