幽霊 ホロウ

雨世界

1 愛は病である。

 幽霊 ホロウ


 登場人物


 マゼンタ・Q・ジラ マゼンタ色の髪をした猫っぽい少女 十五歳 スパイ


 みちびき UFO 人工知能


 浮雲ひまわり 黄金色の髪をした美しい少女 天才 十五歳 マッドサイエンティスト


 幽霊 ホロウ ひまわりが作り出した禁忌の生命体 ぶかぶかな袖の大きめのフード付きコートを着ている。 九歳 子供


 三つ星みずあめ 青色の髪をした発掘士の少女 十五歳 ジラのパートナー


 プロローグ


 SOS


 愛は病である。


 ある砂漠にある、地方に残る古い言い伝え


 子供の目を通してまだ見ぬ世界を見ること。

 子供の耳を借りて遠い異国の風の音を聞くこと。

 子供の口を自由にして誰も口にしない真実を語ること。

 子供の心を忘れずに、いつまでも清らかな気持ちで生きること。


 本編


 この世界には、君が必要だよ。


 ……ねえ、覚えていますか? 私たち二人が手をつないで、一緒に歩いていた日々のことを……。


 きみとたくさんおしゃべりがしたい。

 きみとたくさん遊びたい。

 わたしはきみのことをもっと知りたいんだ。もっといっしょにいたい。

 きみのこと、ずっと覚えていたいんだ。


 ジラとUFO


 嵐の夜


 人の意識は青白い電気によって、生み出されている。(あるいは、電気ショックによるお仕置き) 


 磁気嵐の中を一機のUFOが飛んでいる。

『限界です、ジラ』

「まだもたせて!」

 ジラと呼ばれた少女が叫んだ。

『だから私はこの作戦には反対をしたんです』

「今更、遅い! 文句言わない!」

 ジラは言う。

『ジラ。限界です。このままだと、あと数分で砂漠の上に墜落します』機械的な音声が流れる。

 UFOの中にいるのはジラ一人。

 ジラの会話の相手をしているのは、コンピューター。いわゆる、この最先端の技術で秘密裏に製造された小型宇宙船に搭載された『みちびき』という名前の人工知能だった。

「……みちびき。目的地は?」

『すぐそこです。ですが、現在強力な嵐の中にいるため、正確な場所は把握することができません』みちびきが言う。

「でも、『この下』であることは間違いないんだよね」にやっと笑いながらジラが言った。

『……ジラ。その考えには賛同できません』

 ジラとコンビを組んで長いパートナーであるみちびきは、この会話だけでジラの考えている無謀は作戦? を理解して言った。

「みちびき。突っ込むよ。場所は、この嵐の空の下の砂漠地帯。少しくらい目的の場所を外したって、そのままばらばらになるってことは、ないでしょ?」

 みちびきは数秒沈黙する。

 なんとなくジラの頭の中にはみちびきの『……、はぁー』という呆れたため息の声が聞こえたような気がした。

『わかりました。ジラ。あなたの言う通りにします』

 みちびきが言う。

「OK。聞きわけがいいね」ジラが言う。

『私はジラ。あなたのパートナーですから』

 なんだか少し嬉しそうな声で、みちびきが言った。

 そしてUFOは、その飛行角度を真下に向けて、加速をして、大雨と大風と大きな雷の鳴る暗い嵐の中を突き進んで、そのまま真下にある無限の広さをほこる巨大な砂漠の地面の上に、思いっきり(まるで、そこにある壁を破壊するように、なんの迷いもなく突っ込むようにして)墜落した。

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