貴族といじめられっ子 顔ガチャ同じで入れ替わり いじめられっ子は成り上がる

@nluicdnt

第1話 デルモンキー・マガマガ


 

 カチ  カチカチ ポチカチ カチカチ



 この世に生まれて分かったことがある。


 親ガチャ、能力ガチャ、友人ガチャ


 人は全てガチャで決まること


 一回転んだだけで、クソな奴らからクソな目に遭うこと



 ガチャ ガチャガチャ カチカチ ピッ



 人生は理不尽なクソゲー


 それを身をもって痛感した。


 もし神様ってのが俺を設定して、運命操ったりコントロールでプレイしてるのならさぁ……ちゃんと幸せになるようにプレイしてくんねえか。調整ミスりすぎ。

 

 だいたい言動の選択肢全部ミスんなよ!


 

 ガチャガチャガチャガチャ ピッピッピッピッピピッピッピ


 

 ゲーム初心者じゃねえだろ!! 初心者特有のガチャガチャプレイか!?



 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!! ガチン!! ガッ!!



 まさかわざと全部の選択肢外れたらどうなるか趣味の悪い遊び方してんじゃねえよな!? そんでゲームオーバーになって周りの友だちと大爆笑ってか!?



 ボン!! ボンボン!! ピッピッピピッピッピ!! トゥントゥントゥントゥン……




『GAME OVER』



「クソ!!」



 思いっきり投げたから壁に激突した携帯ゲーム機はブッ壊れた。


「あれで二ボスとか意味分かんねえだろ調整ミスのクソゲーだろ!! クソッ!!」


 ふざけんな大体なんで俺の手汗かくんだよ!! 滑って滑ってムカつくんだよゴミ!! 自分の身体なんだから言うこと聞けよカス!!


 コンコン コン コンコン


「マガマガ!? マガマガ!? どうしたの!?」


「なんでもねえ!! どっか行けババア!!」


 怒鳴るとノックは止んでくれた。

 クソが、いちいち少し喚いたくらいで部屋ノックしてくんなよ。こんなの誰でもやってんだろまるで俺だけがゲームで癇癪起こしてる見てえな扱いしやがって。


「……」


 ベッドから見えるのは、俺とそんなに年齢が変わらないのに、早々とイケメン俳優と結婚したからおもいっきり破いたアイドルのポスター。


 その周りにアニメキャラのポスター。

 

 左右の棚には苦労して集めた、フィギュアコレクション。


 床は……食べかけのポテチやその他スナック菓子が散乱している。汚い部屋だ。


 床に転がっている携帯ゲーム機を見る。


 あ〜あ、修理とかめんどくせえよ。


「……や〜めた」


 ベッドに寝て心機一転するしかねえなこれ。あのゲーム面倒くさいし。


 いちいちコンティニューする度に新しいキャラメイクとかしなきゃいけないし。失敗してゲームオーバーになると、また初めからやり直しで能力値も最弱から始まるし。


「クソゲーにもほどがあんだろ……」



 ……もし俺の人生が今、神様の手によってプレイされてたら、神様も俺を見て雑魚個体とか思うのか? 


 そして他の神様のプレイキャラと自分を比べて一喜一憂とかしてんのかな。


「……やめだやめだ。考えんのは」


 てかベッドで寝ようとするからダメなんだ。やっぱ外出ねえとな。

 外に出て、リフレッシュしないと身体と頭がもたない。


……大丈夫、アイツらと遭うことは無い。


 肌寒い季節でも無いからジャケットとかは着ない。だけど、顔とかは隠したいから服はフード付きの物にする。


 部屋を出て玄関に向かう。


 母親は今は料理しているのか、すれ違わなかった。玄関に着き、靴を履いてドアを開いた。そこで母親は俺が外に行くことに気づいたようだ。


「あれ? マガマガ? どっかに出かけるの?」


 いちいちどこに行くかなんて親にいうかよめんどくせえ。挨拶も行ってきますとかする必要ねえよ。この歳でしてたらマザコン扱いされちまう。


 誰に? そんな答えは決まってる。

 クラスの連中さ。


 アイツらに自分の母親をママと呼んでいるのがバレた時、散々言われた。


 もうあそこに行くことは無いけど、それでもマザコン呼ばわりは嫌なんだ。


 大丈夫だ。少し近くのコンビニに行くだけ、誰かがいるなんてことは無い。絶対に。


「あれ? アイツじゃね?」


 は?


 いやまてまてまて、俺じゃ無いでしょおかしいだろ。このフード姿で俺だって分かるか普通。それに過去が見えたとしても不登校している奴だって知ってるのがおかしいし、そもそもアイツと言っただけで俺だと確信しているわけじゃないから。絶対バレてない、大丈夫、大丈夫、大丈夫!!


「ほら、この間のバスケの試合で」


 その一言で、俺は脱力した。


 あ〜良かった声かけられたの俺じゃなくて。俺はほとんど学校に登校していなかったから体育なんてやってないし、バスケの試合なんてのもやってない。


 だから俺じゃない。


 後ろを見ると、そいつらはそっぽを向いていた。ほら予想通り俺じゃなかった。


 俺なんて周りから見られてないし、存在だって認識されてない。初めからいないものとされているようなものだ。だから誰にも


 キャハハハハ!! 


 やばくない!? あの顔!? さっきの見た!? ねえ!!


 うん、誰からも認識されてないはずだ。

 

 クソ、なんで女子の笑い声を聞くと自分が笑われているみたいに聞こえるんだ。今すれ違う時にさっきの女子たちはそっぽを向いて言ったんだ。俺のことじゃない、俺のことじゃない。


 そのまま進んでいくと……


「は……?」

 

 俺は今フードをかぶっている。


 警察に職質される心配はあるけど、少なくとも俺の顔はジロジロ覗き込んで凝視しないと見えない。


 だからすれ違うそいつも気づかない。


 


 世界には自分と似てる人が三人いるとか聞いたが、もし本当にそうなら、こいつはその内の一人だ。


 なるほど理解できた。


 可哀想だな。さっきの女子たちはアイツを見て笑ったんだ。


 分かるよ、背がそんなに大きくないのに顔がすごく大きい。目は大きくなければ線のように細くもない。


 だからイケメンにも雰囲気イケメンにもなれない顔。そして変に厚い唇に眼鏡。髪型もどこか適当でオシャレという単語が一ミリもない。


 分かるよ、今すれ違うお前が考えていることが。

 

 よく女子は清潔感がある人が好きだとか、大前提としてちゃんと身なりを整えている男でなければダメ、なんて言うけどさ、もう駄目なんだ。


 幼少期に一度でもキモい扱いされると、心の中でどこか俺はキモい存在なんだって諦めてしまうんだ。


 オシャレとかして見ても、どうせキモい奴、ブサイクの無駄な足掻きとか、無意味な努力とか、そんなことを言われて笑われるんじゃないかって思っちゃうんだよな。分かるよその気持ち。


 何やってもキモいなら何もしなくて良いんだ。開き直ってキモいと思われるかもしれないけど、それでも良い。


 大体、俺が顔が良くてイケメンじゃね? て思うクラスメイトや男性アイドルでもキモいって言われることがあるし。


 だから俺は、いや、俺たちは無駄な努力はしないんだよな?


 過ぎ去った男の背中を見つめても、男は振り返らない。


 体型は俺と同じくらいの中肉中背で短足。

 後ろからでも分かる顔がでかい。


 哀れだ。俺と同じ容姿で。

 

「苦労してんだろうな」


 思わず呟いてしまった。さ、ポテチ買って家に帰ったら、もう一回するか。


 





 今日もマガマガは、一人部屋に閉じこもり、ゲームをしては時折、癇癪を起こす。


 何かあるとすぐに世の中の不満や、ガチャが外れたと言い騒ぎ出す。


 父親がたまに怒鳴りながら部屋に入って来るが、それを母親は必死で止める。


 父親がクズだの女の腐った性格、世の中の荷物になって野垂れ死ぬぞ、など言うのに対し、母親がそんな酷いこと言わないでと反対する。


 そうしていると、いつの間にか息子ではなく父と母の喧嘩になり、息子は蚊帳の外に弾き出される。


 最後は大体においてしっかりしろと父親が言って出ていき、母親が慰め窘める。


 それの繰り返しだった。


「ガチャ外れた奴にとって、この世は地獄だ」


 いつの間にか、マガマガはその言葉が口癖になってしまっていた。消えたと思っても消えることが出来ず、今も部屋に引きこもる生活を、毎日している。


 それが、でのデルモンキー・マガマガの生活であった。




 

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