第7話 仲間の死と気晴らし


俺と灯はるあのお葬式を終えて、外に出て来ていた


「これ、缶コーヒー、飲むか?」「うん…」


俺は灯に缶コーヒーを手渡した

俺の分の缶コーヒーも当然あるので、缶コーヒーを開ける音が響く。


「ゴクッゴクッ」


俺は缶コーヒーを飲む、うまい。


「死者退治で、人ってあんなにあっさり死ぬんだね。

 一瞬の事だった」


灯は暗い表情で言った


「あぁ、一瞬だったな。」


「十兵衛が居なかったら、私も死んでいた。」


感謝するような、自分が何も出来なかったことを悔しがるような。

その両方な雰囲気で灯は言った。


「…それがチームだろ、命を当たり前に救い合う

 気にするな。」


「…ありがとう、やさしいね十兵衛は」


俺は笑顔を作って言う


「遊びに行かないか?死者退治の給料が出たし。

 学生にしてはすごい大金が手に入った。」


「…そうだね、悲しんでばかり居るのもどうかと思うしね。

 遊びに行こうか。今日はもう夜だから明日だけど。」


「確かに、もう暗いし。今から遊びに行ったら不良だな。

 明日にしよう」




その日の夜、俺はお父様と2人で話す


「仲間を失ったそうだな、どう感じた?」


俺は目を伏せながら言った


「その仲間とはそりが合わなかったはずなのに、悲しみを感じました。

 仲間を失うと言うのは悲しい事なのですね。」


どれだけそりが合わない仲間でも

心に悲しみが襲って来る。


「…悲しめるだけいい事だ、悲しみすら忘れるほどに仲間を失う事もある」


悲しみを忘れるほどに?


「お父様は、そうなのですか?」


「俺は悲しむのを忘れるほど仲間を失ったよ。

 お前もいずれそうなる、自分が死ぬ可能性すらあるがな。」


「なんですかそれ、そんなの。」


悲しすぎる。


お父様は言った


「お前も覚悟しておきなさい、仲間の死、自分の死、周りの死

 あらゆる死に覚悟を。

 死者退治人とはそう言う業界だ。」


俺は何も言えなかった。

目の前であっさり死ぬるあを見たからだ

お父様の言う通り、死者退治人は死と、身近だ。




俺は灯と遊ぶために公園に集合した


「待った?」


灯が聞いて来る


「待ってない。」


俺が答える


灯は笑顔で言った


「なんだかデートみたいだね。」


確かにデートみたいだ。


灯は笑顔で言う


「今日はどこ行こうか?」


そうだなぁ、いろいろ行きたいところはあるが。

とりあえず定番の


「ゲーセンでも行こうか?」


「いいね!!気楽で。」


俺たち2人はゲーセンに向かった




俺と灯はレースゲームで熱戦を繰り広げる


俺が先に行けば灯が追い抜く、灯が追い抜けば俺が追い抜く。


「十兵衛、名家のくせになんでゲーム出来るの?

 ゲーセンなんて来た事無さそうなのに」


前世でやってたし

それに…


「ゲーセンにはこっそり来てたからな、

 俺も素直ないい子ちゃんだったわけじゃない。」


たまには親の気に入らなそうな事もする。


「ふ~ん、そうなんだ意外。

 十兵衛は親に素直ないい子ちゃんかと思ってたよ」


それはともかくゴールが近づいて来る


「もうすぐゴールだぞ、どっちが先にゴールするか!!」


「私負けないよ!!」


結果は、ドローだった


「ドロー?まったく同時にゴールしたって言う事?」


「ある意味すごいな。」


滅多にない事なんじゃないか?これ…


「次は格ゲーやろう、格ゲー。

 格ゲーで決着をつけよう!!」


「望むところだ。」


俺は大柄な男キャラで、灯は華奢な女キャラで

対戦はスタートした


「とりゃとりゃ、なかなか攻撃が当たらない。」


「この女キャラは素早いからね、こうやって回避しながら

 一方的に攻撃を…ってつかまれた!!」


「るどりゃぁ!!」「一撃が重い!!」


「この大柄キャラは一撃が重いからな。

 当たりにくいが、当たれば強いのさ。」


俺と灯はそれぞれのキャラで互角の戦いを繰り広げたが

最後は


「るどりゃぁ!!」


俺の大柄キャラのカウンターが決まり勝利した


「勝ったぁ!!」


「ま、負けた」


「格闘ゲーでは俺が上だな。」


「ぐぬぬ…次は別のゲーム、別ゲーで勝負だよ」


「望むところだ」


この後俺はゲーセンを楽しんだ。




「ゲーセンでかなり大金使ったな、死者退治の給料で

 賄えるけど。」


「そうだね、かなり使っちゃったね」


灯は笑顔で言った


「最後はプリクラ撮ろうよ、ゲーセンの思い出に。」


「プリクラ?」


「早く早く。」


俺は灯に急かされプリクラの中に入った


「言い出しっぺの私が奢るから。」


そう言って灯は500円を入れる。


「それじゃあポーズと笑顔、決めてね」


俺はとりあえずピースをした

灯もピースを選んだようだ

あっという間に写真が撮られた


プリクラの写真が出て来る。

小さい写真が何枚もあるやつだ


「なかなか綺麗に撮れてるじゃん」


灯はそれを2つに分けて、言う


「はいこれ、十兵衛の分だよ。

 思い出だから大事にとっておいてね」


思い出だから大事にか。

俺も灯もいつ死ぬか分からない職業だ


「大事に、とっておくよ。」


灯が死んだとしても、大事に。




俺たちはゲーセンの前に出た


「それじゃあ、私こっちだからバイバイ」


「おい、待てよ。灯は女だし送って行こうか?」


「女?あはは、気持ちはうれしいけど。

 私は死者退治人だよ、強いから平気平気。じゃあね」


そう言うと灯は走って去って行った

相変わらず騒々しい性格だ。でもまぁそこが


「灯の長所なんだけどな。」


俺は灯と逆の道を進み帰路につくことにした

楽しい時間はこれでおしまいだ。

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