第15話 アチアチマウンテンの事情
「お話というのは神子様…アルテミス様より預かったお言葉。『アルテミス様より授かった力を神子様に授けよ』という言葉なのですが…不甲斐ないお話なのですが今の状況だと神子様に力をお渡しすることができないのです」
ヴェルガは申し訳なさそうに座りながらではあったが頭を下げた。
「先に話した通り、今、アチアチマウンテンは理由はわかりませんが、活性化状態になってしまっているのです。そのため我々でさえ中に入ることは難しく、アルテミス様の力を持った宝玉のある『予言の間』にもいけないのです」
…そんなことが
ヴェルガの話すトーンも下がっていて、本当に困っているのが分かる。
「何か…何か気にかかることとかはないのですか?」
少しでも活性化してしまっている手がかりがないかヴェルガに聞いてみるも。
「すいません、私には何も…」
何もなさそうだ。どうしたものか…今のままでは中に入ることもできない八方塞がり状態だ。ヴェルガはこんな状況ではあったが、私のために歓迎会まで開いてくれようとしている。これは私のためというのもあるのかもしれないが、きっと村のみんなに「大丈夫だ」と元気づけようとしているのが見てとれた。どうにかして助けてあげたい。そんな気持ちは山々なのだが…
しばらく考えていた時だった。
「…助けてって言ってた…」
…ん?
何か遠くから声がした気がした。声のした方を向くとそこには、ヴェルガの体をそのまま小さくしたような鳥人が、1人物陰から声をかけてきていた。
「どうした、『ゼクス』部屋にいたんじゃなかったのか」
ヴェルガがそう尋ねるとゼクスは。
「うん、でもアチアチマウンテンの話をしてたから…あのね、神子様『ゼラ様』が助けてって言ってた」
…ゼラ様?
もちろんだが初めて聞く名前だ。一体何者なのだろうか?ヴェルガに聞いてみた。
「ゼラ様というのは?」
「ゼラ様はこのアチアチマウンテンを守ってくれている守り神になります。美しくて雄大な火の鳥の姿をしていて…本当かどうか分かりませんがゼクスはそんなゼラ様のお言葉が分かるらしくて」
「そうなんですか」
私はヴェルガの話に頷くと席を立ちゼクス君の元へと歩いていった。
「ねぇ、ゼクス君。ゼラ様はなんで助けてって言ってたのですか?」
「う〜ん…わからない!、、、でも早く神子を連れてきてって言ってた!」
…私を?
「こら!!、、ゼクス!神子様に対してなんていう態度を!すいません神子様、我が息子がとんだご無礼を」
「いいんですよ。お気になさらず」
私は笑って返した。
ゼラ様という火の鳥が私を呼んでいる。それに聞けば神子という存在を知っていると言う話じゃないか。どうやらこの問題はアルテミス様の力とも関係があると読んでいいのかもしれない。
これで決まりだ。私が山の中に入り、ゼラ様の問題を解決することができれば、おそらくアルテミス様の力をもらうことにグッと近づくはずだ。だがどうやって入る…里の人でさえ入るのに苦労しているのに素人の私が入っていけるのか。
「ヴェルガ、山の中に入るルートは1つだけですか?」
「…はい、私が知る限りは1つしかないはずですが…」
そう言った時だ。
「ボク、知ってるよ!ゼラ様のところに行く近道!」
ゼクス君が話に入ってくるなり元気に答えてくれた。
「ゼクス、本当か!?ゼラ様のところまで行けるのか!?」
ヴェルガは聞くとゼクス君は元気に頷いた。
「それでは決まりですね。明日アチアチマウンテンの中へと入ろうと思います。ゼラ様が神子を呼んでいるという以上私が行かなくてはなりません。そのためにはヴェルガ、少しばかりゼクス君の力をお借りしてもよろしいですか?」
そう言うとヴェルガは「御身のままに」と答えてくれ、ゼクス君に向かい失礼のないようにと何度も口酸っぱく言っていた。
そんな光景を見て、なんだかお母様に言われる私を見ているようで微笑ましく思えた。
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