パフェは「完璧」を意味するパルフェから来ているらしい(漫画談)
目的を達成したしこのまま宿に帰って作業を再開しよう。解散しようと言葉を発しようとした時、クゥーと対面にいる少女からかわいいお腹の音が聞こえた。
気が付けばとっくに昼食を食べる時間は過ぎていた。
少女は徐々に顔が赤くなっていく。
「それじゃあ、僕帰るね」
「え? まって!」
「ん?」
慌てた様子で僕を引き留める。まだ何か用でもあるのだろうか?
「一緒にお昼食べに行かない?」
なるほど。服選びに付き合ったんだ、タダ飯を食わせろということか。
いいだろう。節約宣言をしたが、そのけち臭い根性を称しておごろう。
「僕、食べるところ知らないけど」
実はここに来てから一口も食事を口にしていない。そのためこの街のグルメに関しては全く知識がない。
「大丈夫だよ。私が知ってるから」
高級なところに連れて行かれると困るんだが。スラム街と王都以外では初めての旅行的なものだから張り切ってお金は多く持ってきたけど全部は使いたくないな。
一抹の不安を抱えながらはしゃぐロサの後ろをついていく。
道中にこの街で一番豪華そうな館の前を通る。
「大きいなー」
いかにも金を持ってそうな家だ。しかしこの街では際立って趣味が悪い。見せつけるように金一色で外観を染めてるし。あれ家の中が熱くならないのか?
「あそこはこの街の領主様の家です。ジロウ・スワレン伯爵様、噂ではお尻に重い病を患っているとかなんとか」
「ふーん」
やっぱり発展しているから金はあるんだな。うらやましい限りだ。
伯爵は歯とか指輪とか金色で染めた禿げた成金デブだろうと妄想していると目的の店にたどり着いたようだ。
店内はそれほど広くはないが木材を基調としたモダンな雰囲気のカフェであった。昼時ではないからか人の出入りはまばらであった。
「こちらメニュー表になります」
店の雰囲気に合ったシンプルな制服の店員にメニュー表と水を渡される。
高いところに行くかと思っていたが良心的なお値段の店でよかった。
とりあえず一番安いコーヒーで。
「僕は決まったけど、そっちは?」
「え、えーと。私はこれがいいかな」
ロサが震えた指で指したものはカップル限定特大パフェいちゃいちゃマウンテンという商品だった。
ここには僕とロサだけできている。
まさか、ここにイマジナリー彼氏がいますとか言い張る気だろうか? 人の趣味とかにとやかく言うつもりはないが、さすがにそれは……。それとも実は僕には見えない幽霊的な存在がいるのだろうか。
「か、勘違いしないでね。これ一度食べてみたかったから。彼氏のフリをしてくれないかなーって」
なるほどそういうことだったのか。危うく空想に生きる痛い少女か霊感ビンビン少女という認識を固めるところだった。
しかしこれは二人前だが一人で食べきれるのだろうか? 甘いものは別腹というが本腹と合わせたらいけるものなのか。
注文が決まったので店員にオーダーを頼む。
「はい、こちらコーヒーといちゃいちゃマウンテンでございます」
コーヒーカップとそれをまんま二倍したくらいの大きさのグラスにアイスや果物が入っているものが到着した。カップル用にスプーンは二つ用意されている。
面白い見た目のパフェを肴にしながら優雅にコーヒーを口に流す。
「ジーノ君、一緒に食べよう?」
む、なぜに? 自分の取り分が少なくなるだろう。お腹を鳴らすほど空かせていたのに。
ロサは目を泳がせて周りを気にしてするようにきょろきょろしている。
そうか。一応付き合っているという体で注文しているから体裁が気になるのか。顔を覚えられたら次に来るとき気まずいからな。
仕方なくパフェに手をかける。パフェというものを初めて食べたが、これがなかなかにおいしい。
「ジーノ君。あ、あーん」
そこまでするのか。まあ、別にいいか。
スプーンが震えていて食べづらいなと思いながらパクリとかぶりつく。冷たく甘いアイスが口の中に広がる。
スプーンから口を離すとロサが顔を真っ赤にしてパタッとソファに倒れる。疲労がたまっていたのだろうか?
しばらく経っても意識が戻らなかったので残ったパフェすべて食べきり、ロサを背負いながら会計済ませ、店を出たのだった。
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