第13話

おっさん、森を出る①

 新しいペットの子グマ(ベア吉)を迎えて、意気揚々と森の拠点に帰る洋一たち。

 しかしその場所は騎士団に占拠されていて、


「何者だ!」


 手荒い歓迎を受けていた。


「何者だ、とは恐れ入るね。俺はこの場所で暮らしていたものだ。そっちこそ何者か。返答次第では戦わなくてはならない」


「むっ、つまりはあんたが先住民か。少し待て」


 見張をしていた強面の騎士が、奥に入っていき、そして見知った顔が現れた。


「ようやく帰ってきたか。すまない、こんな形での再会は望んでいなかったんだが」


「あの時の干し肉の騎士。また交渉に来たのか?」


「干し肉の……ネタキリーと名乗ったはずだったが……いや、それもあるが、詳しい話は奥で」


「まるで自分たちの拠点のように話すが、そこはもともと俺たちの拠点だぞ? 不法入居者め」


 洋一はとても狭い心で対話する。

 促されてかち割られた木の中に入れば、案の定畑の作物は食い荒らされ、風呂も薄汚れていた。

 うっすらと据えた匂いまでしている。

 とてもまともな使われ方をしていないのは一目で分かった。


「本当にすまない。自分たちの無力さをこれほど痛感したことはない。そしてティルネ殿を連れ帰ってくれたことも含めて感謝しよう」


 当のティルネはとても憤慨したような顔である。

 まぁ殴る蹴るされて捨てられたのだ。

 だからこその出会いもあったが、それでも氣志團にされたしうちは忘れるつもりはないだろう。

 憤怒の表情で騎士団を厳しく見据えていた。

 自分のしでかしたことなど棚上げである。


「一応話は聞く。そして拠点を勝手に使った件は今は多めに見てやる。正直、拠点はここでなくてもいいからな」


「そだね。ここに改めて住むのは無理」


 ヨルダが虚無顔で堪える。


「重ねて申し訳ない!」


 平謝りの騎士ネタキリー。

 向こうの言い分を聞いてみれば、どうも留守中に訪ねてきて、そこでジェミニウルフの群れに襲われたとのこと。

 後はティルネグループ、下級騎士グループ、ネタキリー率いる中級騎士グループに分かれて応戦と撤退似たとかで。


「その後部下のロイとの連絡は取れて、街に向かっていることは確認したんだが、上級騎士との連絡は取れずで参っていたんだ」


「あいつらはワシを見限って『荷物』扱いした挙句、殴る蹴るして川に捨てたぞ?」


「まさか……」


「爵位を傘にやりたい放題だったわ」


「あいつらめ……悪い癖を出しやがって! 帰ったら特訓だ!」

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