根性で転生した幸薄幼女は前世の知識と経験で配信者の頂を目指す

結城 優希

第1話 あの日の憧れ

 私はあの日、画面の中で生き生きとパフォーマンスをするVTuber達に憧れた……


 当時はまだ幼稚園児だった私は、画面の中の彼ら彼女らに……あの光景に……人生を変えられた。


 ある者は圧倒的な歌唱力で他者を感涙させ……ある者は七色の声を駆使して他者を魅了し……ある者はバーチャル空間だけではなくリアルでの活動でも他を圧倒する人気を誇り……


 


 そんな彼ら彼女らに対する憧れだけでこれだけ多くの時間、お金、労力を費やして数多くのことを修めてきた……


 私は本当はVTuberになりたかった。決して同じことを出来るようになりたかったわけじゃない。憧れの存在の隣に立てるVTuberになりたかったんだ。


 虐待にイジメ、教師によるイジメの黙認と隠蔽。当時の私に味方など一人もいなかった。誰も信じることが出来なくなるまでに追い込まれた私に相談なんて選択肢は存在しなかった。だから私はそのストレスを一人で抱え込んでしまった。


 その頃のトラウマはあまりにも大きく、まともに人と話すことも出来なくなってしまった。


 今でこそパニックにならずに人と話せるが、ここまで他人への恐怖を克服するのに多大な時間がかかってしまった。


 大人数の中で普通に話せるようになったのもここ最近の話で、私が修めてきたことのほとんどが独学だ。いまどき別にわざわざ習い事をしなくてもネットにいくらでも教材が転がっている。私はそれを片っ端からこなして自分なりのやり方を探っていった。


 普通に誰かから習うより時間がかかってしまったし、効率もあまり良くなかっただろう。それでも時間をかけた分だけ自分なりのやり方を洗練させることが出来たし、身体の一部のように使いこなせるようにもなった。


 だから私の人生に後悔はない!


 願わくばこの知識と経験が無駄になりませんように……


 来世こそは温かい家族に恵まれて夢を叶えることが出来ますように…その夢がVTuberであったなら言うことなしだね。さすがに欲張り過ぎかな?



 ありえないけど前世の記憶を持って転生することが出来るとしたら次からは無双回かぁ~


 そんな未来を妄想するだけで私は笑って逝けそうだよ。


 私は目標のために人生をかけてきた……


 私の目標を応援してくれる人もたくさん……かは置いといていてくれた!


 神様、願わくば私にもう一度VTuberを目指す機会を…………


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「????」


 目を覚ました私の目の前にいたのは変な服を着たおじさんだった。


(へ、変質者だァァァァァァ!!逃げないと!)


『やぁ、よく来たね。ちょうど今年は暇だからちょっと話し相手になってよ。』


 逃げようと身体の向きを変えると私の目の前にはさっきの変質者がいた。ここで私は悟った。


 これは逃げられないやつだと。


 観念した私はその変質者との会話を試みるも私は変質者の名前を知らない。馬鹿正直に変質者さんと呼ぶのは流石に憚られたので素直に誰か聞くことにした。


「えぇっと……どちら様?」

 

『神さ☆( -`ω-)✧キラン』


あぁ……やっぱりヤバいやつだった。


「あ、そうなんですね。今はどういった状況なんでしょうか。」



『え?軽くない?今のってそんなサラッと流す内容?』


(このおじさんが神様である根拠もわざわざ否定する理由もないしそりゃ流すでしょ。)


「ニコッ(^ ^)(圧)」


『もう少しリアクションしてくれても……』


「ニコッ(^ ^)(圧)」(早く話せ)


『あ、はい……話します。』


「( *^꒳^* )ニコニコ」


『佳奈、君はもう既に死んでる、ここまでは理解しているね?』


「えぇ、ここは死後の世界という認識でいいのでしょうか。」


『その認識で間違ってないよ。まぁ正確には天界、君の言う死後の世界の最奥だよ。そこにある僕の私室さ。』


(うら若き乙女(死因老衰)を私室に連れ込む男ってことじゃないですか、ヤダーー!)


「それで貴方様は何の神様(仮)なのでしょうか。」


『急に敬ってくるじゃん!ま、まあいいや……僕が何の神様かだっけ?』


「さっきまでは部屋に今会ったばかりの女性を連れ込む自称神だったので……」

 

『否定出来ないのが辛すぎる……気を取り直して自己紹介をしよう。僕がこの僕こそが原初の神々の王、天空神ウラノスの孫にして冥府を支配し者……冥王ハデス様さ!どうだい?僕のこと見直した?』


「ぶっちゃけ最後ので台無しですね。途中までちょっと厨二くさいものの威厳たっぷりで神々しかったんですけど。それで冥府の管理に忙殺されてることで有名なハデス様のような位の高い神様が私みたいな一般人に何の御用で?」


『え?僕ってそんな風に認識されてるの?魂の輪廻に戻して生まれ変わらせようにも君は本来の手順で転生できないっぽいんだよね。』


(やっぱり忙しくて現世のことなんにも知らないのか。あぁ可哀そうに……)


「それはまた何故?」


『本来なら前世の魂の記憶を消してから転生先をランダムに決めて転生させるんだけど、君の魂に刻まれた意思が強すぎて全然消えないんだよ……』


「ガンコ汚れみたいに言わないでくださいよ。」


『エラー吐いちゃってるとはいえルールだから転生はさせなきゃいけないんだよ。だから無理に消して魂が壊れちゃったら本末転倒なわけ。今慎重に作業を進めてるんよ?結構大変なんだからね!』


「大変だって言ってもハデス様は何もしてないじゃないですか。」


『……………だからちょっと待ち中。まぁたぶん無理だし例外的に記憶持ちでの転生になるよ。』


「いま露骨にスルーしましたね!まぁいいですけど。要は前世の記憶を持って転生出来たから今世ではつよつよVTuberを目指せます!ってことですね!」


『よく分かんないけどたぶんそんな感じ。君実は前世もそうなんだけど前前世、前前前世でもVTuberに憧れてたんだよね。だから魂にVTuberの憧れが刻まれちゃってるんよ。転生を繰り返しても同じ道を志した結果それが因果律にも影響出ててそれもあるから無理っぽいわけ。まぁというわけで君の記憶は消せそうにないのでもうそのまま転生してもらいます!』


「は、はぁ……」


『記憶があることで大変なこともあると思うけ――ん?うんうんうん。おkおkじゃあ諸々の準備よろしくね。』


『ゴホンッ、それじゃあ転生ガチャを引きに行こうか。せっかく記憶持ってくんだから自分でガチャしたいよね!』


「ちょっと気になるので嬉しいです!ありがとうございます!」


『よし、じゃあしゅっぱーつ!』

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