第一章 悪役騎士

01 序幕:邪竜と赤子

 アルグレイス王国の、人が立ち入らぬ峻険な山中に棲まう一頭の邪竜がいた。


 王国騎士団は邪竜討伐部隊を組織し、これと戦う。


 ついに邪竜が息絶えその身体を地にひれ伏したとき、赤子の泣き声が洞窟に響き渡って騎士たちを驚かせた。


 人間の赤子が、邪竜の背後に横たえられていたのだ。


 まるで、邪竜が赤子を守るかのごとく騎士たちと戦っていたかのようだった——。


 騎士たちは赤子を引き取り、騎士団で育てることにした。赤子をくるむ布には『アーレント』という名が書かれていたので、そのまま赤子はアーレントと呼ばれてすくすくと育った。


 一人前の騎士として育ったアーレント、ときに。本人は知らないが、アルグレイス王国で他に並ぶ者もいない武人となっていた。


 彼こそが、この世界を構築する小説『ウォルディア剣国記』の悪役アーレント・エヴェルスだった。そしてついに、彼は転生者として目覚めの時を迎える……。

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