スキル【無】の俺が世界最強〜スキルの無い人間は不要と奈落に捨てられたが、実は【無】が無限に進化するSSS級スキルだと判明。俺をバカにした奴らが青ざめた顔で土下座してるけど、許すつもりはない

茨木野

第1話 クラス召喚、からの追放

 俺の名前は【松代まつしろ 才賀さいが】。

 私立アルピコ学園、1-E組に通う、どこにでもいる男子高校生。

 

 体力、学力ともに平凡。

 友達はいない。


 クラス内でのカーストは底辺。

 部活には入ってない。趣味はネット小説を読むことくらい。


 ……そんな俺は現在、白い……何もない空間にいた。


「ど、どこなのここ……?」

「さっきまで教室の中にいたのに……!」


 周りには、俺と同じ、1-Eのクラスメイトたちがいた。

 彼らも、俺と同様に、今の状況を理解できないでいた。

 

「こんにちは~! 勇者候補の皆さんっ!」


 ふと、女の声がした。

 俺たちの頭上には、銀の髪をした……綺麗な女が空中に立っていた。


「な、なにあのひと……?」

「きれい……」

「いや空飛んでね!?」


 ……白い空間。それに、神的な存在。

 俺の脳裏には、【異世界転生】という言葉がよぎっていた。


「はい、そこのモテなさそう男の子、松代まつしろ 才賀さいが君の言うとおり!」


 ……女が俺の名前を言い当てた。

 いや、名前だけじゃない。もしかして心を……。


「そうですよ~! 心を読めちゃいます! なぜって? 私が神! だからでーす★」


 やっぱり……そうか。

 ネット小説でよくある展開だ。


 神様の手違いで死んだ人間たちが、白い空間で神様と出会い、チート能力を付与されて異世界に転生する……。


松代まつしろ 才賀さいが君の言うとおりです。ま、今回は別に手違いじゃないですけどね★」


 ……どういうことだ?


「簡単に言いますと~。アルピコ学園1-Eの皆さんには、これから異世界転生してもらいます! そして、向こうの世界で勇者として活躍してもらう感じでーす!」


 女神が簡単に説明する。

・クラスメイト40人、全員現実では死んでいる

・これから剣と魔法の異世界にいってもらう

・文明のレベルは中世ヨーロッパ

・魔物も魔族も魔法もある世界

・これから40人に、現地の人間として転生してもらう

・そして成長したら勇者として、活動してもらう

・転生者特典として、勇者適正に合わせてスキルを付与する


 ネット小説でよく見る展開だ。

 俺は……少しわくわくしていた。


 俺はこの現実ってものが、結構嫌いだった。

 見た目も平凡、秀でた才能もなく、学校ではいじめられてた。


 くそな現実を捨て去り、異世界で人生リセット。

 しかもチート能力をくれるという。


 最高じゃないか……と思っていたのは、このときまでだった。


「あーでも、松代まつしろ 才賀さいが。君はこのまま廃棄されま~す」


 ……。

 …………。

 ……………………は?


 この女神……今、なんつった?


「だからぁ~。松代まつしろ 才賀さいがくんはぁ~。廃棄されまーすって」

「は? いや……ど、どういう……」


「君のね、勇者適性は……【F】!」

「ランク……F?」


「そう! 勇者適性って言うのはね、文字通り勇者にどれだけ向いてるか、可視化したものなのよ★ 最高がS、で、ABCDE……。で、君のランクはF! てゆーか、Fなんてあったんだ! ってかんじいぃ~?」


 ……な、なんだその言い方。

 ランク付けしてるのはこいつじゃないのか……?


「適性振り分け作業は外部委託してるのよね~。最低はEだと思ってたけど、まさかFがあるなんてね。女神、ちょーびっくり★」


 ……一転、冷たい表情で、女神が言う。


「悪いけど、ランクFなんてお荷物、というかお荷物以下。だから、君は、新しい肉体を与えず、このままの状態で異世界にポーイ★ させてもらいまーす」


 え、は、は……?

 異世界に……ぽーい……だと?


 つまり……捨てる……? どこに……?


「こわーいモンスターのうろつく、やばーいダンジョンでーす! 君はそこで死ぬのDeath★ スキル【無し】の、Fラン勇者君」


 スキル……【無し】……?


「そ。君たちには、才能、適性に応じて、スキルっていうすごい力が与えられてます! で、松代まつしろ 才賀さいがのスキルは……【無】! つまりこれぇ、スキルがないってことなの! ありえなーい。スキルは一人に必ず最低は1コあるのにね★」


 瞬間、俺の目の前に、半透明の窓みたいなものが開く。


~~~~~~

松代まつしろ 才賀さいが

レベル1

スキル【無】

~~~~~~


 確かに、スキルが……ない。


「それはステータス。君たち転生勇者の能力を見えるようにしたものだよ。ステータス展開オープンって唱えれば出てくるからね★」


 何度も、俺は自分のステータスを見る。

 スキル……【無】


 何度見てもスキルは無しでしかなかった……。


「はい君が落ちこぼれの無能だってことはわかったね? じゃ、ポイ捨てのお時間で……」


 そのときだ。


「ちょっと待ってよ!」


 声を張り上げたのは……。

 クラス一の美少女……。


神坂みさかさん……」


 長い黒髪、ぱっちりとした二重、そして……綺麗で大きな瞳。

 クラスの人気者の女子生徒、神坂みさかさんだ。


「どうして松代まつしろくんを捨てるのっ? 彼が何か悪いことしたのかなっ? ただ適性がFってだけなんでしょ!」


 神坂みさかさんが俺をかばってくれている。

 優しい子なのだ……。


松代まつしろ君をダンジョンに捨てるなんて、そんな酷いことしちゃだ…………かはっ!」


 神坂みさかさんが突然、自分の喉を押さえて苦しみだした。


「愛ちゃん!?」


 神坂みさかさんのそばに、金髪の女生徒が近づく。

 彼女の友達、洗馬せばさんだ。


「愛ちゃんしっかりして!? どうしたんだい!?」

「まぁ大変! そこのFラン勇者が、Sランク勇者、神坂みさかさんに呪いをかけてしまったわ!」


「なっ!? 呪いだって……!?」


 なんだよそりゃ!?

 知らねえぞ!


「どういうことだ……?」「松代まつしろのやつが呪いをかけたって……?」「Fランク勇者ってそんなことができるのか……?」


 クラスメイトたちが、俺に疑念のまなざしを向けてくる。


「お、俺じゃねえよ! なんだよのろいって! そんなもん使えるわけないだろ!? だいいち、俺がやったって証拠あんのかよ!?」


 しかし……。


「いや、でも呪い、使えるかもしれない」

「そうだよ、Fなのおまえだけなんだろ」


「そうそう、ランクFはスキルが無い代わりに、のろいが使えるのかも……」

「それで神坂みさかを攻撃したのか?」


「うっわ、松代まつしろさいてー。自分をかばってくれた人に呪いをかけるなんて……」


 なんだよ……なんなんだよ……!

 クラスメイトの連中、なんで俺を悪者にしようとすんだよ!


「ちが……」

「黙ってろよカス」


 どがっ!


「がはっ……! き、木曽川……」


 クラスのいじめっ子、木曽川きそがわが俺を蹴飛ばしてきた。


「現実でもおまえは無能だったんだ。Fランは当然の結果だろう。無能のカスが」


 ……木曽川。

 現実にいるとき、俺のことをいじめてきやがった、最低野郎。


「無能のくせにそのうえ、能力のあるやつに呪いをかけるようなゴミカスは、このクラスにはいらねえんだよ!」

「そうだそうだ!」「消えろ松代まつしろ!」「最低のFラン勇者が!」


 なんだよ……

 なんなんだよおまえら……!


 同じクラスの仲間だと思っていたのに……!


「……!?」


 女神が、クラスメイトたちの後ろでニヤニヤと笑っていやがった。

 やっぱり、呪いなんて嘘っぱちなんだ!


 神坂みさかさんを気絶させたのは、あいつだ!

 自分がやったって思われたくなかったから、罪を俺になすりつけやがったんだ!


 ……許さない。女神も、俺をいじめた、木曽川も……。


「はいじゃあ松代まつしろ 才賀さいが。スキル【無】の君は、これからダンジョンに送られます。最後に何か言いたいことがありますかぁ~?」


 俺の足下に魔法陣が出現する。

 ……どうやら、転移みたいな魔法で飛ばすんだろう。


 最後に言いたいことがあるかって……?


「くたばれ、ゴミカスども!」


 魔法陣が強く輝くと……。

 俺は、気を失ったのだった……。


 ……。

 …………。

 ………………で。


「どこなんだよ……ここ……?」


 気づけば、俺は暗い洞窟の中にいた。

 くそ女神の言うことがほんとうだったら、ここはダンジョンで、魔物がいるやばいとこ……ってことになる。


「魔物……どんなのが……?」


 そのときだった。


「JURARARARARARAAAAAAAAAAAA!」


 ……俺の目の前には、でかい蛇がいた。

 ただの蛇じゃ無い。


 体からポタ……ポタ……と液体を分泌。

 その液体が地面に触れた瞬間……。


 ジュオォオオ!


 地面が、溶けたのだ。

 つまりあれは……見上げるほどの大きさの、くそでかい毒蛇ってことだ!


 ネット小説の知識と照らし合わせると……。


「ヒドラ……」


 ……嘘だろ。

 こっちは、スキル【無】の、Fランク勇者だぞ……?


 ヒドラなんかに、勝てるわけ無いだろ……!

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