雑記帳 ~エッセイや短編小説

博雅

第1話 二度見する犬

犬でも二度見する。


この事実を改めて知ったのはつい先ほど、思い出すことがあって、某Tubeで検索していた時のことだ。昔、我が家でも犬を飼っていて、その子はキャバリアという種類の女の子だった。


生前、ある昼下がり。彼女はある方向を向いて一生懸命に何かを見ていた(おそらくTVだろう)。それを僕が見ていたという構図である。ふと、こちらの視線に気づいたのか、眼だけをこちらに向けた。二度見はこれから起こる。


目をもと見ていたものに戻したまさにその次の瞬間、彼女はまた、今度は顔ごとこちらを向いたのである。時系列でいうとこういう感じだ。


(´・ω・`) (TV鑑賞中)


(^・ω・`) 「こっち見てる?」


(´・ω・`) (気のせいかな?)


(^・ω・^) 「??」(目が合ったね!)


二度見とは、僕の考えによれば、対象物を「それ」と認識したうえで、脳内がバグっている状態を表している現象なのではないかと思う。つまり、「それ」が「それ」であると認識できるまでにタイムラグが生じるため、悪い意味で経験豊かな脳はすぐさま、その「それ」の兆候が現れた瞬間に、その認識を、成功したものとして自動的にシグナルを送る。だが実際は「そうではない、先ほどの兆候を今一度確認せよ」と、それに自発的に本能が警告を発するのではないだろうか。それも、瞬時に。太古の昔、食うか食われるかの時代、犬をはじめとして動物は二度見をすることによって幾たびも、いや幾千たびも窮地を逃れてきたに違いない。


「そりゃ女房でも娘でもねぇ…死神ってやつだ」バトー、『イノセンス』士郎正宗

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