第2話
おっさん、弟子をとる①
ヨルダを弟子にして一週間が経つ。
暮らしはそんなに向上してないが、一人増えた負担は次第に蓄積されていく。
単純に水汲みの回数が増えたというのもある。
「そろそろお前も仕事を覚える頃だろう」
「はい、師匠!」
どんな仕事でもやってみせる。
ヨルダはそんな気概を見せている。
「まずはこの暮らしの中で一番重要なものはなんだと思う?」
「食材でしょうか?」
「それもある」
洋一は腕を組みながら頷いた。
しかし現状、肉は溢れるほどに手に入った。
ジェミニウルフと呼ばれる魔獣が跋扈しているのだ。
なぜかヨルダに会って以降である。
それまで全く見かけなかったのは、洋一が倒したクマがいたからではないか? なんて指摘があったほどだ。
なんにせよ、肉はあるのであまり深く考えないことにした。
「他には?」
「水だ」
「水……そういえば、師匠は水をどこから汲んできてるんですか?」
「案内しよう」
洋一はヨルダを連れて森の中を練り歩く。
道中でやたら丸くくり抜かれた大木を見かける。
魔獣の仕業だろうかと震えるヨルダに、洋一は自分の仕業だと明かした。
「師匠って割と自然破壊に躊躇ないですよね」
「だってこの森に生えてる木って小さな傷ぐらいじゃすぐに復元しちまうんだぜ? このくらい穴を開けてようやく目印になるんだ。ほら」
洋一は手元に出した包丁で目印の木を切り付ける。
すると傷跡に樹液が満ちて、すぐに傷跡は消えてしまった。
恐るべき生命力である。
「ナマ言ってすいませんでした」
「わかればよろしい」
丸く切り抜かれた木々を目印に進んでいくと、そこには落ちたら命はないと思える高さの崖と、真上から叩きつける勢いの滝が見えた。
洋一曰く、水汲みはここで行うとのことだった。
ヨルダはこんなところで水汲みなんてしたら死ぬという顔で洋一の作業を見つめていた。
「よし、やってみろ」
一度手本を見せただけで、即座にやってみせろと言う洋一に、ヨルダは歯切れ悪そうに今さっき思い出したように自分は魔法が使えることを切り出した。
「あの、オレ! 実は水を魔法で出せます! だから水汲みは勘弁してください」
「魔法使いだったのか?」
「黙っててすいません、言えば、家庭の事情に巻き込むと思って」
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