二番目勇者じゃ駄目ですか?~補欠勇者の冒険譚~

美作美琴

プロローグ 白髪の青年と幼い少女


「………」


 深い霧の掛かる山道と思しき場所、無言で道端の岩に座り込む男。

 背中を丸め膝を抱え見るからに精気が無い。

 

「まあ、こんな所にいらしたんですか?」


 一人の利発そうな少女がその男に近付く。

 年の頃は十代前半といった所か顔にはまだあどけなさが残っている。


「ここは寒くて身体に障りますよ、さあ一緒に帰りましょう?」


「………」

 

 男は少女の問い掛けに応えず、だが徐に立ち上がり少女に付き添われながらゆっくりと歩き始めた。

 立ってみて服装や成りから分かる、その男はそんなに年齢はいっておらず意外に高身長であった、ただ彼から感じる異常性……生命力が感じられない瞳。頬はこけ頭髪は年齢にそぐわない雪の様に真っ白であった。


「あなたはこれまで頑張り過ぎたのです、休んだとして誰があなたを咎められましょうか、ささっ暖かい暖炉のあるお家に参りましょう」


「………」


 二人は寄り添いながらゆっくりと歩を進めやがて霧の中へと消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る