魂が溺れてしまう前に

りょっぴーぴあ

プロローグ1






 「黎界」それはあらゆる生物が暮らす「現世」の下にある特殊な空間。黎界とはいっても暗かったのは最初期だけで、今では開発が進み白夜のようにすっかり明るくなっていた。そこには死んだ人間の魂が流れ込んでくる。そしてそれらの魂を管理する「霊人」とそこから進化した「霊神」、そして一握りの特殊な存在が住んでいる。


 霊人と一括りにしてもいくつか種族に分かれている。私はその中でも少し特殊な龍神族に生まれた。龍神族では一定の年齢までには能力が発現する。それは一般的には魂能こんのうと呼ばれ、一部の特殊なものは権能と呼ばれている。

 発現する能力は種族によって変わってくる。龍神族は基本的に炎、水、風、光のいずれかの属性を持った魂能が発現するらしい。龍神族は一人の長老とその下にそれぞれの能力を象徴する家門があり、どれを得るかによってどの家門に入るかが決まる。

 

 私は少し前から父方の実家、龍神族の屋敷に住んでいる。


 「天そらちゃんどうしたの?」


 封筒を脇に抱えてぼーっとしていた私に声をかけたのはタマさん、族長の奥様だった。


 「これ見てください、魂能検査の結果が届いたんですよ!」


 「あら、冷華さんにはもう知らせた?」

 「はい」


 冷華、私のお母さんである。


 「ならさっそく見「なに⁉︎もう届いたのか?!」


 「っわ!!」


 声にならない声を出しながら、私は父親譲りの動体視力と筋力で反射いと的にいきなり現れた男に右ストレートをお見舞いした。男が吹っ飛んでふすまが壊れた。そこからは夜空と月が少し見えている。それ見て、我ながらよく反応できたなと思った。ふすまは...まあいいか。数秒動かなかったがその後男はふらふらしながら起き上がった。


 「あ、生きてた」


 「殺すつもりで殴ったの!?」


 「いや、でもあなたが悪いのよ?幽仁。いきなり背後に現れたりするから、しかも日常的に」


 そう、この人はこんなのでも龍神族の現長老だ。


 「次は仕留める」

 「いや仕留めないで?」


 「そうよ、これから天ちゃんは学業で忙しくなるんだからこんな奴にかまってられないわよ」


 その言葉を聞いて少し涙目になる楼玄さんを見て少し同情しつつ、私も言い過ぎだったかなと思った。


 「はあ、分かったよ、わしが悪かったよ」


 幽仁さんは頬を膨らませながらそう言った。前言撤回、全然言い過ぎじゃなかった。明らかにこの人反省してないし、全然かわいくないし、キモイし。


 「反省してないわね」


 これにはタマさんも同意見のようだ。長年付き添っている人が言うのだから間違いない。幽仁さんは私の持っている封筒に視線を向けて、話を変えた。


 「で、結果届いたんでしょ?もう見たの?」


 「いえ、まだ見てないです」


 「じゃあさっそく見ましょう!」


 この人たち結構見たがってるな。もちろん私も気になる。胸を躍らせながら封筒の開け口に触れた瞬間。

 ドンッ______と屋敷の壁を突き破って何かが突っ込んできた。


 「いたたた....」


 「...何してんの、“お母さん”」


 その天使は上にのしかかっていた崩れた壁を腰のあたりに携えた白い翼で押し退けた。


 「い、いや、ちょっと娘の検査結果届いたって言ったら、..上司に光の速度でここまで飛ばされちゃった」

 「す、すごい上司だね...というかお母さん頑丈だね..」


 この屋敷の壁は特殊な素材でできていて破壊されても自動で修復されるのだ。封が緩んでいた封筒から一枚の紙を取り出した。その紙には私の体重から年齢まであらゆる個人情報が載っていた。下の方に目をやると今回の調査結果が書かれていた。

 私のあまり知られたくない情報書き連ねる必要あった!?絶対こんな検査してないって!体重計に乗った記憶すらないんですけど!?

 まあそんな文句はさておき、肝心の結果はというと


 氷の魂能

 鏡の権能



 と、書かれていた。


  魂能とは【魂に付属する能力】の略称。炎や氷といったざっくりとしたものからその個人特有のものまで幅広くある。炎の魂能一つとってもただ炎を放出するだけだったり炎が武器の形をしていたりと様々だ。そういったものを能力の特性と呼んでいる。

 そして_


 「権能?って何ですか」


 権能なんて聞いたことない。


 「...まさか権能持ちとは!」

 「おめでとう天ちゃん!」

 「鏡?」


 と三人が反応した。いや、だから権能って何?元々魂能、というか氷の魂能が自分に備わっているのは最初から感覚的に使えたので知っていた。でも鏡の権能なんて知らないし使えない。そもそもその力が私にある感覚すらない。どうやら三人とも反応以上に驚いているらしく私の質問は届いていない。

 三人は考え事をしているのかその部屋は少しの間静寂に包まれた。...空気が少し重くなった。何かまずいことでも書いてたのかなぁ。三人の様子をうかがったが何かを言える状態ではなく、その空気がしばらく続いた。幽仁さんが神妙な面持ちでタマさんの肩に手をのせて口を開いた。


 「...ちょっとみんなを呼んできて」

 「わかったわ」


 すると彼女は立ち上がり部屋を出た。


 「あ、あの、幽仁さん、今から何するんですか?」


 「ん?会議だよ。天ちゃんの権能についてのね」

 「何かいけないところでもあったんですか?」


 「いや、そういうわけじゃないんだ。それについては後でまとめて話すよ」


 私ほんとになにしたの?どう聞いても同じように「後でまとめて話すよ」と返され、しかもお母さんと幽仁さんが私に聞こえないようコソコソ話している。そんなことを目の前でされたら話してる内容が気になるのは仕方のない。私は気づかれないよう慎重に二人の近くへ忍び寄る。ちゃんと教えてくれないのが悪いのだ、と心の片隅でつぶやきつつ、耳に意識を集中させる。すると、タマさんが各家門の長3人を連れて戻ってきた。


 「連れてきたわよ、あなた」


 幽仁さんはお母さんとの話を中断して、座布団に腰を下ろした。


 「ああ、ありがとう。それじゃあ始めようか」


 幽仁さんのその一言で簡易的な会議が始まった。


 会議の議題は”天ちゃんの権能について”だそうです。幽仁さんの話を要約すると、普通龍神族には炎、水、風のいずれかの属性しか発現しないんだそう。特殊な例でそれ以外の属性が発現したことがあったらしい。その原因は遺伝だということが判明している。

 その属性が”光”、つまり私の”鏡”はどれにも当てはまらない。問題にするほど問題でもないが、今現在わかっている情報を共有しよう!というのがこの会議の趣旨らしい。


 「原因ってわかりますか?」


 お母さんが聞くと、全員口をそろえてわからないと言った。口を開いたのは幽仁さんだった。


 「これまで例外はなかった。しかし今、その例外が生まれた。前代未聞の鏡・の権能」


 続くのは火の家門代表、粗火さんだ。


 「通常、龍神族の血はどの種族と混じっても薄れない。いや、正確に言うと龍神の身体的特徴は変わらない。普通の龍神は頭に角が生えているだけ、だがどういうわけか天ちゃんには角に加えて冷華さんの翼が発現している。言い方が少しあれだが、これは冷華さんの、天使のせいじゃないか?」


 お母さんはどうとも読み取れない複雑な表情になった。


 「他の龍神族の方々と比べて原因になりえるのが私ぐらいですもんね...」


 まぁそうだよn...あ!


 「そういえばまだ権能が何なのか教えてもらってない!」


 「そうなのか?族長」と粗火さんが聞くと幽仁さんは「ああ、説明が難しいからな」と答えた。


 「そんなに難しいものなんですか?」


 私がそう質問すると編笠を被った男、風の家門代表風立さんが答えてくれた。


 「権能は基本的には似通った性質を持っているが個人個人で結構な差があるんだ。唯一の共通点は“相手の能力との相性が有効になる”んだ」


 「じゃあ魂能には相性が無いんですか?」


 「いや、完全に無いわけじゃないんだ。さっき族長が難しいと言っていたように俺もうまく説明できん。少なくともこの場にいるメンバーの中に詳しい奴がいれば説明できたんだが、すまんな天ちゃん」


 幽仁さんは風立さんに礼を言って言葉を続けた。


 「とりあえず天ちゃん、権能の獲得おめでとう。そのことについてはせっかく学園に通うんだし先生とかに聞いてくれ」


 「わ、わかりました」


 幽仁さんはなにかをふと思い出したのか私を呼び止めた。


 「そうだ天ちゃん、学園に提出する書類に種族名を書かなきゃなんだが、天使と龍神のハーフはなんて書けばいいと思う?普通なら姿は変わらないからそのまま龍神族で出すんだけど、翼があるから何か別の種族名を書かないとダメかもしれないし」


 そんなこといわれてもなあ。天龍?天神?龍使とか?


 「なあなあ、幽仁様。こんなのはどうだ?___」


 どうやら私の種族名を考えはじめたみたい。水の家門代表ルイさんは比較的どうでもいい事をしゃべり始めたからなのか「帰ります...」と小声で言って部屋を出て行った。ルイさんは無口な人。だから私以外の人は部屋を出たことに気づいていない。なので私もそれに乗じてこっそり抜け出すことにした。

 正直どうでもいいし。部屋から出ると大きな桜の木がある中庭に出た。中庭には月光に照らされた大きな桜の木が一本。私は頭の角に落ちてきた花びらを取って、ふと明日入学式の日なんだなと思った。


 「はあ、疲れた」


 自分の部屋に戻ろう。部屋に入ると準備途中の入学式の荷物が散らばっている。それらを無視して私はベッドに座った。

 さっき楼玄さんが言っていたが、私は学園に通うことになっている。”日本”の黎界に学園は一つしかない。正式名称は魂管理局付属学園というらしい。長い。学園でいいや。そこは将来管理局員になるための教育が行われている。


 私の父は龍神、母は天使、その特殊な生まれのせいなのか普通血が薄れないと言われている龍神族の強靭な肉体に天使の羽が一対。変なのは見た目だけじゃなく、その体の構造もだ。そのせいで幼少期は体が弱かった。何度も入院したり、家で熱を出して倒れたりしていたせいで、私は同世代の子が学校に通っているなか外に出ることすら難しかった。

 だからといってめちゃくちゃ楽しみかと言われればそうでもない。こんな見た目をしているので学園生活の中で避けられたり変な目で見られそうで少し怖い。でも楽しみなのも事実だ。というか友達欲しい。

 当然、まともに運動したりすらできなかった私が家から出られるわけもなく、人付き合いの経験もないので友達の作り方すらわからない。いくら考えても


 

  検索   友達の作り方


       ↓


  検索結果 見つかりませんでした


  もしかして ぼっち



 こうなる。というかもしかしてぼっちって何!?なんで私の脳内検索エンジンに煽られてるの!?正論だからぐうの音もでないけども!

 ...話を戻すと、友達の作り方がわからないのにそもそも友達がいないせいで友達の人脈を使って知り合いを増やすことすら難しい。詰んだ。泣いた。


 もう一つ不安要素があるとすれば鏡の権能が使えないことだ。能力を二つ持っている人は一つずつ体が適応していくため、一つは使えてももう一つが使えないことがたまにあるらしい。

 別に焦ってはいない。氷の魂能は使えるし、鏡の権能もいつか使えるようになるでしょと、思っている。


 私は床に散らばっている教科書をカバンに詰めていき、枕元に立てかけた。明日が入学式なので一緒に制服も準備しておく。そばにあった時計を見ると0時を過ぎていた。もうこんな時間か、準備も済んだことだし、さっさと寝よう。

 

 私はベッドに横たわり、まぶたを閉じた。




ーーーーーーーーーー



 翌日、耳障りな目覚まし時計の音と共にまぶたを開けて天井を見る。


 「うるさい!」


 バリンッ____と少し変な音を立てて静かになった。


 「ああ...またやっちゃった」


 一日が最悪の気分で始まった。時間を見ようとしたが、手刀が目覚まし時計を貫通しており何時なのかわからななった。おそらく犯人はこの腕の持ち主であろう。私である。重い体をベッドから起こし鏡を見る。私の髪は毎日の手入れを嘲笑うかのように爆ぜている。

 はぁ、今日入学式なのに...ツイてないなぁ。部屋から中庭へと出て朝食を取る為にキッチンのある部屋へ向かう。そこではすでにタマさんが朝食を作り終えた後だった。


 「タマさぁん、髪の毛見てくださいよぉ」


 「あら、今日の寝ぐせははねてるというより爆ぜてるわね。もう朝ごはん出来てるから、早く食べて身支度しなさい」

 

 「あと目覚まし時計壊しちゃいました」

 「在庫はまだあるから、後で取り換えておくわね」


 私は昔から力の調節が苦手だった。おそらく私がハーフだからそのあたりの感覚が鈍いのだろう。そのせいでよく物を壊していた。特に目覚まし時計。なので頻繁に新しいものに取り換えたりしていた。それが続き、ついには在庫なる者まで出来てしまった。言い方が悪くなるが、家が金持ちでよかった!

 カウンターに置いてあった朝食を手に取り、それをテーブルに置いて席に着いた。「いただきます」と言いタマさんの手作り絶品朝ごはんを噛みしめる。


 「やっぱりタマさんの作るご飯は絶品ですね!」

 「ありがとう、毎日美味しそうに食べてくれて私嬉しいわ!」

 

 そんな会話をしていると次第に寝ぼけていた頭が冴えてきた。

 我が家では朝食はタマさんが作って各々のタイミングで食べる。仕事などのせいで一人ひとり生活リズムが違うのだ。龍神族の屋敷、もっと正確に言うなら族長の屋敷で暮らすようになってから管理局で働きづめのお母さんに代わって、タマさんに色々と世話になっている。皿に残った最後の一口を箸で口に運ぶ。


 「ごちそうさまでした」


 食器を片付け、タマさんに礼を言ってから部屋を出た。自分の部屋に戻り、身支度をしながら荷物の再確認をした。ベッドのそばに用意してあった制服にそでを通すと、改めて学生になったんだなと実感した。

 最後に腕時計を手首につけようとした時、現在時刻8時20分という情報が目に入った。入学式開始時刻は8時45分だが、最低でも30分には学園についてないといけない。ちなみに、この屋敷から学園まで徒歩だと50分、龍神族の全力ダッシュで20分である。

 

 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずまずままままままままままままままままままままままままま!!!!!!!!!!!!!!!!!


 まずいがまだけになってしまう程焦りながら荷物を持って、玄関へ走った。もう最悪だ!くそっ、あの時時間さえ確認できていれば!もしこのまま遅刻したら目覚まし時計壊したやつ一生許さないから!....その犯人には心当たりがある、私である。

 タマさんとすれ違い様に「行ってきます!」とだけ伝えて玄関で靴を履く。その勢いのまま外へ飛び出し、全力で”空を飛んだ”。そうこの翼はプラスチック製のコスブレ用品でも、相手を委縮させるためだけの物でもない。飛べるというならこういった状況に飛ばない方がおかしいというものだ。

 

 本来の予定なら徒歩で向かうつもりだった。通学路を把握しておきたかったってのもあるけど、何より空を飛んでいると目立つ。一応制服を着ているとなると学園にクレームでも入れられたら面倒なことになりそうだし。

 ちなみに学園と管理局は隣接しており、このあたりで一番大きくて真っ白な建物が管理局なので自然と学園の位置もわかるのだ。そんなことを考えていると学園が見えてきた。建物は三階建てで、外見はレンガで作られた周りとは一風変わっている。

 いきなり校門に直接降りるのは目立つし、教師の方々や同級生に悪い印象を抱かれるのはいやだからやめておこう。私は校門より少し手前に降りて校門を歩いてくぐる。腕時計を見ると8時28分だった。付近には新入生を案内するための教師と思われる人が複数人立っていた。


 若干その人たちに{絶対急いでたなこいつ...}みたいな目で見られた気がした。私は少し荒れた呼吸を整えて{え?めちゃくちゃ予定通りですけどね}みたいな雰囲気を醸し出して乗り越えることにした。案内に従い進んでいくと下足場に着いた。

 するとそこにはクラス分けが書いてある紙が張り出してあった。人混みの中、私は目を凝らして上から順に自分の名前を探す。幽仁さんから聞いた話によると、クラスとは名ばかりで実際は学園側が生徒一人ひとりにあった授業を組むため、クラスで集まるのは朝礼時を終礼時くらいらしい。


 「あ、あった」


 1-1

 ・

 ・ 

 ・

 ・

 ・

 ・

 雪羅 天




 どうやら私は1-1らしい。教室の位置も分かったので人混みの中から脱出して、校舎の中へと入った。中はだだっ広い廊下に大きな教室、しかも隅々まで手入れが行き届いている。私の教室は一階にある。

 人混みの中から一瞬だけ見えた校舎の地図を必死に思い出しながら廊下を進んでいく。すると目当ての教室の前に着いた。


 ここが、これから私が通うことになる教室か、どんな人がいるんだろ。友達出来るかな?少々不安もあるが、期待に胸を膨らませながら教室の扉を開ける。するとそこに広がったのは楽しそうな空気に包まれた教室とクラスメイト達...ではなく見知らぬ少女のつむじであった。

 それに反応する間もなく追突し、その少女ごと後ろへ吹っ飛んだ。


 「ご、ごめん。大丈夫?」


 「大丈夫」と答え立ち上がり、その水色の髪をした少女に手を差し伸べた。「あ、ありがとう」と言いながら私の手を取った。どうやら私よりその少女の方がダメージが大きいらしく、少しフラフラしている。私は痛かったのはぶつかった瞬間だけで、それ以降は何ともない。まぁ私、龍神族だから頑丈だしね。


 「私、時雨 雫。これからよろしくね!」


 私は不意に自己紹介され少し驚いた。まさかこんな所で顔見知りができるなんて思ってもいなかった。


 「あ、私は雪羅 天です。よろしく」

 

 私も咄嗟に自己紹介をした。もしかしたらこの人とは、友達になれるかもしれない。教室へと入る前に、抱えていた不安が一個消え去った。


 「そういえばなんであんなに吹っ飛ぶようなことになったの?」


 純粋な疑問を投げかけた。普通ならあんなことにはならない。誰かが暴れたりしたのだろうか?


 「ああ、それはね...」


 そう言って時雨さんは教室の中を指差した。その方向を見ると男子が三人、教室の真ん中で威張るような態度を取っており、クラスメイト達から敵意を向けられていた。


 「あいつら、このあたりじゃ有名な悪童なの。それだけだったらまだマシだったんだけど、あいつらの親が管理局でそれなりに地位が高いから誰も強く注意できないの。こんなことしてる理由は、各クラス内で人間関係が出来上がる前に自分たちの地位を固めるためみたい。そのためにわざわざ隣のクラスからウチのクラスまできてるの。クラスの子をいびったり悪口を言ったり、ひどいときは殴ったりしてた。何か言ったらやり返されるって目に見えた。でも私我慢できなくて、思い切って注意したら突き飛ばされちゃった」


 「そうなんだ...」


 その話を聞いて、正直関わりたくないと思った。でも席に着席しておかないといけない時間が迫ってきている。どうしよう、この状態の教室に入りたくないなぁ。でも入らないと初日から遅刻者のレッテルを貼られることになる。


 「はぁ、仕方ないか」


 私は教室へとあしを踏み入れた。


 「雪羅さん?今入るのは危ないよ!」


 私の作戦はこうだ。あの三人組に見つからないようにしれっと教室に入り、そのまま着席するというものだ。隠密作戦、我ながら完璧である。

 そのまま黒板の前まで足を進ませ、自分の席の位置を確認し、そのままそこへ向かおうとした。その時、


 「お前、ここのクラスの奴か?」


 その言葉と同時に、教室内にいた人たちが私に視線を向ける。見つかった.... 隠密作戦、失敗。私はこの状況からどうすれば抜け出せるのか頭をフル回転させる。


 「おい、聞こえてんのか?お前ここのクラスかって聞いてんだよ!」

 「そうだそうだ!」

 「親分を無視するな!」


 親分と呼ばれているものに続き、その取り巻きも私に絡んできた。ああ、教室に入らなければ良かった... 

 

 「まぁ、そうですけど」


 無視し続けるのもそれはそれで状況が悪化しそうなので、一応質問に答える。三人組が互いに向き合って何やらコソコソと話し、再度こちらを向いた。


 「お前、自分が一番賢いクラスになったからって俺らのこと見下してるだろ」


 は?そもそもこのクラスが一番賢いなんて初耳なんですけど?どうやってそんな風にクラス分けしてるの?入学が決まった時もテストみたいなのも受けてな____ 

 あ~、もしかして私裏口入学させられてる?まさかここに来てこんな説が浮上するとは... そのことに驚いていた私は少しの間フリーズしていた。それが気に障ったのか三人組が詰め寄ってくる。


 「おい、俺のこと無視すんじゃねぇよ!」


 「は、はぁ」


 なんかもう面倒くさくなってきた。私は三人の隙間から抜け出そうと試みたが、それは取り巻きに阻止された。


 「逃がさないぞ。お前みたいな気色悪い羽が生えてる奴は嫌いなんだよ!」


 その一言が私の琴線に触れた。別に私だけに悪口を言うのはまだ良いが、羽が生えてる奴と私以外の人たちも貶したのが、気に食わない。親分と呼ばれている男子はその言葉を発すると、殴りかかってきた。

 私は軽々とその拳を受け止めた。


 「こいつ...力強っ!」


 そもそも龍神族に殴りかかってくるのは頭が悪いとしか言いようがない。私はその拳をつかんだままそいつを後ろへと放り投げた。


 「親分!」

 「こいつ!」


 取り巻きの二人も続いて殴りかかってくる。二人は少々面倒だな。私はさっきと同じように拳を受け止め、反撃の隙を与えないように魂能で腕だけを凍らせた。後ろに振り返り親分の様子を確認する。どうやら少しのびているようだ。


 ふぅ、あれ?ちょっと待って?いくら相手の方から襲ってきたとはいえ、この状況を教師に見られたら私が暴れたみたいに見えるじゃん!まずいかもしれない... もしこれで退学とかになったらどうしよう。

 そんなことを考えていると後ろから時雨さんが駆け寄ってきた。


 「すごいよ雪羅さん!」


 その言葉をきっかけにクラスメイト達からお礼や賛美の言葉が上がった。まさかこんなことになるとは、でもこのおかげでクラスには馴染めそうでよかった!


 「でも大丈夫なの?あいつの親に嫌がらせとかされたりするかもしれないよ?」


 ...完全に失念していた。そういえばそんなことを時雨さんは言っていたような気がする。


 この件は、{幽仁さん、そっちは任せた!}ということで処理しておこう。あの人に任せておけば大抵の事はどうにかなるだろう。後ろから何かが近づく気配がし、後ろを振り向くと親分が再びこちらに近づいてきていた。こいつまだやる気なの!?


 「クソがッ!」


 そう言って再び殴りかかってくる。学習というものを知らないのだろうか。これ以上この状況が続くのはあまり好ましくない。今度は拳を受け止めるのではなく受け流し、見えた首筋めがけて手刀を放ち気絶させようとした。だが、そうはいかなかった。

 その手刀は何者かに止められた。


 「そこまでだ、”未熟”者ども」


 そこには妖狐族の女性が立っていた。私は手を振り払い一歩後ろへ下がった。このタイミングで来たということはこの人がこのクラスの担任なのだろう。妖狐族、初めて見た。その大きな尻尾と獣耳が大きな特徴で、魂能も幻術系の者が多いらしい。


 「いきなり初日に退学させられたいのか?」

 「私が一方的に暴力を振るったと考えられているかもしれませんが、この人たちが先に襲ってきたのです」


 とりあえずこの人がどんな人かもわからないので、誠心誠意釈明してみる。


 「つまりお前は無実、正当防衛だと?」

 「はい」

 「証拠は?」


 証拠も何も事実だって!どうしよう、証明できるような物がない。私がどう回答するか考えていると、時雨さんが私の代わりに反論してくれた。


 「あります!この人、雪羅さんが何も悪くないのはここにいるみんなが目撃しています!」


 他にも私を庇うような言葉が教室中から聞こえてきた。


 「つまりお前ら自身が証拠だと?...いいだろう、この件は見なかったことにしておこう」


 た、助かった。クラスのみんなが優しくてよかった~。


 「さあ、入学式だ。準備の出来た者は体育館へ向かえ。あと雪羅」

 「はい」


 もしかして説教だったりする?


 「こいつらの腕の氷、お前の魂能だろ?溶かせ」

 「生憎と私は”未熟”なもので、そんな芸当はできません」


 このくらいの皮肉は言っても良いだろう。先生がもっと早く教室についていたらこんなことにはならなかったはずだ。実際、私は魂能で作ったものを溶かせないし、嘘は吐いていない。


 「フン!もういいさっさと行け」

 

 明らかに機嫌が悪くなったのが見て取れる。案外私はいい性格してるのかもしれない。私は一度席に荷物を置いてから教室を出た。外では時雨さんが私を待っていてくれた。


 「時雨さん、ありがとね」


 「ううん、こちらこそあいつら追い払ってくれてありがとう!行こう!」


 時雨さんに手を引っ張られながら体育館へと向かった。



ーーーーーーーーーーー


 体育館に着いた。が、そこは体育館というにはあまりにも多機能だった。トイレなどの標準装備はもちろん、中心に大きなホールがあり、そこから枝分かれするように射撃訓練室、戦闘訓練室、などの様々な機能を備えた部屋がたくさんある。体育館より訓練棟と言った方がいいかもしれない。

 入学式はその真ん中の大きなホールで行われる。出席番号などは無いため、クラスごとに早く着いた者から順に二列で並ばされた。私と同じ一年生はここにいるのが全員だとすると、180人位だろうか。


 壇上に一人の女性が立ち、マイクを軽く叩いてざわついていたホール内を静かにすると同時に全員の注意を引いた。


 「私は司会を務める事となった、魂管理局付属学園教頭の加賀音かがねである。まずは学園長からの式辞だ」


 奥から長髪の男性が出てきて、加賀音さんからマイクを受け取った。


 「私はこの学園の学園長、マガツヒと申します。まずはこのような簡易的な入学式しか行えず、申し訳ございません」

 

 学園長は軽く頭を下げ、話を続けた。


 「こうなってしまった理由としては、急激な人口増加による人員不足で皆さんをなるべく早く管理局員にするために大幅なカリキュラムの変更を行ったためです。なのでいきなりですがこの後、皆さんにはちょっとした能力検査のようなものを受けていただきます。最後に、改めてご入学おめでとうございます」


 そういって学園長は式辞の言葉を閉めた。それからも入学式は駆け足で進められた。普通の入学式とは違って、在校生代表の挨拶や担任の紹介などは無かった。


 「これにて入学式を終わります。各教室に戻り担任の指示に従ってください」


 随分とあっさりした入学式だったなぁ。なんか思ってたのと違う。


 「思ってたのと違う...」


 時雨さんも同じことを思っていたようだ。私たちは人の流れに身を任せて教室へと戻った。教室に入ると、さっきの妖狐族の女性が教卓の辺りで待っていた。


 「帰ってきたようだな。お前ら席に着け、これからの予定について説明する」


 それからほどなくして私と雫さん以外の全員が帰ってきた。 



 

 「このクラスの担任になった妖狐族の陽目だ。これからよろしく頼む。さっそくだが、これからさっき学園長が言及していた検査、というよりも試験を行う。試験といっても今、お前らにどれほどの戦闘能力があるか調べ、その結果が管理局への配属先を決める際の選考に使われる」


 結構重要な試験っぽいな。ちょっと緊張してきた。隣に座っていた雫さんが手を挙げて質問した。


 「試験はどんなものなんですか?」


 「最新鋭の実体ホログラムで再現された縛霊ばくれいとの戦闘だ」


 教室の中がざわめく。縛霊、ニュースや専門誌では特定の空間で発生する謎の怪物と説明されていて、極めて近接戦闘能力が高くそれを狩る専門部隊が作られたほどに黎界では問題となっている。問題の割には姿や特徴が管理局の厳しい情報統制のもと非公開となっている。

 その専門部隊は管理局に属しているので私たちの配属先にも含まれている。それを想定した試験なのだろう。


 教室の扉が開き、一人の女性が入って来て陽目先生に耳打ちした。


 「そうか、わかった。........では準備の出来た者から体操服に着替えて第一訓練室に来るように。ちなみに更衣室は訓練室の隣にあるぞ」


 そういって先生は教室を出た。入学してからいきなりの試験が重すぎる... もうちょっと事前に告知するとかあったでしょうに。まぁ今更文句言っても変わらないか。


 「雪羅さんどうしたの?不安なの?」


 どうやら表情に出ていたらしい。


 「うん、いくらホログラムで再現された縛霊だからって強さもわからないし、どんな姿をしているのかすらわからない。誰だって不安になるよ」


 「大丈夫だって!さっきもあれだけ強かったし問題ないよ!きっと何とかなる!」


 時雨さんに若干の敬意を抱いたところで、クラスメイト達がぞろぞろと移動し始めた。


 「時雨さん、私たちも行こう」

 

 持ってきたカバンの中から体操服を取り出し、訓練室の隣にあるという更衣室を目指して教室を出た。



 


 着替えを済ませ、訓練室に入るとただただ広い空間が広がっていた。


 ん?更衣室はどうだったかって? 実はあまり覚えていない。うっすらと覚えているのは時雨さんが壁に穴を空けようと壁をこすっていたことだろうか。 ......確か隣は男子更衣s__うっ、頭が!


 まぁこの話はこのくらいにしておいて。その部屋はあたり一面真っ白で不思議な雰囲気だった。


 「全員集まったな。ではルールを説明する」


 先生の話を要約するとこうだ。

 1、武器は一番自分の扱い慣れているもの、一番使えそうな武器を使う。

 2、魂能・権能は使用可能

 3、制限時間は5分

 4、評価は倒せたか否かではなく、戦闘内容で決まる


 「シンプルで分かりやすいだろ?ああ、そうだ。権能とは何かと気になっただろうが持っていないも者が知る必要も__そういえばいたな、このクラスにも権能持ちが」


 はーい、私で~す!


 「はぁ、本来なら授業でやる内容なんだがな。ではまず権能について説明する前に魂能について説明しておこう。一般常識だから皆も知っていると思うが魂能とは【魂に付属する能力】の略称だ。魂の活力、霊気れいきというものを消費して発動することができる。その量は一人ひとり違ってくる。ちなみにこの部屋は今この瞬間もお前らの霊気の量も図っている」


 ここまでは私も知っている。魂能検査では能力はわかるけど霊気の量ってどうなんだろう?霊人の平均霊気量は数値化すると一万五千程だと言われている。陽目先生は話を続けた。


 「魂能・権能には属性があり、それには相性がある。わかりやすい例だと、火は水に弱いといった感じだな。霊気を消費して能力を発動し、生成した物質を霊気で操る。魂能では霊気で操っている間は属性が有効になるかはそこに込められた霊気の量で決まる。例えば、先ほどの火と水の場合、水に込められた霊気が火の方が多ければ、それを操っている間は火は水に消されない。もちろん、燃え移ったものは霊気の制御下に無いので水で消すことができる。つまり霊気の込め具合によっては属性が無効になるということだ」


 逆の場合、属性的に火は水に弱いから消火されてしまうってことか。


 「これが権能になると素の出力が高く、”相手の込めた霊気の量に関係なく”属性が有効になる。水だけが権能で火が魂能だったとすると、いくら火に霊気を込めようが水に消化される。火が権能であっても同じだ」


 家じゃ詳しい人がいなくて中途半端な説明されてむずむずしてたけど、ちゃんとした説明してもらえてすっきりした~。でも、私の権能って”鏡”だよね?属性の相性とかってあるのかな?光とかなら跳ね返せそうだけど...


 「出力という点では権能が上だが、属性の相性がある分一概に魂能の方が劣っているとは言えない。わかったか?お前のために説明してやったんだぞ、雪羅」

 「えっ、権能持ちなの雪羅さん!?」


 そう言って時雨さんが私を好奇の眼差しで見つめてくる。うわ~、この人絶対私の事嫌いだ!さっき皮肉なんて言わずにおとなしくできませんって言っとくべきだった!心なしか先生がうっすらと笑っているように見えた。

 はい、今この瞬間から私も先生のことが嫌いになりましたっ!


 「さて、一般常識を確認したことだし、さっそく試験を始めようか」


 その一言を皮切りに私たちの試験が始まった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 天たちの試験が始まる少し前、同訓練場の監視室にて___



 「あれ?カグツチさんやん、珍しいなぁ。今まで全然来やんかったのに」


 カグツチと呼ばれた赤髪の男はモニター越しに訓練室の様子を見ながら口を開いた。


 「ああ、俺らもさすがに二人じゃ回らなくなってきてな」


 「そらそうやろ。逆になんで今まで回ってたのがおかしいんよ」


 モニターには1-1が入ってくるのが映った。それを見て紫がかった髪をした少女は深いため息を吐いた。


 「それにしてもこの子達可哀そうやなぁ。なにも知らないのに入学していきなり縛霊と戦闘しろなんて、ウチら保安隊でもたまに手こずったりするのに。しかも一か月後から学校に通いながら管理局員として経験を積ませるなんて」


 「まぁ、こんなことをやっている時点でどれだけ人が足りてないかお察しだよな」


 ガチャ__とドアの開く音がすると、ガタイのいい大きな男が入ってきた。


 「霧音隊長、もう始まってますか?」

 「いや、まだやで。豪塚、そっちこそもう終わったん?」


 「ええ、あちらのクラスは皆とても優秀でしたよ。そういえば、中枢管理課の方はまだ来られてないのですか?からくり課の方が来ないのはいつもの事ですが」

  

 それに答えたのはカグツチだ。

 

 「ああ、いつもなら”アマテラス”がくるんだが.....どうやら今日は違うみたいだ」


 保安隊の二人がドアの方に目をやると、入ってきたのは雪羅 冷華・中枢管理課のナンバー2である。彼女は用意されていた椅子に腰かけた。


 「カグツチさん、いくら特命課の課長だからってアマテラス様を呼び捨てにしないでください。あなたは前と違って管理局員なんですから、上下関係は守ってください」


 雪羅 冷華、バリバリの仕事モードである。


 「聞こえてたのか...そういうお前こそ、仕事はどうしたんだよ。こういうのはいつもアマテラスが来るだろ?」


 「今日は私の娘がいるので___全部アマテラス様に押し付けてきました」

 「さっき上下関係守れって言ってたのお前だよな!?」

 「それはそれ、これはこれです」

 「いや、それもこれだよ!」


 そんなくだらない会話を監視室に響かせていると、また誰かがこの部屋に入ってきた。


 「皆さまここまでご足労いただきありがとうございます」

 

 学園長、マガツヒだ。その手に持っていた紙の束をカグツチ以外の三人に渡した。


 「まさか、あれだけ新人は入れないと言っていたカグツチが来るとは」


 「来ちゃ悪いか?さすがに俺とあいつだけじゃ回らなくなってな」


 「いえ、そんなことはないですよ。ただ、来ると思ってなかったのであなたの分の学生の資料を用意していません」


 「いいよ、俺には入れたいと思ったやつの資料を後で送ってくれればいいから」

 「わかりました、ではそうするとしましょう。それはそうと、もう始まるみたいですよ」


 モニターには様々な視点から生徒と再現縛霊との闘いが映し出された。最初の生徒の武器は銃剣のようだ。

 

 「あ~、やっぱり遠距離戦を選ぶよなぁ」


 カグツチが残念そうにそう言った。それに霧音が反論するように


 「そらそうやろ。近接戦で縛霊に勝とうなんてウチら保安隊の分隊長クラスか身体能力の高い種族、それこそ龍神族とかしか無理やって。あんたがおかしいだけやで」


 「まぁ俺が異常なのは自覚してるが、特命課は近接戦闘が得意な奴じゃないと務まらないんだよ」


 モニターには最初の生徒が縛霊に近づかれ、武器に攻撃され手放してしまったのが映っていた。


 「あーそれが今までこのスカウトに来なかった理由か!確かに、今の時代銃での遠距離戦が戦い方の主流で近接戦闘は時代遅れ!なんて言われてるもんなぁ。今更刀とか使うやつ居んのかな?」


 今まで黙って会話を聞いていた冷華がカグツチに質問した。


 「近接戦が得意とはいかなくても身体能力が高い人が欲しいんですか?」


 「ああ、剣術は教えるとしても、身体能力はどうにもならないからな」


 「近接戦闘が得意かどうかは知らないですけど、身体能力が高い生徒ならいますよ」


 カグツチは少し前のめりになり聞き返した。


 「誰だ?そいつは」

 「あ、ちょうどその子の番見たいですよ」


 モニターには白い髪に数本の水色のメッシュ、特徴的な角と翼をもっている少女が映っていた。


 「あの子がお前の娘か」

 「ええ、そうですよハーフとはいえ龍神族ですから身体能力は折り紙付きですよ」


 天はどの武器を使うか迷っているようだ。その状態が少し続いたが最後に手にしたのは時代遅れの”刀”だった。


 「だからといってあなたにうちの娘を渡すつもりはありませんけどね」


 運命を決めるといっても過言ではない天の試験が始まった。



  


 

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