子どもの日に何やってんの?

家猫のノラ

第1話 埋められない穴

「一気にやっちゃって!!」

マジックペンで付けた印を凝視する。

スタンドでガンガンに照らしてる耳。産毛が光り、血管が透けている。

マジで?この純粋無垢な耳を前に、手にしたドンキのピアッサーはどうにも心もとない。

ていうか何より俺が心もとない。

だけど、いまさらやめるわけにもいかない。

「いくぞっ」

バチン。

俺は友だちの耳に穴を開けた。

「いってぇ~」

そう言って、少し涙を滲ませながらもお前はへらへらと笑っている。マゾかよ。

「どうだ。感想は」

サドではない俺は少し心配しながら声をかける。

「大人になった感じ」

お前は鏡を見ながら答えた。おいあんまりいじらない方がいいんじゃないのか?

「なんだよそれ」

その感想こそガキだろ。

みのるも開けたら?」

鏡越しに目が合った。

「いや、俺のとこはそういうの無理だから」

目を思わずそらした。

俺たちは幼稚園からずっと一緒で、一か月前急に離れた。

違う高校で、お互い元気にやって。

でもちげーんだよ。


『ピアス開けて』


突然の電話に何事かと思えば、いつもの突拍子もない思いつき。

そんなんに付き合ってしまう俺。


耳をいじる。

この埋められない穴が俺を大人にしてくれるのかな。



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