六日目
太陽暦934年 5月11日 晴れ ゼノン=クロック 16歳
今日は依頼ではなく、港の荷運びの日雇いをしていた。ランク1向けの依頼ってあんまり無くてさ、基本的には低くてもランク2を要求されるんだ。
だから、ランク0のときみたいに誰かにキャリーしてもらいながら依頼をこなすのが一般的なんだが、残念ながら今日はキャリーしてくれる人がいなかった。
休みのつもりでもないのに1日ニートになるのは少し気が引けたので、そこら辺にばら撒かれたチラシを見て日雇いに行ったというわけだ。
それにしても海の男って屈強だな。みんなムキムキマッチョマン。
海ではときに海獣が出るらしいので、結局冒険者みたいなことをするそうだ。俺も海の男になって屈強になろうかとも思ったが、船酔しやすいタイプなので早々に諦めることにした。
そういえば、面白い事があったんだよ。港に黒い鷹を連れた人がいてさ、その鷹が自分で財布持って勝手に猪肉の焼き串を買ってたんだよ。
鷹ってあんなに賢い動物だったんだね。知らなかった。しかも、律儀に主人分の焼き串を買って来てて、愛されてることがひしひしと伝わってきた。
そう言えば昔は俺もペットを飼いたい事があったっけな。猟犬とか獣退治とかでの相棒としていてくれそうだし、考えてみるのもいいかも。
夜は依頼終わりのウックスさんや同年代の人と飲み会に行った。先輩方の話を聞いているとやっぱ冒険者たる者、冒険に憧れるね。
大陸に渡って、大陸を冒険して、紆余曲折しながら、最終的には魔王を倒す。
そんな経験をしてみたいなってポロッと言ったらみんなから笑われた。俺もなんとなく笑った。
でもこれで一つわかった事がある。みんな魔王という脅威から必死に目を背けようとしていること。魔王は怖いけど、動かないという根拠のない理由で倒しに行こうという人はいない。俺も含めてだが、いつ現れるかもわからない勇気ある人を待っている。
だから、そんな雰囲気を感じ取ってしまって、酒は飲んでないけど酒気に酔ってつい言ってしまった。
「今に見てろよ! 俺はこの町を飛び出して一等良い仲間を見つけて、魔王を討伐する勇者になってやる!!」
やべぇ。どう考えても、めっちゃはずい。大言壮語とはこのこと。明日みんな忘れててくんねえかな。
みんなは一瞬固まって、さっきとは比較にならない大笑いをした。同年代の人達は否定するかのように笑っていた。でも、ウックスさん達先輩の人達は何か懐かしい物を見るような目で俺を見ていた。
取り敢えず、言ってしまったので仕方がない。魔王討伐、いっちょ挑戦してみますか。
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